今も核保有国は核兵器の研究を続けているが、その最先端を行くアメリカでは次のような方向で進められている。
メンテナンスを良くし、長期保存を重視
 冷戦期ではより軽く威力の高い核兵器をたくさん作って保管していたが、性能にこだわるあまり部品や爆薬の寿命が短くなってしまい、多額の費用をかけて交換する羽目になった。長期保存可能な部品や寿命の長い爆縮レンズの爆薬に改良し、長期保存が行えるよう進歩している。なおこれは核弾頭を発射するミサイルに対しても言える。
威力は初期原爆並みに落とされている。
 ミサイルの命中精度が高まったので、原爆並みの低い威力でも目標の破壊が行えるようになった。ただし、原爆に使われるプルトニウムは高価で核分裂した後の放射性物質も多いので、低威力の水爆になっている。
地下施設を破壊できる
 地下深くにある核シェルターや軍事施設は、核攻撃に強い。このため諸外国では冷戦以降、地下に施設を作るようになった。北朝鮮の地下鉄は深さ200mもあるし、イランの核施設も地中深くにある。このため、アメリカはミサイルを地中深くまで突入させてから核爆発を起こし、地下施設を破壊しようと考えている。ただ問題もあり、ミサイルを地中深くまで突入させるとその衝撃で核弾頭が壊れてしまう危険性がある。また地下施設は人工衛星からでは確認できないので、どこに当てればいいのか分からないという欠点もある。
・残留放射線を少なく
 核爆発後の残留放射性物質を少なくした方が、核攻撃後の侵攻で味方に被害を与えないし、占領政策もしやすくなる。残留放射性物質を多く出すのは、水爆のプライマリー(強化原爆部分)であり、これを無くせば、従来の核兵器の問題の多くを解決できる。
 原爆の力を利用せず、直接核融合反応を起こす水爆を、純粋水爆といい、アメリカは長年に渡って開発を続けているが、いまだに成功していない。

①純粋水爆の何がいいのか?
 純粋水爆の大きなメリットは、それまでのプルトニウムやウランを使用した原爆と比べて臨界という観念が存在しないことである。
 原爆はプルトニウムやウランを未臨界から融合または爆縮して、超臨界にして核分裂連鎖反応を起こして爆発させる。そのため臨界になる量まで製造する必要がある。
 また、原爆の威力はプルトニウムやウランの使用量ではなく、その反応効率である。8㎏のプルトニウムを爆縮して、12パーセント反応すればTNT換算20キロトン、6パーセント反応すればTNT換算10キロトンとなる。
 純粋水爆に使用するのは核融合燃料だけなので、使用量に応じて爆発威力を決められる。使用量を少なくすればTNT換算1トン程度のミニ水爆も可能だし、量を多くすれば通常の水爆と何ら変わりない。
 大がかりな核実験場も必要なく、普通の実験場を使うことが出来る。
 それに、核融合は残留放射性物質も少ないので使用の制約も少ないなどのメリットがある。

②純粋水爆と慣性核融合発電は兄弟
 現在、核融合発電の研究が進められているが、この中で慣性核融合方式というのがあり、燃料にレーザーやZピンチを使用して爆縮させ一瞬で核融合反応を起こす。
 実は、この慣性核融合は純粋水爆の研究開発の過程で生まれた。慣性核融合の他にも、レーザーやZピンチでプルトニウムを未臨界で爆縮させる未臨界核実験も純粋水爆の応用だと考えられる。
 慣性核融合の装置を小型化し、反応する燃料を一瞬で多く反応させるのが純粋水爆。逆に純粋水爆の燃料をこまめに間欠的して核爆発させることで、装置を吹き飛ばさないようにしつつ、何度も使えるように大型化して電気エネルギーを取り出せるようにしたのが慣性核融合発電である。
 だから、純粋水爆の装置についての解説は、慣性核融合発電と同じものだと考えていいと思う。アメリカなどの核開発国が応用していることを考えると、今も純粋水爆の研究は続けられているのではないだろうか?

③開発する上での障害は何か?
 アメリカも含めて開発しているのに、いまだに完成できていない大きな原因は「原爆なしで、核融合反応を起こすローソン条件をクリアするのは非常に難しいから」である。
 従来の水爆は、原爆の核分裂エネルギーを利用してローソン条件をクリアしたが、それを使わずに核融合を起こすのは大変難しい。
 つまり、強力なエネルギーを生み出す装置(エネルギードライバー)が必要で、なおかつ爆弾に搭載できる大きさと重量にまとめ上げなければならない。
 そして、エネルギードライバーが生み出したエネルギーで、核融合燃料を爆縮しローソン条件をクリアする爆縮する方式の開発もしなければならない。エネルギーを一点に集中させないと核融合反応は起きないからだ。
 使用する核融合燃料も考えなければならない。一番容易な核融合はDT反応だが、重水素もトリチウムも気体なので、密度を上げるには極低温の液体水素にしなければならない。水爆に重水素化リチウムを使用する場合なら、大量の中性子を投入してリチウムをトリチウムに変換する必要がある。
 以上の点から、純粋水爆は、
 エネルギードライバーでエネルギーを作成→エネルギー1点に集中させ核融合燃料を爆縮→核融合反応を起こして爆発
 を上手く成功させないといけない。
 本当に可能なのだろうか?と思ってしまうが、私は不可能ではないと思う。なぜなら核融合させる原子はとても小さいので、核分裂のエネルギーでなくても効率的に一点に集中できれば核融合を起こせるからだ。そして核融合で発生したエネルギーで、他の原子を連続的に核反応を起こすことが出来れば莫大なエネルギーを起こせる。
 そのためには、エネルギーを一点に効率的に集中できる方式を開発しなければならない。

 

本の紹介・・・核融合発電における解説で、慣性核融合の記述が有意義だと思う。