日本的生産方式、改善について その⑮ | 雷神トールのブログ

雷神トールのブログ

トリウム発電について考える

工場へ入って一か月も経った頃、ラインのベルトコンベアや、車を吊って搬送するハンガーも姿を現わしました。それまで全員一緒の組立所属だったオペレーターがさらに細分され配属が、決められてゆきました。

組立ラインは大きく3つに別れていました。
トリム1、トリム2、シャーシーの3つで、シャシーはトリム1とトリム2の間にありま
した。トリム1とシャーシーは直角に、シャーシーとトリム2は同じ直線上に位置し、それぞれのショップにラインが2本ずつあり、クルマは一方の端でUターンし1往復してから次のショップへ行く設計になっていました。

トリム1では、最初のポストが、塗装ショップから出てくるクルマから、ドアを外す設備でした。

この設備は、かなり複雑な仕組みで、工場が本格稼働してからも時々故障してライン全部を停めてしまうことがありました。

ここで外されたドアはドアラインの送られます。
ドアラインも組立ショップの中にあり、サブラインとしては一番大きなラインです。
ドアを外すのはボデーへの部品の組み付け作業を容易にするためですが、ドアに組み付ける部品数も多く、独立したラインで艤装する方が利点が大きいからでもあります。

最初に外したのと同じボデーに、最後に同じドアを組み付けるわけですから、メインのボデーラインとドアライン間に完全な同期化がなされてることはいうまでもありません。むろん、10台分ほどのバッファーで余裕を持たせてありますが、ドアの取り外し設備でトラブルがあり故障した場合など10台分の時間などすぐ経ってしまうので、ライン全体が止まってしまうのです。

ドアを外されたボデーに、電装品のケーブルや小型コンピュターなどを組み込んでゆきます。ボデーの床に部品を組み込む作業は、オペレーターが車の中に入ってやることが多いので、車は地上近くへ降りて来ます。

クルマを乗せて移動するハンガーは部署によって空中高く上がったり、地上すれすれに降りて来たりします。

トリム1で組み付ける最大の部品はインパネですね。運転席の計器などを覆うインストルーメントパネルです。インパネは、サブラインであらかじめ部品や配線を組み込んでモジュールにしておき、ロボットの助けを借りてボデー内へ搬入され、オペレーターも車に入って組み付け作業をします。

組立のほぼすべてのポストで使われるツールがエアードライバーですね。エアーの力で回転するドライバーで、ボルト、ナットの締め付けに使います。組立の作業の大半は締め付けなんです。組立ショップを通ると必ず「ルーン、ルーン」というエアーツールの回転音がそこらじゅうから聞こえてきます。

エアーの配管はラインの上空を走っていて、螺旋状のチューブでオペレーターの手元まで延び、使い終わったら縮んで元の位置に戻るように工夫されています。

組立で一番の特色は、このメーカーのオリジナリテイー(独創性)を示す、簡単な装置です。「品質の作り込み」とも、不具合の「見える化」とも関係しますが、欧米のメーカーでは考えられないことを、この日本を代表する自動車メーカーはやってきたのでした。

それはエアーの配管と並行してラインの上部を走る、単純な「一本のヒモ」なんです。

ラインが本格稼働してから、この「ヒモ」が活躍しだすのですが、この「ヒモ」はオペレターが問題と直面した時に、手を掛けて引っ張る「緊急停止用」のヒモなんです。

欧米のメーカーには、1オペレターごときにラインを止める権限など与えていませんでした。ラインを止める行為は、その日の生産台数にも影響する重大行為だから。ちょっとした不具合はそのままにして流してしまう。すると後になって、車をラインの外に出してから手直しをしなければなりません。余計時間が掛かります。あるいは不具合は隠されたまま市場で販売されてしまう。

日本のこのメーカーの思想は、不具合は、ラインを停めてでもその場で解決しろなんです。こんな単純そのもののことが日本車の品質を作ってるんですね。

この「一本のヒモ」は、このメーカーの前身が織機メーカーだったことと関係しています。日本の代表的自動車メーカーの一つ、T社の前身は「自動織機」メーカーだったのですね。

この「一本のヒモ」も自動織機の世界的特許を取り海外に輸出したことに起源があります。機械が布を全力で織る最中、不具合が生じたら、たとえ一本の糸が切れた時でも自動的に止まる装置を考え実用化した。それが特許につながったんですね。

オペレーターがある部品を組み付けようとして、たとえばボデーの穴の大きさが足りないとかが分かり部品の組み付けが、与えられた時間内に出来ないなどの
困難に遭遇したら、ライン脇のヒモを引いてラインを停めてもいいのです。いや、停めないといけないんです。

ラインの脇の上空にはパネルがあって、トラブルが起こってるポストの位置がランプで表示されます。グループリーダーは表示を見て、オペレーターを助けに走ってきます。

不具合を決して先送りしない。これが「品質の作り込み」といわれてることであり、ライン脇のパネルで位置が即座に表示されること。これも見える化のひとつですね。日本的生産方式と呼ばれるものには、こうした何でもない、ごく簡単な装置が工夫され、あちこちに配置されています。

「ポカよけ」もその一つですね。次回は、その「ポカよけ「がたくさん使われているシャーシーへ移ります。

  (つづく)

ペタしてね 読者登録してね