2. 療養費改定の問題 

大島:いわゆる部位請求というものですが、あの時、4部位、5部位はもう不支給にすると いう議論があったのです。そういう方向ではあったのですが、当時、私は民主党の柔道整復 師小委員会の事務局長をしていました。会長だった環境省大臣のM先生が「大島、お前の好 きなようにやれ」と言ってくださいました。鳩山先生もこの件は全部私に任せるということ でした。私は厚労省とのやりとりで、4部位5部位を不支給にするというのであるならば、 柔道整復師の先生達のためになにか考えてくださいと言いました。厚労省は、いくつか案を 持ってきたんですが、ほとんどはダメでした。そうしたら、当時Wさんという女性の室長が 「いろいろ考えました。これでどうでしょうか?」と言って持ってきた案が後療料のアップ でした。Wさんという女性の室長だったからそういう思い切ったことをやってくれたという のがありますね。やはり女性は度胸だなというふうに私は思いました。今まで、後療料を上 げるということはなかった。後療料というのは、毎回毎回、患者さんが来たときについてく るお金ですから。

 

 佐藤:この10年ぐらいでは、上げるのは、骨折とか脱臼とかそういった部分だけで、後療 料をほとんど上げていません。当時、画期的に上げたのが大島さんだということです。 大島:そうなんです。今先生がおっしゃったように骨折、脱臼で来る患者さんがほとんどい ない中、そこを500円とか1000円とか上げますよみたいなこと言ったって全然意味がな い、そんなことを平気でやるんですよ。だからそうじゃない、本当の実になるところの後療 料を30円上げたというのは、これは過去にないし、未来にもたぶんないと思います。

 

 佐藤:接骨院の保険請求のほとんどが後療料なので、1部位たった30円なのですが、接骨 院は1割程度の収入増になると思います。柔道整復師の年間療養費では4000億円前後な ので約400億円の増額になります。

 

 大島:私は今、れいわ新選組でボランティアの皆さんと山本太郎代表と一緒にやっているん ですが、まさに私たちは弱者というか、虐げられた、日の当たらない人たちのために活動し ています。そういう意味で言うと、医療業界では、まさにそれが柔道整復師の先生たちなん です。本当に気の毒です。だって医療費がどんどん伸びていく中で、療養費はどんどん減ら されているんですよ。先ほど先生からお話があったように、柔道整復師は増えてるのに。 

 

佐藤:10年前の2倍以上に柔整師が増えています。 

 

大島:実際、患者さんの立場から言うと、整形外科に行かなきゃいけない、当然そういうケ ガもあるんです。それはそれで良いんですよ。でもそうじゃなくて、湿布とレントゲンだけ では不安だという患者さんが柔道整復師の先生を頼って行くわけですよね。患者さんのニー ズはあるのです。実は、一部の人は知っているんですけれど、当時、柔道整復師の保険請求 資格を作らせようとしていたんです。あれがうまくいっていれば・・・・。どういうことだ ったかというと、柔道整復師さんの施術を国家資格に、それプラス保険請求する資格を先生 たちに持ってもらえば、仮に先生たちが、いうなれば不正を働いた場合は、その保険請求資格をはく奪すれば良いわけです。患者さんと柔整の先生の利便性を堅守しつつ、制度をシン プルにしていく必要があると考えています。そのために柔道整復の先生たちのいろいろな意 見を聞いて作ろうとして始めた小委員会が、ちょっと捻じ曲げられておかしくなってしまっ た。私はそこをもう一度やっていきたい。国会に戻していただければ、先生たちの声をしっ かり聞いて、明快に、要はクリアな制度にしていくことでだいぶ変わってくるんじゃないか と思います。私がいつも先生方に言っていたのは、自分が柔道整復師として絶対に必要な施 術を施してるんだという認識があれば堂々と請求してくださいということです。これはちょ っと請求に似合わないなと思えば、自費でやれば良いわけです。これは保険がききますよ、 ききませんよ、どっちにしますか?って言って選択をしてもらう。 元々は、抜き歯、差し歯、骨つぎというカテゴリーで、抜き歯、差し歯の人たちが歯科医に なったんです。骨つぎの先生たちは柔道家の方がほとんどだったので、柔道整復師という国 家資格に分かれた。これがもし接骨医だったらレントゲンも使えたり、医師会の中でいろい ろできたり、今とは全然変わってきたんだと思うんです。そういう分かれ道もあった。だか ら私は、徒手整復という技術を、しっかり伸ばすべきだと思います。接骨医があって良いん だ、そういう思いを持ってます。 佐藤:お恥ずかしいですが、私自身、この10年ぐらい、骨折脱臼患者が全然来てないで す。あんまり来ないと固定整復術とかも忘れちゃうんですよね。けど地域にはすごい先生が たくさんいるんですよね。こういった先生たちが残してくれた技術を財産として次の人に伝 えなければと考えています。