茜空の欅 1 - 1  競争 | 雷神トールのブログ

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トリウム発電について考える

 「小学校も中学もおんなじ組で、ケン坊と仲がよかった早瀬すみれちゃん。どうしてる?りこうで、かわいかったよな。おんなじ高校へ入ったんだろ?」

 「すみれちゃんは留年したんだ。肺結核になってさ」

 「ほんとかよ」

 「すみれちゃんちは貧乏でさ。うす暗い蔵みたいな二階に一家四人が住んでんだ。窓がない物置みたいな部屋で、すみれちゃんは、外へ遊びにもでずに勉強ばかりしてたんだろ、きっと。それで結核にかかっちゃったんだ。
 中三のもうじき卒業ってときに、担任の田中先生がさ、みんなに、言ったんだ……。早瀬さんは病気で一年留年することになった。負けん気が強いすみれちゃんはみんなに遅れるのがくやしいって泣いてたって」

 「ふうん。かわいそうに。おまえ、見舞いにいってやったんだろな」

 「だって、かわいそすぎて、なんてなぐさめたらいいか、わかんないから……」

 九科目ある高校入試で、間違えたのは二問だけで七科目が満点だったという、親も驚くほどの成績で入ったにもかかわらず、数学に躓いて以来、それまで優等生だったことが災いし自尊心が学問に必要な謙虚さを失わせ、賢二は、先生に反抗し、学校の勉強にほとんど手をつけず、思春期の自我の目覚めとともに文学書に読み耽り、内面世界へ沈潜してゆくようだった。

 それまで町内の遊び仲間との競争に過ぎなかったものが、隣の町からも、また他府県から出てきて下宿から通学する秀才たちとの競争に投げ込まれて、賢二は怖気づいたのかとも思う。少年時代のわけへだてない仲間意識が高校に入ったとたん厳しい競争原理にさらされ、心の寂しさを訴える友達もなく、孤独をまぎらわすには、読書による内面世界への旅がいちばんの救いなのかもしれなかった。

 だが、そういう環境の変化は賢二だけでなく、多かれ少なかれどの高校生にもありがちなことで、それだけで賢二があんなにも深い孤独に陥っていったとは考えられない。俊一は、賢二にもっと深い特殊な理由があったのではないかと疑ってみるのだった。

 (つづく)

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