「むかし、絵を描いて市内の展覧会に出して表彰されたことがあるんだよ。その前で小さかったあんたを立たせて写真を撮ったなあ」

と父は言いました。

 

「その絵を欲しいと言う人がいたんだけど、俺は師匠について絵を教わっている身だからお金をもらうことはできないと断ったんだよ。でも、どうしてもその絵が欲しいと言うからタダであげると言ったんだよ」

 

父のおしゃべりは止まりません。

 

「絵をタダで上げたわけなんだけど、その人が家に来てさあ。お金を渡そうとするんだよ。でも、俺はお金をもらうわけにはいかないと言って返したんだよ」

 

父は続けます。

「それで済んだと思っていたら、しばらくして他の人からあなた宛てに届け物があったよと封筒を渡されたんだよ。中身を見たら、30万円ばかり入っていたの。10万円は学校に寄付して、あとは5万円ずつ別のところに寄付したんだよ。絵はその後、行方不明。いくら探しても見つからなかったなあ」

 

 

以上、父の作話でした。

実際になかったことなのに、よくもすらすらと話せるものだなあと感心します。

 

実際にあったことを思い出す機能が低下する代わりに、架空の話を創り出す機能が発達するのでしょうか。

 

 

 

作話

実際には起きていないできごとを、目撃や体験をしたかのように話す症状のこと。

https://www.health.ne.jp/glossary/detail?id=103343