かつての父は、とてもしっかりした人でした。

真面目で責任感があり、いろいろな団体の役員を引き受けるなど頼りにされていました。

 

家でも、役所や確定申告や諸々の面倒な手続きは父がやることが多かったようです。父の認知症と思われる症状が出てから母は、確定申告を父がやってくれないから自分がやらなければならないとぼやいていました。

 

母にとって、若い頃から父は頼れる人だったのでしょう。

ここ数年の母の日記に、何度も「老いぼれの役立たず!」と父を罵る記述がありました。実際に面と向かっても言っていたと思います。

 

 

生産性で人間の価値をはかるのは間違いだと、いま読んでいる「老いた親を愛せますか?」という本にありました。

 

役に立つ、立たないという視点だと介護するのはつらくなります。介護する方も、される方もつらいです。

 

最近は言いませんが、父は時々、

「おれは生きていて何かの役に立っているのかな」

と言うことがありました。

 

「子供にとって、親が生きているだけでありがたいことだよ」

と、わたしはできる限り言葉を尽くしました。