オープニング | 雷神トールのブログ

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トリウム発電について考える

1月17日無事成田に到着しました。


ギャルリーのパソコンを借りて投稿しています。


東京は寒く、昨日は霙で、傘を持つ手がかじかみそうでした。


パリを出発する時、変わったことがあったので、まずそのことから。


「二人展」出品のため、油絵を4枚重ねて紐でくくり、手に提げて機内持ち込みとし、乗務員さんに預けようと思っていました。


        ***         ***       ***


めのおが乗る飛行機のチェックインカウンターは3つある。
ひとつはアジア系の女性。ひとつは色の白い北欧女性。そして、いちばん右に色の黒い、短く黒い顎鬚を生やしたアラブ系の男が、チケットとパスポートを確認しながらバゲージのチェックイン手続きをしている。


列の最後部について並んでいるめのおが、なにか大声で騒ぐ気配を感じたので視線を回したところ、背の低い旅行客が手続きが終ったらしく、カウンターを去り際に「サラマリコン」と男に挨拶したので顎鬚の男は、黄色い歯と白い眼を剥き出して喜びを露わにしながら、「サラマリコム」と周囲に響き渡る大声で、アラブ語の挨拶を返したのだった。


それは、先週パリであった過激派のテロ事件と、それに反応した百万人近い市民が、胸にテロへの恐怖と、反アラブ感情を秘めながら、表現の自由を掲げる共和国を守るぞという意志表示のために静かなデモを繰り広げたことへのその男のやや挑発的な民族感情の表出のようにめのおには見えた。


その男を横目で見ながら、めのおは自分が、どのカウンターに行くことになるのか予想してみた。眼の前の東洋系の女性がもうじき年寄夫婦の手続きを終える。その後へ行くことになればいいのだが。と思った次の瞬間、黒い顎鬚の男がめのおを見て、眼でこっちへ来いと合図をよこしたのだ。


「こんにちは!よろしく」
パスポートと家で印刷して来た電子チケットを眼の前のカウンターに乗せ挨拶をした。「サラマリコム」を言いたくないめのおの気持ちを察したのか男は無表情のまま顔をのけぞらし気味に傾けてパスポートを取り、端末と照合を始めた。


「チェックインバゲージはひとつだけ?」
そう訊いてくる男の眼は、めのおが、特に丁寧に頼もうと機会を待ちながらカウンターの下に置いた4枚の木枠に張ったままのカンバスに向いていた。
めのおが紐を掛け半透明のビニールで包装した絵を恐る恐る差し出してから、
「これは絵なんだけどまだ生乾きなので、巻かずに木枠に張ったまま紐で結わえてきたんです。これ、機内に持ち込みたいんですが……」と男の眼を見て理解を求めた。


「釘があるだろ」
黒い髭の男は間髪を入れず手でビニールの上から紐を掛けた包みを差して言った。

「クギですか」
「ずっと、この辺いっぱいに」
男は、こんどは指を伸ばしてキャンバスの縁を差しながら続けた。
「ああ、それですか。クギっても、短ーいクギで、しっかり打ち込んであるから抜いたりできませんよ」
めのおは言いながら、右手の親指と人差し指の先を合わせてクギを抜く仕草をした。

「あんたが抜くのか? クギがあるかぎり、セキュリテー・チェックは通らないよ」
「ええ? そいつは困った。機内のクローゼットに入れて預かってもらうよう頼んでみるつもりなんですが」
「セキュリテー・チェックではじかれたら、ここへ戻ってきなさい。クギを抜いてあげるから。お~い。ハサミをとってよ」
男は隣のカウンターに声を掛け、回って来た普通の紙を切るハサミを手に取ってめのおの眼の前でハサミの輪に指を突っ込んだ。
木枠から外されると困ったことになるな、と、めのおは思った。
まだ乾いてない絵の具が剥がれてしまう。

「なんとか通してもらうよう頼んでみます。客室には持ち込まず、乗務員に預けますので」
「クローゼットはあるけどな」

戻って来るって、どれくらいの距離を荷物を持って引きかえさなきゃなんないんだろう。
めのおがそう心配するほどセキュリテイー・チェックは遠くなかった。
3つのトレイに、貴重品を入れたポーチ、リュックからケータイ、カメラ、電子辞書、300冊ぐらいの本をスキャンして保存してあるハード・デイスクなど、持ってる電子機器を全て取り出してトレイに入れ、時計、ベルトを抜いて、厚手のジャンパーと同じトレイに入れた。靴を脱がないといけないのかな? 前の男の足を見ると、白いスニーカーは足と一緒に進んでいったので、めのおもスニーカーを履いたままローラーの上のトレイを押し、4枚のキャンバスの包みを持ち上げて、これも乗せるのか? と係官の顔を見ると、係官が頷くのでスキャナー

のトンネルの入り口を目指して進んでゆくローラーに乗せた。


時計を外すのを忘れて金属探知機のアラームが鳴ったことがあり、ズボンの金属のボタンがアラームを鳴らしたと思い込んだめのおは、出口で待ち構えていた係官の手招きに応じながら、ズボンの前のボタンをいちどに外し係官に向け広げた。英国人の係官は大袈裟に「あんたのパンツなんか見たくない」と叫ぶと、上体を180度ひねって後ろ向きになり、片腕で眼を覆ったのだった。

こんどは腕時計を忘れず外した。ベルトも抜きずれ落ちそうなズボンを手で釣り上げながら歩いた。

アラームは鳴らず、探知機を手にした係官の手招きもなかった。4枚の油絵がスキャナーの出口から出て来るのを神妙に待つ。何ごとも起こらず、誰も声を挙げない。

あのアラブ人の男の忠告はいったいなんだったんだ? 脅してからかっただけなのか? 

モニター画面を睨んでいる額が広く、誠実そうな係官に、めのおは感謝の意を籠めてぴょこんと会釈を送った。係官も目で会釈を返した。


        ***           ***          ***


1月20日、無事オープニングができました。


ご来場くださった皆様に深く感謝申し上げます。


水彩と


                    めのおの水彩画と兄の油彩↑

油彩


                           めのおの油彩↑



オープニング



「二人展」は1月29日まで開催しておりますので、神楽坂へお越しの際は、ぜひお立ち寄りください。 なお、めのおは1月25日に奈良へ向かいます。 では、またいつかどこかで投稿の機会ができましたときに。


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