布団を敷いて、寝巻きに着替えて、就寝準備を済ませた父が何かを探していました。


「何を探しているの?」と問うと、

父は「メガネ」と答えました。


父の枕元には、母お手製のメガネ立てがあり、その中にメガネはちゃんとあります。

照明のリモコンも、リモコン立てに入って枕元にあります。


「もう寝るんだから、メガネ必要ないでしょう?」

とわたしが言うと、

「夜中に何かあった時にすぐ手に取れるように、場所を把握しておきたいの」

と主張する父。


夜中に何かあった時にすぐ手に取れる場所にありますけど。


「枕元にあるでしょう」

と言うと、

「枕元、枕元。これ?これは電気のリモコン」

とメガネをスルーして、本棚を探そうとする父。


「お父さん、枕元にあるよ」

もう一度言うと、

「これはリモコン。メガネ…」


そう!

メガネだよ!メガネはそこにあるよ!


「俺は何を探していたんだったかな」

父は、メガネをスルーした!


「メガネを探していたんでしょう?」

と言うと、

「お金だ!俺はお金を探していたんだよ」


メガネをどこに置いたか忘れた父でしたが、メガネを探していたことも忘れてしまいました。