ショートステイから帰ってきた父。

しばらく横になってから、いそいそと起き出しました。

 

「顔を洗う。顔を洗います」

と宣言。

 

顔を洗うなら、お風呂の洗面台です。

 

しかし、父は一人でぷつぷつと言いました。

「顔を洗うなら川かなあ。下に降りると、川があったかなあ」

 

もちろん、顔を洗えるような川なんて近隣にありません。

 

実はこの直前に、母のタンスから手紙が出てきたのです。

父の妹から父宛てに来た手紙ですが、なぜか母のタンスにありました。日付は8年前。

父に渡したところ、熱心に読んでいました。

 

過去を懐かしむ文章があったので、父の心は故郷に飛んだのかもしれません。

 

父の実家には、顔を洗えるような川があったのかなあ。