フロンドの乱 その6 裁判官と王室のネゴ、民衆の力 | 雷神トールのブログ

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高等法院のモレ筆頭裁判長は朝の六時に裁判所で職務に就き、朝八時には、裁判官達約150人が裁判所に法服姿で集まり、モレ裁判長を先頭に王宮(パレ・ロワイヤル)まで行列を作って歩き出した。ブルーセルと同時に逮捕されたブランメニル二人の釈放を求めるためである。行列には裁判所の書記たちが加わり、長い行列がぞろぞろとセーヌに架かる橋を渡り、パレロワイヤルに向った。

パレロワイヤルとパリ中央市場を結ぶサントノレ通りは最も強固なバリケードが築かれていたが、裁判官の行列が差しかかると警護していたブルジョワ達は即座にバリケードを開き行列を通した。この頃になると裁判官の後に続くパリ市民の数は2万人に膨れ上がっていたという。


フランスの田舎暮らし-王宮版画

パレロワイヤルに着くとモレ裁判長はアンヌドートリッシュ皇太后との接見に裁判官全員を立ち会わせるよう申し入れた。係り官は、接見は事前に申し込まねばならない事や、3人から5人までの代表だけと接見が許されると告げた。

アンヌドートリッシュ皇太后は接見の申し込みがあったと聞くや、即座に拒絶したが、この時、清教徒革命で英国から逃れて来ていたヘンリエット・マリー女王(アンリ4世の娘、ルイ13世の妹、英国王チャールズ1世の妃)が、傍に居て、自身の苦い経験から、接見を受け入れた方が良いと助言を与え、説得されてアンヌドートリッシュは接見を許可した。

フランスの田舎暮らし-h・マリー肖像

                 ヘンリエット・マリーの肖像↑

モレ裁判長が王室の衛兵により拉致されたブルーセルとブランメニルの釈放を請願する長い演説を行った後、裁判長の中でも一番声望の高いメスム裁判長がブルーセルを即時釈放した方が良いと訴え、さらに太后が面識を持ち尊敬すらしているバユル裁判長が同様の訴えをした。


フランスの田舎暮らし-ブルセル

                    ブルーセルの肖像↑

セギエ、マザラン、ガストン・ドルレアンと相談した後、アンヌドートリッシュは、もし高等法院が、他の王宮の廷臣たちとの会合を止め、これまでの慣習として王会( Conseil d'Etat )の権限とされている政治問題に介入するのを止めないのならば、ブルーセルの釈放を命じることは拒否する、と集まった裁判官に告げた。

裁判官たちは、事の重大さに気付き、丁寧な挨拶を述べて太后との接見を辞した。パレロワイヤルを出て、高等法院へ戻ろうとする一行は、はじめのうちは、すんなりとバリケードが開けられて通れたのだが、サントノレ通りとアルブル・セック通りとの交差点に差し掛かると一行を見守る何千という民衆の視線が狭い通りと家々の窓から注がれ、そのうちどこからか叫び声が挙がった。

「ブルーセル釈放を勝ち取ったか~?」バリケードは閉じたまま。一行は立ち止らねばならなかった。群衆から一人の男が飛び出してきてモレ裁判長を捕まえ、アゴにナイフを突きつけブーセルは釈放されるのか、否か?と問いただした。男は町の肉屋と言われている。モレがノンと答えると、肉屋はナイフで脅しながらすぐ傍の民家へモレを連れ込もうとし、「ブルーセルと交換するまで筆頭裁判長は人質だ」と喚いた。朝のうちに大法官を人質にしようとしたが逃げられたのだった。

モレとメスム裁判長は人質を取る理由は無いと説得に努め、町人の仲間が肉屋を宥めたので、人質は諦めたがバリケードは依然閉ざされたまま。裁判官一行は、パレロワイヤルに引き返す他なかった。命が危いと怖くなった大部分の裁判官は法服を脱ぎ捨て群衆に紛れ込んでしまった。

(つづく)

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