昨夜のこと。

一度就寝した父が起き出して、電気もつけずに部屋で一人で何やらぷつぷつ言いながら、引き出しを開けたり閉めたりごそごそしていました。


どうしたの?と声を掛けると、

「俺は何か、忘れ物をしたんだよな」

と言います。

「どこかに忘れ物をしたんだ」


何を忘れたの?

「何を忘れたかわからない」


家の鍵も自転車の鍵もここにあるでしょう?

お財布もあるし。

大事なものは揃ってるんじゃない?


「じゃあ、何も忘れていないんだ」


探し物があるなら、一緒に探すよ。

「もういい。明日にする。ありがとう」


うまく収まって、寝てくれました。


お父さんが忘れてるのは、いろいろな記憶なんだよね。探しても見つからない。