母の口から姫路
という言葉が出るたびに
僕は何か誇り高い響きがそこに
こもっているのを感じた。
母は姫路城といわず
しらさぎ城とか
ハクロ城と呼んだ。
そういう言葉の響きに
白亜の壁と幾重にも
重なる破風と屋根を頂いた
格調高い城郭への誇りが読み取れた。
母の細められた目や
ほほえみの浮いた口許に
日本一美しい城という
矜持が伺えた。
無数の白鷺が
羽根を広げ舞っているように
軽快で優雅な諧調を湛えた城。
そんな美しい城のある
故郷を持つ父母が
子供には自慢だった。
(「れくいえむ」の一節から)
↓
