原子炉級プルトニウムと不完全核爆発(フィズル)について説明する。
 プルトニウムで核兵器を作る場合、まずプルトニウム239を製造しなければならない。
 製造するには原子炉を使うが、具体的なやり方は、以下のとおりである。
①まず、原子炉に燃料棒(ウラン238を多く含み、ウラン235を微量含む)を入れる。
②原子炉を臨界させ、中性子の核連鎖反応を起こさせる。
③中性子が、ウラン238に吸収されると、プルトニウム239に変化する。
④さらに、プルトニウム239に中性子が吸収されると、プルトニウム240になる。

 プルトニウム239は、中性子を当てるとウラン235と同じように核連鎖反応を起こすので、原子爆弾(核兵器)の材料になりえる。
 ただし、プルトニウム240は自発核分裂を起こすので、プルトニウムが超臨界に達する前に核分裂を起こしてタイミングを乱してしまう。
 臨界になる前に反応が進むと、核連鎖反応が完了する前にプルトニウムが高温になって飛び散ってしまうので、不完全な爆発となる。これを不完全核爆発(フィズル)という。
 これを防ぐためには、可能な限りプルトニウム240の混入を無くさなければならない。ただ、プルトニウム239とプルトニウム240は化学工程では分離できないし、重さも分子量が1しか違わないので、分離はほぼ不可能である。

 そのため、原子炉を臨界させた数週間後に、燃料棒を取り出してプルトニウムを分離してしまうのである。これならば、プルトニウム240は微量しか含まれない。
 これが兵器級プルトニウム(プルトニウム239が93%以上含まれる)である。この時点では、まだ僅かしかプルトニウムが精製されてないので、1トン当たりのウラン238から僅か数百グラムしかプルトニウム239を取り出すことしかできない。

 さらに、原子炉を運転させて数年後には、ウラン235の核分裂によりプルトニウム239が多く製造できるが、プルトニウム240もその分増えてしまい、精製した時の割合は多くなってしまう。
 これが、原子炉級プルトニウム(プルトニウム239が60~70%程度含まれる)である。日本の使用済み核燃料からプルトニウムを製造すると、このプルトニウムになる。高速炉や転換炉の燃料、またはウラン238と混ぜてMOX燃料として再び軽水炉(原子力発電所)で使用ができる。

 核開発に使われる原子炉は、運転させて数週間以内に燃料棒を取り出さなければならない。そのため原子炉を運転しながら燃料棒を取り出せる構造になっているのである。黒鉛炉や重水炉は運転中に燃料棒を取り出せる構造になっているのが多く、これらが核開発に使用される原子炉である。
 一方、日本で使われている原子力発電所の原子炉は軽水炉がほとんどで、これは格納容器に燃料棒が閉じ込められており容易に取り出せない構造になっている。
 いったん運転を止めて取り出す必要があるが、かなりの大工事でアメリカなどの国から人工衛星で確認されてしまう。また、この原子炉で兵器級プルトニウムを取り出すためには、何度も運転を止めては燃料棒の出し入れをする必要があり、大変に手間がかかる。
 アメリカが軽水炉の普及を推し進める理由は、兵器級プルトニウムをコッソリ作らせたくはないという意図がある。

 余談だが、福島第一原子力発電の事故で、燃料棒を取り出すのになぜ10年以上もかかるのかというと、「そもそも核燃料を取り出しにくいように設計されているから」で、核開発をやめさせようとする意図が裏目に出たのではないかと思う。