認知症の父は、1月から特別養護老人ホームに入所しました。

 

昨年1月から特養に入る今年1月まで、ショートステイを長期で利用しながら、わたしが実家に泊まり込んでお世話をしていました。

 

 

わたしは基本的に、使った食器はすぐに洗います。

後回しにすればするほど面倒くさくなるからです。

 

しかし、実家で父のお世話をしていた時、使った食器をそのままにして出かけたことがたまにありました。

 

午後3時頃になると父が、

「何かおやつはなかったかなあ」

と言い出すので、ちょっとしたお菓子(時には果物)と温かいお茶を出していました。

わたしも父と一緒にお茶を飲んで、お菓子を食べます。

 

使い終わった湯呑みや小皿を台所のシンクに置いて、買い物に出かけました。

夕方になってから父を家に一人にすると、不安が増して不穏になるので買い物に行くならこの時間帯がラストチャンスなのです。

 

湯呑みくらいさっと洗って出かければいいのですが、この時間帯の父はテレビで暴れん坊将軍に釘付けだったりするので大丈夫だろうとそのままにして出かけてしまいます。

 

 

買い物から戻ると、父が湯呑みを洗っています。

それを見るたびに「湯呑みを洗ってから行けばよかった!」と悔いるわたし。

 

父はこうして時々食器を洗ってくれるのですが、洗い方が甘いのでもう一度洗わなくてはなりません。

 

どうせわたしが洗うものだったのだから、父が洗ったものをもう一度洗うのは手間としては変わらないんですよね。父から離れた今はそう思えるけれど、近くにいると苛立ちが先行してしまうのです。

 

父は洗った食器を濡れたまま食器棚に伏せたりもするので、その時の絶望感といったら。

 
それでも、そんな苛立ちや絶望感をひた隠し、
「わあ。お父さん、洗い物してくれたんだね。ありがとう」
と伝えます。
 
そうすると父は、
「いやあ、たいしたことないよ」
などと照れくさそうに言います。
 
父は認知症になってできないことが増えても、家族の役に立ちたいし「ありがとう」と言われたいのです。
父のしたことで実際はわたしが助かっていなくても、行動のもとになった気持ちは大切にしたいと思います。
 
父が特養に入った今は、父に「ありがとう」と言う機会も減ってしまうけれど。
それでも、会えた時には感謝を伝えたいです。