神戸市に審査請求

 

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神戸市に審査請求

続・神戸市に審査請求

 
神戸市からの弁明に対し、以下のとおり反論書を提出しました
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審査庁 

神戸市長 久元 喜造 様

 

審査請求人 辻 本 達 也

 

反 論 書

 

審査請求人が令和6年7月12日付けで提起した公文書公開決定(神環境保第523号)に係る審査請求について、令和6年8月14日付で審査庁より処分庁からの弁明書(令和6年8月9日付け神健食第637号)の送付を受けたが、次のとおり反論する。

 

1 反論の趣旨

あらためて、一部を非公開とした決定を取り消す、との裁決を求める。

 

2 本件処分の内容及び理由への反論

(1)   処分庁は、ミネラルウォーターについては清涼飲料水の一種として食品衛生法の規格・基準の適用を受けるが、食品衛生法ではPFASについての基準は設定されていないと主張する。事実、現時点においては処分庁が述べたとおりではあるが、現在、政府においては海外における事例を踏まえ、ミネラルウォーター類におけるPFASの規格基準の設定等について検討を進めているところである。

 

いうまでもなく、これはPFASの人体への影響を懸念してのものであり、そのことから法的根拠がないにもかかわらず厚生労働省は令和5年1月11日付「事務連絡」(情報提供)を神戸市健康局食品衛生課へ送付したのである(甲1号証)。

 

「事務連絡」(情報提供)を受けた神戸市健康局食品衛生課は、法的根拠はないにもかかわらず、事務連絡において指摘のあったミネラルウォーターについて調査を実施し、事業者に対し必要な措置を求めたところである。

 

これらの経緯から、処分庁は当該ミネラルウォーターについては法定に違反していないながらも問題があると認識していたものと推察するところであり、処分庁の弁明内容と実際の対応とには矛盾があると考える(甲2号証)。

 

また、当該ミネラルウォーターを製造する事業者が対策を講じ、現在は、暫定目標値を上回る状態は解消されていることを理由として述べているが、過去一定期間において高濃度のPFASを含む飲用水が市販されていたことは事実である。

 

国民・市民には、事実を知る権利があり国や地方自治体には、情報を十分に公開する義務がある。

 

処分庁は、事業者名、住所、製品名、施設の状況及び用途に関する部分については、特定法人等が識別されもしくは識別されうる情報であり、法令には違反しておらず、事業者の対応により暫定目標値超過は解消されている本事案においては、公にすることにより当該法人等の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められると主張する。しかし、本件は、法人の利益よりも不特定多数の市民の生命、身体又は健康に係るテーマであり公共の福祉を優先すべき事件であるからこの理由にはあたらない。

 

(2)   審査請求人は、処分庁が公文書の一部を非公開としたことにより、神戸市内でミネラルウォーターを製造する他の事業者に不利益が及ぶ恐れがあると申立てた。これに対し処分庁は、条例第10条第2号アが公開しない対象として当該法人の正当な利益を害する場合について規定していると述べているが、これは審査請求人の申し立てに対し正対した弁明とはなっていない。

 

処分庁の主張は、当該法人の利益を守ることにより他の法人等に不利益が及ぶことを容認するものとも読み取れるところであり問題があると考える。

 

処分庁の決定は、本件に関係なく、何ら落ち度もない法人に不利益が及ぶ恐れのあるものでる。

 

(3)   処分庁は、本件が人の生命、身体又は健康を保護するため、公にすることが必要であると認められるものには該当しないと主張する。しかし、これについては以下のとおりその理由には当たらないと考える。

 

① 世界保健機関(WHO)のがん専門機関である国際がん研究機関(International Agency for Research on Cancer, IARC)は、PFASの代表的な物質であるPFOA(ペルフルオロオクタン酸)とPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)の発がん性について見解を示している(甲3号証)。

 

② 諸外国においてもPFASに係る研究が進み、健康リスクを認識した規制の強化をはじめとした対応が進められている(甲4号証)。

 

③ 政府においてもPFASに係る検討が進められている(甲5号証)。

 

④ 政府においは、未だ結論が出されていない状況ではあるが、検討過程において十された試売検査により、本件事実が判明した。

 

⑤ これにより、関係自治体である神戸市に対し対応を要請する文書を発出したところであるが、当該文書においても「情報提供」としているとおりミネラルウォーター類におけるPFASに係る対応についてはその根拠となる法令等が無いため「行政指導」等権限を行使することができない(甲2号証)。

 

⑥ それにもかかわらず、政府が事務連絡といった形式で「情報提供」を行い対応を促した背景には、健康リスクに係る懸念があるものと推察する。

 

⑦ 事実、審査請求人が厚生労働省及び消費者庁職員に聞き取りを行った際に、同省及び同庁職員は、PFASの健康リスクについて認識していることを認めている(甲6号証)。

 

⑧ よって、本件を国内において、PFOS、PFOAの摂取が主たる要因と見られる個人の健康被害が発生したという事例は確認されていないこと、内閣府食品安全委員会が定めた「食品に含まれる有機フッ素化合物 (PFAS) に関する食品健康影響評価書」(令和6年6月25日)で、PFOS、PFOAの健康影響について多くの項目に対し「証拠は不十分」「証拠は限定的」とされていることを理由に本件が人の生命、身体又は健康を保護するため、公にすることが必要であると認められるものには該当しないと判断することには問題があると考える。

 

3 結論

 以上、意見を述べたところであるが、処分庁の決定にかかる根拠は、断章取義的であると言わざるを得ない。

 

 また、処分庁の決定は、日本国憲法第第13条(国民の知る権利)並びに同第21条(幸福追求権)を侵害するものであり公共の福祉にも反する。

 

 よって審査請求人は、公文書の一部を非公開とした本件決定を取り消すと の裁決を求めるものである。

 

4 証拠書類等の表示

甲1号証

市販ミネラルウォーターから水質管理目標値を超過するペルフルオクタンスルホン酸(PFOS)及びペルフルオロオクタン酸(PFOA)が検出された事例について(情報提供)(令和5年1月11日 事務連絡)

甲2号証

有機フッ素化合物(PFAS)が検出されたミネラルウォーターへの対応について(令和6年1月15日健康局食品衛生課)

甲3号証

食品安全衛生委員会「有機フッ素化合物(PFAS)」評価書に関するQ&A(2024年6月25日)

甲4号証

PFAS汚染とは何か?海外の対策と先進事例(ジョン・ミッシェル2020年12月1日)

甲5号証

有機フッ素化合物(PFAS)の食品衛生評価について(食品安全衛生委員会2024年6月25日)

甲6号証

PFAS規制ルールを 党兵庫県委環境相あて要望書(しんぶん赤旗2024年8月3日)

 

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