これまで説明した純粋水爆だが、いまだにどこの国も実用化できていない。現在の技術では作っても通常爆弾よりもかなり低い威力しか出せないし、高価で重量もかさむのでメリットが全くないからである。
 純粋水爆を実用化させるためには、様々な改良を加えなければならないし、さらなる研究開発が必要だ。
 私は、日本は純粋水爆の研究開発をするべきではないかと考えている。理由は、条約上の制限がほぼ存在しないこと、研究開発の障害は日本の技術力で突破することが可能だと思うこと、通常の核兵器開発の制約や難易度が日本では難しいこと、である。

①禁止条約の抜け穴
 現在、核兵器の製造、実験、保有を禁止した条約があり、日本もそれの条約を調印、批准している。しかし、これらの禁止条約には抜け穴がある。
 それは、「核爆発はどの程度の威力を指す物なのか定義していない」という事である。単純に核反応は核爆発だとしてしまうと、慣性核融合実験、加速器を使った衝突実験も全て、核爆発による核実験になってしまう。
 なぜなのかというと、原因は「臨界」にある。核兵器は臨界量にならないと爆発せず、爆発したら一気にTNT換算で1キロトン以上の威力を出してしまう。つまり核兵器と通常兵器には威力に圧倒的な違いがある。実験室の核反応は通常兵器のそれ以下で威力を定義せずとも簡単に区別がつく。
 通常兵器では、1000gのTNT爆薬を1gにしたら威力は1000分の1になるが、従来の核兵器はそれができない。核兵器を1000分の1にしたら威力は1000分の1ではなく0になってしまい爆発しない。
 ところが、純粋水爆が完成すれは、これらの禁止条約は役立たずになる。臨界が無いので、例えば実験室で超小規模の純粋水爆を完成させれば、それを1000倍に大きくすれば威力も1000倍になる。
 つまり、実験室での研究開発が可能になる。アメリカも一時はそれを警戒していて、CTBT(包括的核実験禁止条約)を作成する際に「核融合実験に使用する燃料の威力はTNT換算4ポンド(1.8㎏)以内」と記載しようとしたが、結局実現しなかった。
 これはつまり、アメリカ側は「TNT換算4ポンド以内なら核融合燃料を爆発させても核爆発ではない」と思っているということである。
 核爆発の定義があいまいなので、純粋水爆の研究開発は国際社会にバレても「小威力なので核爆発ではない」ということができる。アメリカの未臨界核実験も「小威力なので核爆発ではない」と言っているので、アメリカは黙認せざるおえないだろう。

②現在、日本が保有する技術やデータベースを活用できる
 日本は今のところ純粋水爆の研究開発は行っていないが、慣性核融合の研究はかなり進んでいる。
 長年の研究で、爆縮時の核融合燃料の反応具合のデータベースが豊富にある。そのデーターベースを消化し、理論を導き出せるスーパーコンピューターが存在する。
 浜松ホトニクスなど高出力レーザーを作成する会社が存在する。レーザーによる高速点火に成功しており、フェムト(千兆分の一)秒でタイミングを制御できる。
 電子励起爆薬の作成に欠かせないスーパーコンピューターがある。開発には原子や分子の挙動をデーターベースに入れてそれを元に何兆、何京通りの分子をバーチャルで合成し、その中から原子を励起させても安定する物質(電子励起爆薬)を探す必要がある。
 リニアモーターカーなどの超電導コイルを安定的に運用している。

③実験に必要な用地の確保が簡単で、秘匿もできる
 核実験には広い土地が、必要で日本にも無くはない(聟島・西ノ島)が、純粋水爆は場所の制約を無くせる。

④様々な面で技術を応用できる
 使用する爆薬発電機は、EMP爆弾の製造に応用できるし、電子励起爆薬は通常の爆弾の代替にもなる。また、核融合発電の実用化に大きく貢献するだろう。

⑤そもそもまだ成功したことが無いので、禁止する条約がない
 禁止条約というのは、多くの場合すでにある物を禁止にしている。純粋水爆はまだ完成していないので何を純粋水爆とするか定義できず、ゆえに禁止条約は存在しない。

⑥誰も成功していない今なら、多くの研究ができる
 他国が純粋水爆を完成させてしまうと、その定義が決まってしまい禁止事項ができて研究が進まなくなる。それが無い今なら、多くの研究ができる。

 純粋水爆開発は技術の応用の幅が広いので失敗してもその技術は生かし切れるし、成功すれば核抑止力になるので研究すべきではないだろうか?