実家には、わたしの3歳頃の写真が大きく引き伸ばして飾ってあります。
いつものごとく寝転んでいた父が、その写真を見て言いました。
「あの子の名前は、なんだっけなあ?」
「あの子は、どこの子?」
と尋ねると、
「うちの子だよ。俺の娘だ。今、どこにいるんだったかなあ。アメリカかな?」
と言います。
わたしが自分を指差して言いました。
「ここにいるよ」
父は、アッハッハと笑って、
「あー、そうか。よかったよかった。アメリカじゃなかったかあ」
言いました。
そして、
「アメリカといっても広いんだよ。ニューヨーク。サンフランシスコ。ロサンゼルスもあるなあ」
と、一人でしゃべっていました。
娘の名前は思い出せないのに、あまり縁のないアメリカの地名はすらすら出てくるのは面白いですね。