十月六日、改善の実質的活動に入った。
社員食堂の上にあるカフェーのついた会議室でキックオフミーテイングを開いた。 今日からはフランス語だけでやれとデユポン夫人に言われ、口を封じられた山本の代わりに、宮原が挨拶をした。
「 日本は戦後アメリカからいろいろな経営手法を導入し、それを日本の風土にあったやり方に適用し発展させてきました。改善は革新ではなく亀のように少しずつ良い方向へ歩んで行く道です。ひとりひとりが亀になり絶えまず前進を続け、永久革命に似た改善のサイクルを回して行きます。全員が知恵と力を出し合いカルチャーを変えて行く。頭脳と身体、知的労働と肉体労働の壁、管理するものとされるものの違いを最終的になくすことを目指しています。結果重視主義ではいけません。大切なのは人間です。コンピューターに改善は出来ません。改善能力は人間だけが持っています」
デユポン夫人がうなずくのが眼に映った。 山本が用意してきた改善マニュアルをプロジェクターで次々にスクリーンに映し、細かな手順を説明した。
午後から改善の研修と実践に移った。
改善チームは組立工場内の会議室パランシアに集まった。
改善チームのメンバーが入ってくる。
改善室長にはドオデが選ばれた。二月の調査の段階では、ドアラインの人減らしは出来ないと言っていた。カウンターに凭れ、ひとりビールを飲みながら、悩んだ様子でいるのが目に付いた。なにかふっきれたのか愛嬌のある笑顔を振り撒いている。黒いシャツに明るいチェックのジャケットを着て粋なところを見せている。
真っ白の総髪を伸ばしたダニエルが白い卵型の顔に微笑を浮かべて入って来る。A班の班長だ。いつも立って仕事をする現場のリーダーらしくデニムのGパンが良く似合う。年齢は五十歳位だろう。
フローランスが居る。黒い縮れ毛に茶色の眼。肌浅黒く、決して美人とは言えないが、口も身体も敏捷で高麗ネズミの様に良く動く。高くない鼻の先に眼鏡が載っているのが、東方の古い国の魔術師を彷彿させる。
隣にカトリーヌが座っている。栗色に金と銀の縮れ毛が混じる美しい髪をしている。色白で、縦長の顔に青い縁の眼鏡を掛けている。淡いピンクの唇や碧い眼には若々しい色香がある。柄も大きく北方系の美人だ。
ケイブはメンバー中一番若い男だ。髪を刈り上げているのでよけい顔が細長く見える。切り立った額が四角い箱のようで、ちょっと芥川竜之介に似ている。眼は碧いが細めにやや切れあがって、何か東洋的なものを感じさせる。
コワレックさんは時間の専門家だ。痩せて首が長く、頭の毛がいつも逆立っているので、ウッドペッカーのようだ。
受け口のアランは内気なB班の班長だ。軽い神経症で、気が立つと吃る癖がある。
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