岸信介の再評価を | 辻雅之のだいたい日刊オピニオン
安保改定から50周年ということで、安保条約についての日米共同声明が出されました。内容は新聞などでチェックいただければと思いますが、民主党政権の下で、ひとまずこういうものが出せたことはよかったと思います。

サンフランシスコ平和条約調印(1951年)から1時間後に調印された「旧安保条約」では、いちおう在日米軍の日本への軍事援助について言及はありましたが、それは米軍を「使用することができる(旧1条)」という曖昧なものでした。米軍の基地使用、これだけが確定した条約だったのです。

これが改定後の条約第6条では、「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」について、「自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言」することになり、いわゆる「日米共同防衛」が具体化されました。

新安保条約にともなう交換公文では、米軍との事前協議制が確立されました。もっともこれは「核持ち込みの密約」を生むことになったのですが、逆に言うと、アメリカは密約でもないと核兵器を持ち込めなかったわけです。旧安保条約のままだったら、米軍は堂々と核ミサイル基地を日本に作っていたかもしれません。

日米安保の改定は、アメリカの要求のまま作られた不平等性・片務性を、なるべく日米対等なものにしたわけで、これを実現した時の首相・岸信介の功績は少なくないことは確かです。

いまだに安保闘争を引きずって、安保改定を行った岸を極悪人のように言う人もいますが、彼が安保改定にいかに努力したかということはわかってほしいと思いますね。今回の日米共同宣言を期に、彼が再評価されることを期待しています。

もちろん、手放しで評価できる政治家ではないことも付け加えておきます。ただ、政治は善悪二元論では片付けられないし、そんな評価をしてはいけないということは、強調しておきたいと思います。

そんな安保改定の過程や、岸がどのような人物だったのかを知るための本として、下の伝記を挙げておきます。著者は学者として岸信介に最も多くインタビューした人物であり、その膨大な一時資料も含めて非常に客観的でわかりやすい伝記となっています。

岸信介―権勢の政治家 (岩波新書 新赤版 (368))/原 彬久

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