これまで歯ブラシに触ることのなかった父が、歯ブラシを手にとるようになりました。
今夜もわたしはやさしく声を掛けます。
「入れ歯外してくれたら、綺麗にして返すよ」
すると、素直に入れ歯を外す父。
入れ歯を洗ってから返すと、
「もったいなくてつけられない」
「せっかく綺麗にしてもらったら、汚したくないからつけない方がいい」
と言う父。
「じゃあ、綺麗にした入れ歯を汚さないように、お口をゆすぐか、ハミガキしてから入れ歯をしたらどう?」
「お口を綺麗にしてから入れ歯を入れた方が気持ちがいいいんじゃない?」
と言ってみました。
更にたたみかける。
「お父さん、この前歯医者さん行った時に、お口綺麗にしてますねって褒められたもんね」
こういうやり取りを5回くらい繰り返して、やっと洗面台に向かう父。
簡単ではありますが、歯ブラシを使って歯を磨いていました。
残っている歯の本数も少ないので、すぐ終わるんでしょうけど。
父は言われたことはすぐに忘れてしまうけれど、
「歯医者さんに褒められた」
という言葉は、嬉しさが伴うと思います。
「お口を綺麗にしてから入れ歯を入れた方が気持ちがいいいんじゃない?」
という言葉は「そうしたら気持ちいいかもな」と感じると思うんです。
入れ歯装着前のハミガキ、定着させていきたい。
そして、ゆくゆくは歯磨き粉もつけてほしい。
父には気分よくおだやかに過ごしてもらいたいし、衛生的で健やかな暮らしをさせてあげたい。