アンバサダーを務めることになるなら、ウィルキンソンと決めています。
オファー待ってます。
そう、水が流れないのだ。
水を汲み上げるポンプ的なアレが停電でソレなんだと思われるが、とぐろを巻いたバハムート、いや、リヴァイアサンを置いてきぼりにして俺は行かねばならぬ。
「キミまでボクを置いて行くの…?」
そんな声が聞こえたとか聞こえないとか。
そんなことはどうでもよく、そうこうしてるうちに946シティのネイティブ極まりない実家と連絡が取れた。
停電中だが、どうやら無事らしい。
未だに界隈最恐のヤンキーな兄がガーディアンしてくれてるなら大丈夫だろうと、俺はほっと胸をなでおろした。
そして、実際野性味溢れる胸毛の里をなでおろして気付いた。
防災リュックを作ったわりに、俺はパンツ一丁のままだったのだ!
むしろソックスは履いていて、なおのこと変態で無防備な状態だった。
こりゃイカンとポロシャツを着込み、スキニーに足を通した。
おっと、ポロシャツはフレッドペリーじゃないぜ。
フレッドペリーのポロシャツを着ている奴は、大抵◯◯だ。
間違いない。
職場へ徒歩で向かう準備は出来た。
あとは5つ数えてバスケットシューズを履くだけだ。
すると、職場から電話がきた。
今日は出勤できそうかと、ナチュラルな質問をぶつけてきやがる。
行くに決まってんだろ!
ところでそっちはどうだ!
今のところなんとか無事とのこと。
俺が歩いて行くまで持ちこたえろバカヤローとだけ伝えると、止められた。
朝から2時間弱の徒歩は無理だろうと。
どうやら上司が迎えに来てくれるらしい。
待ち合わせはテレビ塔。
ありがたい。
素直に、ありがたい。
とにかく、デイパックを背負い、ブレーカーを落とし、俺は不帰の思いで家を出た。
よく晴れた9月だった。
そこいらの信号は無表情のまま色を無くし、国道や大きな通りでは、警察官が人や車を懸命に誘導している。
事前に入手した情報通り、コンビニは騒然とし、バカ同士の言い争いの声が聞こえる。
買い占めが始まってる。
俺は比較的おとなしめのコンビニに寄り、床に落ちていたおにぎり、たまごサラダパン、一夜限りのMonsterエナジー、水を買った。
電気の消えた店内でも、店員は元気だった。
「ありがとうございました。お気をつけて」
あとは俺に任せろバカヤロー、グッドラック!
と、言ったような気もするし、言わなかったような気もする。
とにかく、一夜限りの赦しを得て、俺はMonsterエナジーを体内にブチ込んだ。
長い一日が、今始まった。
人生はまだまだ続く。
ブチャラティ!
