父は、集合ポストまで夕刊を取りに行くのが日課です。

 

しかし、父が長期でショートステイを利用するようになって新聞の購読を止めた今、父がポストを見に行ってもそこに夕刊はないのです。

 

夕刊がないと、父は不思議そうにして戻ってきます。時間が経ってから再度ポストを見に行くことも。

 

なのでわたしは、過去の夕刊をこっそりポストに仕込んでおくことにしました。父は日付も見ずに取ってきた夕刊をわたしに渡してくれます。

 

しかし、夕刊を仕込むのを忘れたある日。

「今日は夕刊入ってなかったなあ」

と父が言います。

 

「ここにあるよ」

と、朝刊の横に過去の夕刊を置きました。

朝刊は、父がいる時はコンビニで買っています。

 

父は、朝刊の日付と夕刊の日付を見比べて、狐につままれたような顔をしていました。

 

 

 

 

 

母が入院前は、自宅の電話は解約して使えないのに、電話機がないと父が落ち着かないからと、使えない電話機を設置したままにしていました。

 

わたしは、父が使えない電話の受話器を取るのがイヤで、電話機を撤去しました。しばらくの間、父は「電話はどこへ行った」「何で解約したんだ」と落ち着かなかったものの、やがて受け容れてくれました。

 

わたしが過去の夕刊をポストに入れているのは、母が電話機を撤去しなかったのと同じことをしているんじゃないか、と気付きました。

 

もう夕刊をポストに仕込むのは止めて、夕刊はもう取ってないんだと父に告げてみようと思います。

時間をかければ受け容れてくれるはず。