ラ・フォンテーヌ寓話 26 第二の書 ー 1の続き | 雷神トールのブログ

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前回に続きラ・フォンテーヌの「寓話」です。

第二の書の冒頭「難しい趣味を持つ人に反して」

この詩の5行目から16行目までを

読んでみます。

 

まず、原文のフランス語

Mais je ne me crois pas si chéri du Parnasse (1)
Que (2) de savoir orner toutes ces fictions.
On peut donner du lustre à (3)leurs inventions ;
On le peut, je l'essaie (4) : un plus savant le fasse.
Cependant jusqu'ici d'un langage nouveau
J'ai fait parler le Loup et répondre l'Agneau.
J'ai passé plus avant : les Arbres et les Plantes
Sont devenus chez moi créatures parlantes.
Qui ne prendrait ceci pour un enchantement (5) ?
Vraiment, me diront nos Critiques,
Vous parlez magnifiquement (6)
De cinq ou six contes d'enfant.

 

 

 

<フランス語の注釈>

 

(1) Parnasse ギリシャにある標高2460 m の山

古代ギリシャではこの山(Mont Parnasse )に

芸術・学問のミューズ(女神)が棲むとされた。

ミューズは全部で9人いた。

   Clio (歴史) 現代フランスでは ルノーの小型車に使われている クリオ

      Enterpe (音楽)アンテルプ

      Thalie (喜劇)タリー

      Melpomene (悲劇) メルポメーヌ

      Terpsichore (ダンス)テルプシコール

      Erato (エレジー、悲歌 )エラト

      Polymnie (抒情詩、リリック)ポリムニー

      Uranie (天文学)ウラニ

      Calliope (叙事詩、英雄譚)カリオペ

 

 

パリを知っている人には、「モンパルナス」という

地名があるのをご存じだろう。Montparnasse

19世紀の終わりから20世紀初頭にかけて

ここは芸術の中心だった。  絵画では

「エコール・ド・パリ」がまずモンマルトルで

ついで画家たちがモンパルナスへ移り住み

創作を続けた。ユトリロはモンマルトルだが

ピカソ、モジリアニ、藤田嗣治、スーチン……

佐伯祐三も一時期モンパルナスに住んだ。

 

文学で「パルナッス派」といえば「高踏派」

19世紀の実証主義の時代にロマン派と

象徴派の間に起こった。ルコント・ド・リール、

ステファヌ・マラルメ、ポール・ヴェルレーヌ、

フランソワ・コペーなど……

 

日本では森鴎外と堀口大学が代表。

テオフィル・ゴーチエの「芸術のための芸術」

(l'art pour l'art )という主張の影響により

生まれた流派。客観主義、形式の厳格さ

感情の超越を特徴とした。

 

(2)Que de …… = au point de + inf

……するほどまでに

これらすべてのフィクションを飾ることが

できるほどまでにパルナスを

親しく感じていない


(3)donner du lustre à qn.~

    ~に艶(輝き)を与える


(4)un plus savant le fasse

ここでは接続法が使われてるので

    essayer que + subj となるよう努める

「もっと学のある者がそれをするよう

私はそれを試みる」と解釈する


(5)charme 英語でチャーミングcharming

という語の語源は「魔法に魅惑される」

「人の心を魅惑する呪文」と魔法、呪文

に関係があり、詩の言葉が魅惑する

意味に使われた。 P.ヴァレリー

    に詩集「シャルム Charme 」がある


(6)magnifiquement 豪奢な言葉で

ここでは「童話」子供向けの詩に

豪華な言葉を使う、と対比的に

使われている


それでは通して訳してみます。

 

私はパルナッスにさほどこだわりを感じない

これらすべてのフィクションを

飾れるほどまでには

彼らの発明に輝きを与えることはできる

そうできるし、私は、より学のある者が

そうしてくれるよう努める

けれどもこれまでに新しい言葉でもって

私は狼に話をさせ子羊に答えさせた

さらに進んで樹木と植物が

私の家では話をする被造物となった

こうしたことをだれが

魅惑と捉えないだろうか?

「まったく、と批評家は言うだろう

あなたは豪奢な言葉で語りますね

5つか6つの童話について」

    

 

(つづく)