佐藤:皆さんこんにちは。今日は「大島九州男と語る柔道整復師の未来」という題目で、元 衆議院議員大島九州男さんに柔道整復師の業界について、いろいろお話をしていただきたい と考えております。まず、私の自己紹介をさせていただきます。佐藤司と申します。東京都 北区で20年以上、鍼灸整骨院を開業しております。父親は新潟の雪深い片田舎で整骨院を 経営していました。そこに生まれて、ずっと過ごし、今、私は同じ柔道整復師の道を歩んで います。なので、柔道整復師という職業を子供のころから、もう50年ぐらい見続けていま す。柔道整復師ってどんな仕事かよくわからない方も多いと思います。「整体院と整骨院っ て同じじゃないの?」という人もいます。接骨院を経営する柔道整復師は医療の国家資格で あり、江戸時代から続く伝統的な東洋医学です。昔の柔道整復師は、柔道が本業で接骨院の 仕事は副業だったんです。多くの接骨院は柔道場が併設されていて、地域の子供たちに柔道 を教えていました。もともと柔道の技の一つに整復術があり、活法が柔道整復術、殺法が投 げ技とか締め技なのです。活法、殺法ができる術者として「柔道整復師」というへんな名称 になったのです。私の父親は柔道家で柔道六段でした。柔道場を持っていて、子どもたちや 警察所にも柔道を教えていた町の名士でした。子供のころは、うちみたいな全然流行らない 接骨院でも、骨折など外傷患者はたくさん来ていまいした。よく覚えているのは小学生の 頃、夜遅く子供の肘が外れたといって、若い夫婦が慌ててうちの接骨院に来るんです。父親 は、泣き叫ぶ2~3歳のお子さんに、ちょっと肘を回し、コツと音がして、外れた肘のが治 るんです。そのお子さんに笑顔でほめて、痛かった方の手に飴玉を渡す。こんなことが月に 2、3回ぐらいありました。恥ずかしながら、私はこの10年間、骨折や肘内症の子どもを 整復したことがありません。私が柔道整復師になった30年前はまだ骨折患者が来てまし た。ところが今の柔道整復師は、あの当時の柔道整復師と全然違います。骨折や脱臼の外傷 患者がほとんど整骨院に来ないため、整復ができない柔道整復師がほとんどです。マッサー ジや整体は柔道整復師の本来の仕事でないのに、実際それが主流になってきている。保険請 求も厳しくなる一方で、町中接骨院であふれている。本当に大変な時代になってきていると 思います。私の息子も同じような仕事をしてますし、友人たちも子供を柔道整復師という職 業を継がせています。なので、もっともっと続けて栄えていくべき職業であると。そのため にはどうしたら良いのかと悩んでおります。全国に7万5000人いる柔道整復師の人たち に、大島さんのお話から将来のヒントを頂ければと、そんな思いでこの企画をいたしました。

1. 超音波エコーの問題


大島:ありがとうございます。私がこの柔道整復の先生たちとのご縁をいただいたのは、参 議院議員選挙のとき接骨院の先生に大変に多くの応援をいただいたんですね。応援していた だいた整骨院の先生たちへの恩返しということで、私が参議院で先生たちの声をしっかり代 弁していこうと心に決めて始めたのです。その後、民主党政権のときに鳩山さんが「統合医 療を普及、促進する議員の会」を発足させました。当時、「統合医療」という言葉がなく、 NHKに「その単語はちょっと放送では使えません」と言われた経緯がありました。私は事 務局長として、柔道整復、西洋医学ではない東洋医学、それから温泉治療や、音楽療法な ど、様々なものを統合し、予算をつけて進めようとしました。その中で、特に柔道整復の制 度が非常に複雑になっていると感じました。その時、厚労省を呼んで「肩こりで保険のきく ところがあったよと言ってる人がいる、これは制度のことが周知されていない現れだ。まさ にそれは国の責任ですよ。だから柔道整復という国家資格の療養費という部分、これは非常 に難しいけれども、ちゃんと国民に理解をしてもらえるようにしなきゃなりませんね」とい うことを言いました。そうしたら、厚労省は「先生、この業界は団体がいっぱいあって怖い んですよ」って言ったんです(笑)。 保険請求する仕組みが受領委任払いという協定契約の中で行われるという、一般の人には なかなか分からないような、難しい仕組みになっているということを周知をしながら、柔道 整復の先生たちのいろいろな課題についてひとつひとつ教えてもらい、一緒に勉強して12 年間過ごしてきました。後療料を30円値上げしたなんて、これは過去にはないし、未来に も今のままでは実現不可能です。4部位、5部位の部位請求が不支給になったときに、初検 料とかそういう1回きりのものではなく、継続して支払われる後療料、そこを30円値上げし ました。これは画期的なことで、これだけでも柔整の先生は大島を応援する価値があると (笑)。 今日はいろいろなことについて佐藤先生と対談しながら、皆さんにぜひ柔整についての知識 を深めていただければと思います。どうぞよろしくお願いします。 1. 超音波エコーの問題 佐藤:よろしくお願いします。私は年配者で、業界に対するコアな部分があるので大島さん を知ってるんですけれど、若い柔道整復師は知らない方が多いと思います。YouTubeで国 会での大島さんの柔道整復師について発言とか、いくつか載ってるんですけど、そのうちの 超音波のことと、後療料金のことと、あと、柔整師いじめである不支給を国会で厚労大臣に 強く要求した部分の、YouTubeの国会動画を紹介します。

 

 

 

佐藤:大島先生の素晴らしい国会発言でした。けど柔道整復師の制度をよく知らない人がこ れを聞いてもわからないと思います、実は、柔道整復師は昔はレントゲンが撮れてた時代が ありました。私の父親の接骨院にもポータブルのレントゲンがあって、外傷の患者には普通 にレントゲンをバンバン撮ってたんです。厚労省も暗黙の了解だったのですが、平成のはじ め頃に、接骨院でレントゲンを撮ってはいけないという厚生省の通知があり、その後、レン トゲンを撮った柔道整復師はどんどん捕まってしまいました。一方で、超音波診断(エコ ー)の技術が発達して、骨折の診断にレントゲンの代わりに超音波エコーを導入した整骨院 が増えてきました。ただ、そのころは専門学校の教育カリキュラムに超音波エコーの科目が 入ってなかったので大島さんが入れるように国会で発言していただいたということですよね。 

 

大島:実はこれには裏話がありまして・・・・。最初の通知というか、さっきの私の質疑の 中にもあるのですが、厚労省は、柔道整復師の先生がエコーを使って良いのか悪いのか分か らないような、どうにでも取れるような通知をずっと出してきているわけです。だから結局 良いのか悪いのかが分からなくてモヤモヤするんですね。私はその通知を見て自分なりに判 断すると、こういうことが書いてある、「柔道整復師の先生が医師の指示でエコーを使うの は業務の範囲外だからダメですよと。しかし、先生たちが自分の施術の参考にするために使 うなら良いですよ」そういう意味なんです。それをミックスして書いてあるので良いか悪い か分からない。そこで私は、明確に切り分けて書いた通知を出させた。 あれ、ぶっちゃけた話、私がまずはその文章を作って、その文章をリークする、厚労省はこ ういう見解なんだというのがバッと出るわけです。柔道整復師の世界の中でババっと走りま す。それがタイムラグで医師会のところに流れるわけです。そうすると医師会から「なん だ、こんな明快なこと言うと困るじゃないか」みたいな圧力が必ずかかるんです。そうする と「誰だ?担当者」って必ず言われてしまいます。私は厚労省の官僚に「そうならないよう に正式な通知として出したら良いのではないでしょうか」と言いました。それで厚労省は、 平成15年9月9日、正式な通知として出したのです。 これが大島九州男たる政治手法なんです。そうじゃなかったらああいう通知は出ない。そ れで結局、後に通知が2回出たって言ってたでしょう?それって今言ったように圧力がかか ってそういうものが出てくるわけです。だから私が、15年9月9日に出た通知と主旨は変わ らないですよねと聞いたら、「変わるものではありません」っていう答弁です。あれって官 僚もかわいそうなんですよ、そういうところから圧力をかけられて無理無理通知を出す。彼 らは真面目だから嘘を書けない。だけど今言うようにちょっとモヤモヤするような圧力がか かる、あれは間違いなく医師会とか医師会に通じる人たちの圧力ですね。そういう世界なん ですよ。だから私はもう一度9月9日の通知の主旨と変わるものじゃないですよねっていう ことを確認した。そういう裏話があったのです。


佐藤:そのころ大島さんは民主党議員だったんですよね。社団法人日本柔道整復師会(以 下、日整)という公益社団法人がありまして、自民党と蜜月になってるんですよ。自民党で なく、民主党の一議員である大島さんがやられたってところがすごいことだと私は思ってま す。

 

 大島:いやいや先生、日整は、全国の会員たちに政治献金用として会費を徴収して、自民党 に毎年、多額の献金をしています。それだったら俺に少し でもいいから寄付して(笑)。 佐藤:この何十年か、政府は柔道整復師のためになにかしてくれたか? 大島:柔道整復師の先生たちが頑張ると、整形外科の先生たちがおもしろくない、。ある医 師会の会長は、「もう柔道整復師の使命は終わった、もう一代限りだと。免許もなくして良 い」なんて言ってるんですから。私が与党だったことや、会長にが大学の先輩でもあるとい うご縁もあったので、「会長、そうじゃないですよ、こうですよ」なんて説明したりして ね。みんな洗脳されちゃうんですよ。そうじゃないんだという正しいことをお伝えしていか なくちゃならない。しかし今は、国会でそういうこと(柔道整復師のこと)を言う人が誰も いなくなってしまった。柔整の療養費もこの10年間でどんどん減らされています。