海外の老人ホームと日本の老人ホームを比べる | 有料老人ホーム入居支援センター 代表理事 上岡榮信のブログ 「終の棲家通信」

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国内外合わせて1400箇所以上の施設を自分の目で確かめてきた「老人ホームの目利き」上岡榮信(うえおかしげのぶ)が、老人ホームのことはもちろん、国内や海外で出会った企業・組織・人などの印象深いお話を中心にお届けします。

老人ホームを比較する

老人ホーム,あるいは高齢者住宅が作られる背景を知る

世界各国の高齢者住宅,あるいは介護や、看護が提供され老人ホームと呼ばれる施設を

見学し、比べる際に考慮すべきことがある。


1.先ずはその国の総人口、及び高齢者の人口である。

2.次にはその国のGDPと高齢者のための社会保障、福祉の予算総額。

3.国、及び国民が就労を終えた高齢者をどのように遇するかの意識、

4.そして家族関係、絆の様態である

5.上記の事柄を配慮した法律、制度が決まり、運用、運営がある


今回、ハンガリーのブダペスト、チェコのプラハ、オランダのアムステルダムの3つの首都に

おいて、それぞれ3箇所、2箇所、2箇所の高齢者住宅,介護、看護施設をみて日本の老人ホーム

と比べて見て気づいたことがある。


日本では、介護保険が始まって介護専用と呼ばれる老人ホームが爆発的に開設したが、その狭さ

特により多くの部屋数を確保する為か、間口3mX奥行6m で18平米,あるいはそれ以下の面積

でトイレは無論、洗面台もない部屋が多いことに驚いた。


今回も、7つのホームの居室を注意してその広さと形を見たが正方形に近いものがほとんどで

うなぎの寝床のような部屋は一切なかった。


アムステルダムは、国も、街も、世界有数の狭小さで、京都や、世界の多くの都市と同じく建物の

間口、幅に税金が課せられた結果、間口はせいぜい6メートル、奥行は30メートルという建物は

普通だが、3X6の泥鰌の寝床?はないことに感心した次第である。

効率と利益を最優先する利益重視事業者と、人間の住環境を思いやる民族の違いであろうか。


2つめは、昼食、夕食時のアルコール飲料である。

以前、イタリアのフィレンツエ郊外の老人ホームを訪問して忘れられないシーンが昼、夜の食事に

一昔前のコカ・コーラの小瓶サイズの赤ワインが1本づつ、食卓についた入居者全員に配られて

いる光景であった。 

見学の際にも、タンクで仕入れたワインを小瓶に詰めている作業を目の当たりにして老人ホーム

高齢な入居者といえどもワインを飲みながら時間をかけて食事をたのしむお国柄に感激?したこ

とを今も鮮明に思い出す。  疾病や、体調の関係か居室はOKだが、食堂ではあらゆるアルコー

ル飲料が禁止されている現況はいつまで続くのだろうか。 高齢者の集団生活とはいえ、諸外国

の実態から程遠い気がするのである。


今回訪問した3つの国ので合計7つの介護付老人ホーム、高齢者住宅を見たが,看取りは施設の

種類、態勢に関係なく?普通に行われているサービス?であった。

日本人の臨終の場は8割前後が病院、自宅の畳の上(ベッドも含めて)が1割強、老人ホームに

至っては5%前後という、ちなみにオランダでは、自宅7割、病院3割と聞いた。


この大きな違いの背景は2つあり、1つは日本の宗教人、宗教団体が死に対しての啓蒙?、教育

死生観などに積極的に行動しない事(死後のお通夜、葬儀、法事は有料サービスで出番である)

家族関係、近隣関係、町内会などのコミュニテイーも消滅し、冠婚葬祭を仕切る、お世話する人材

が不在で死の前後はタブー視?されている社会状況でもある。


2つめににより大きな理由として、臨終の24時間以内に医師との接触がない場合、変死扱いとなり

行政解剖とか、警察による死亡原因の調査など煩わしさから、死に水をとったり、親族、友人が

枕元で見送る習慣も昔の話になった感がある。

時代と社会は変われど、日本人の臨終の場面はいま一番寂しい時代ではなかろうか。