【リンダリンダリンダ】 | ついてる男たち〜きっとリターン〜

ついてる男たち〜きっとリターン〜

イサオの脱鬱コラム・映画批評&アツシのイラスト。きっと週1更新。

監督: 山下敦弘
製作年度: 2005年  製作国・地域: 日本  上映時間: 114分



【※ネタバレ含みます。知りたくない人は右上のバツを押すべし。】


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とある地方都市にある高校。
文化祭を数日後に控えたある日、
軽音楽部所属の5人組ガールズバンドが、ギターの骨折を発端に分裂。

ギターとヴォーカルがバンドを離れたが、
ステージに立つことを諦められなかった3人は、
たまたま目の前を通った韓国からの留学生のソン(ペ・ドゥナ)を
ヴォーカルに引き入れ、THE BLUE HEARTSのカヴァーを目指す。

文化祭ライブまであと3日。寄り道だらけの4人の練習が始まる・・・。



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文化祭+ブルーハーツ=青春。
そんな方程式が成り立つほど、アラサーにはマストな組み合わせ。

個人的な話になるけど、高校の頃、文化祭ではなかったけど、
卒業式にギターを弾ける奴が壇上に上がって演奏を披露する・・・という、
今思えば謎の催しがあったんだけど、その場で演奏されたのも
「リンダリンダ」でした。

自ら言うのも何ですが、割と進学校だったので、
みんな取り乱すこともなく着座して聴いているわけです。
でも、サビ前の抑圧されたメロディーからサビに入った途端、
自分を含めた高校3年の男たちが一斉に壇上に上がりヘッドバンキング。

それを先生や親は笑いながら手拍子。
演奏を終えるや、皆颯爽と席に戻り、卒業式再開・・・という、
なかなかに素敵な思い出があります。

歌詞はもちろん、ブルーハーツを取り巻く個人史的なエピソードは、
そのままそれが青春の1ページに刻まれるという、
日本人にはとっては魔法のような曲なんだと思う。

さて。

音楽映画というと、全編通じて楽しめる映画って少なく感じます。
エミネムの【8 mile】は割と序盤から楽しめた記憶があるけど、
それ以外はほとんどが音楽シーン以外は微妙。

大体が序盤~中盤くらいまで鬱々とした展開が続いて、
後半手前でようやく弾ける兆しが見えて、クライマックスの演奏で、
それまでの退屈だった物語を帳消しにする・・・

・・・結果、☆5つが満点だとしたら「☆3.5」みたいな着地。

【北京ヴァイオリン】とかもそうですね。
ラストの演奏シーンは何度もリピートしたくらい鳥肌ものなんだけど、
いかんせんそこに至るまでの道程が正直、退屈。

で、本作はどうだったかというと、まさにそれ!!!!

もう嫌になるほど退屈。
今になって観てみると結構、後の人気者・・・松山ケンイチとか、
小出恵介とかいろんな役者が出てるんだけど、
主要メンバーのテンションの低さが半端ではない。

バンドだから、一人くらいそういう奴がいてもいいけど、
全員キムタクか?!ってくらいボソボソボソボソ喋る。。

しかもリーダー格の恵(香椎由宇)がさらに輪をかけて短気なもんだから、
女子高生のガールズバンドというキャッチーな響きからは
想像できないくらいに暗いんです。

演出なのかもしれないけど、雑に言うと演技下手だと思う!!

さらに気に食わなかったのがラスト手前、
文化祭の自分たちの出番を前に、寝過ごしてしまい、
突如、恵(香椎由宇)の夢の中のシーンになるところ。

それまでの鬱々としたテンションじゃなく、
クドカンがやりそうなぶっ飛びコメディーノリ。

「ラモーンズとピエール瀧さんが観にきてくれたわよ!」

・・・みたいな。
元々そんなノリの展開じゃなかったからスベってる上に、
恵(香椎由宇)ってこんな夢を観るような奴じゃ絶対ないじゃん!っていう。
ここにきて、人物像が崩壊するという残念演出にしか見えませんでした。

あと、ちょこちょこ入る恋愛要素ね。
大して物語に影響することもなく、さほど甘酸っぱくもなく、
学園モノだから申し訳程度に入れました的な。
あれ、なくてよかったと思う。

それでも!!!

この映画が☆3.5をキープできたのは、
ヒロインのソンちゃん(ペ・ドゥナ)の魅力に尽きる!!

【ペドゥナ・ペドゥナ・ペドゥナ】に改題してもいいくらい。

能年玲奈をより庶民的にしたような無垢な存在。
日本語が堪能じゃない故に、どんなにピリピリした状況でも、
1人だけ別世界にいるようにふわふわしてる。

すっとぼけた彼女とのコントラストのおかげで、
ギリギリ、ラストまで鑑賞に堪えうるという構成。

ペ・ドゥナと言えば【復讐者に憐れみを】と
【グエムル】しか観たことないけど、
いずれも登場人物の中で一番光ってました。
存在感だけで間が持つ女優さんだと思います。

そんな彼女の歌う「僕の右手」
「リンダリンダ」が抜群に良いんです!!

劇中のふわふわしたキャラクターを反映したかのような
イノセントヴォイス!!

歌唱力が高いというタイプの魅力じゃなくて、
声質が素直な上に、体育館の天井を突き破って空に向かっていくような
抜けの良い声をしているんです。言うなれば“青春の声”をしている。

音楽映画でラストの演奏シーンっていうのは、
それまでの紆余曲折ある物語を踏まえた上での感動だったりするけど、
これに限って言うと、ただただペ・ドゥナの歌が良い!

前述した通り、物語全般をほぼ否定してしまっている自分からすると、
そういったカタルシス要素はないに等しいのです。
なのに、感動できたっていうことはそういうことなのです。

ブルーハーツのカヴァーとして純粋に優秀である!!

mp3にしてiPod入れたいわ本当。
というわけで、ペ・ドゥナが歌う2曲のカヴァーソングを聴くだけでも、
この映画は必見です。

どーでもいいけど、恵(香椎由宇)みたいな子は苦手だ。
・・・本当にどーでもいいね、この情報。



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次回、更新予定の映画タイトルは
【キック・アス ジャスティス・フォーエバー】です。


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すでに観た人、観てない人、
これきっかけで観てみ。