父が、

「故郷から人が来るなら、連絡があるよな?」

などと言い出しました。

もちろん誰も来る予定はありません。

 

気を逸らすために、父が帰省した時のアルバムを出してきて一緒に見ることにしました。

 

母と二人で帰省したので、母がよく写っています。

父はそれを見て、

「これは誰だ?俺の姉さんか?」

と言うこともあれば、

「これは俺の嫁さんだ」

と言うこともありました。

 

「東京に来る時に連れてこなかったんだ。俺の実家で女中みたいなことをさせられているんだ。気の毒なことをしたなあ」

と、作話炸裂。

 

母が父と結婚することになった時、男性は座敷で食事をするけど女性は土間で食事をするというような男尊女卑の激しいところだったのでびっくりしたと母が言っていたのを思い出しました。

 

母は今、父の実家で女中をしているわけではない。

でも、帰省するたびに女中みたいな扱いは受けていたのかもしれない。

 

わたしは否定も肯定もせず、聞いていました。

その後、父は母の写真を見て、

「これは俺の嫁さんだ」

と言った後に、

「もう死んじゃったんだよなあ」

とつぶやきました。

 

 

死んでません。