スポンジを積んだロバと塩を積んだロバ
ひとりのロバ引きが杖を片手に
ローマ皇帝の許へ
耳の長い使者を引いて行った
一頭はスポンジを背負い至急便のように歩み
もう一頭はゆっくりと注意深く歩を進めた
その荷物は塩だった。田舎を旅する者らは
山を登り、谷に降り、小道を辿って
とうとう川の浅瀬に出くわして
おおいに困り果てた
ロバ引きは毎日この浅瀬を渡っているので
スポンジを積んだロバの背に跨り
もう一頭を前へと追い立てた
前を行くロバは眼の前の
深みに嵌ってしまったが
水から脱け出て逃げ出した
二三回水の中でもがくうちに
背中の塩はすべて溶けてしまい
ロバは肩の重みがなくなり軽々と感じていたから
スポンジを背負ったロバは仲間を見倣って
自信を持ちさえすればいいとばかり
背にロバ引きと塩を乗せたまま
首まで水に浸かったので
それぞれ水をしたたかに飲んだ
ロバ引きとロバはワインを飲むみたいに
スポンジも水をいっぱいに吸い込み
すっかり重くなり
ロバは頽れてしまい岸へあがれなくなった
ロバ引きはすぐにも確実な死が
やってくると恐れたが
だれかが助けてくれて命は救われた
だれが助けたかは問題じゃない
ここで学べるものは
ひとの真似をしてはならないということ
ひとりが巧くやった方法が
万人に有効とは限らない
フランス語のお勉強はお休みにして
今日は上の寓話にちなんだアクチュアルな話題を
大統領選挙戦で、アメリカのトランプ大統領のやり方を
真似たル・ペン女史はマクロン氏に大差で敗北を喫した。
アメリカのやり方がフランスでは通用しないことの証明だと思う。
大統領が決まって2日明けた昨日、さっそく6月の下院総選挙に
向けてフランス政界に変動が現れ始めた。
まず、社会党は前首相のマニュエル・ヴァルスがマクロンのEM 前進陣営に投じ
社会党離脱を表明した。
保守党のLR(レピュブリカン=共和党)からも党内予選に出馬したブリュノ・ルメールがマクロン支持に脱け出し、LRの次期総裁が噂されているバロワン上院議員が「党は家族であり家族を離脱する者は党籍を剝奪する」と厳しく釘を刺した。
さらに大差で負けたとはいえ決選投票に進み、1千万票も票を伸ばしたマリンヌ・ルペン女史のFN(国民戦線)も党名を変え、深く大きな変革を宣言。これまで絶えて表ざたにすることがなかった党内の路線、方針を巡っての対立が明らかになり、マリンヌ女史の姪で史上最年少(23歳)で国会議員に選出されたマリオン・マリンヌ・ルペン女史(現在27歳)が子育てと政治活動の両立の困難を理由に政界からの(一時的な?)引退を表明したと報じられた。
マクロン新大統領は、最初の困難な公約を実現できるか? その実現にあたって大統領に与えられた権限オルドナンスを使って強行するか? すでに労働組合からはオルドナンスによる立法はやめてくれと反対が表明されているので、強行するとなると対立を煽る形となり今後の政局が困難になるだろう。
真っ先にやらねばならない課題とは、マクロン氏が経済・産業相だった時代に法案提出し、労働階級から反対を受けた「労働法」改正。現行の「週35時間制」を柔軟にし、企業ごとに経営側と組合とが交渉してその企業に最適な労働時間を決める、という案。
週35時間制は大企業の社員にはありがたいかも知れない。しかし当初この法案を提出したマルチンヌ・オブリー女史が理由として挙げた「ワーク・シェアリング」は中途半端で効果があがらず、中小企業、個人起業にとっては大きな足枷となっている。
フランスの景気回復、雇用の創出にまず必要な競争力を企業、そしてひとりひとりの働く人たちが自覚し改善をしなければならない時期が来たのであって、「週32時間制」と若手労働者に「一律サラリー」支給というオブリー女史の弟子にあたるブノワ・アモンが大統領選での善戦にも拘わらず6%しか得票できず敗退したのももはや「過保護」の労働・社会政策は失業問題の解決と経済活性化の足枷となるばかりだとフランスの大衆が認めたことを明かしていると思う。
(つづく)
