核連鎖反応を具体的に計算してみて、不完全核爆発(フィズル)とはどのような状態をいうのか説明してみる。
原子爆弾はプルトニウムが超臨界になった時に、中性子1つにプルトニウム239が衝突してエネルギーが発生し、約2つの中性子を放出する。
これが、次の2つプルトニウムに衝突して、1.2.4.8.16と倍々に指数関数的に核分裂エネルギーが増えていき都市を破壊するほどのエネルギーになる。
計算の値は以下の通り
プルトニウム239の増殖率を2と仮定(2倍ずつ増えていく)
プルトニウムのエネルギーを3.2×10の-11乗Jジュールとして計算
TNT爆薬1キログラムのエネルギーを3.885×10の6乗ジュールとして計算
核分裂1回目は1回反応して1世代、2回目は2回反応して2世代、3回目は4回反応して3世代、4回目は8回反応して4世代、5回目は16回反応して5世代、という呼称にする。
そして計算すると、以下の表になる。
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プルトニウムの核分裂の回数(世代数) |
核分裂の数 |
TNT換算 |
比較 |
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1 |
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2 |
2 |
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3 |
4 |
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4 |
8 |
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5 |
16 |
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省略 |
省略 |
省略 |
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58 |
1.44115E+17 |
1.187㎏ |
TNT爆薬1㎏と同じ威力 |
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省略 |
省略 |
省略 |
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67 |
7.3787E+19 |
607㎏ |
TNT爆薬600㎏と同じ威力 |
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省略 |
省略 |
省略 |
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71 |
1.18059E+21 |
9724㎏ |
世界最大の通常爆弾(10トン爆弾) |
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72 |
2.36118E+21 |
19.4トン |
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73 |
4.72237E+21 |
38.8トン |
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74 |
9.44473E+21 |
77.8トン |
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75 |
1.88895E+22 |
156トン |
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76 |
3.77789E+22 |
311トン |
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77 |
7.55579E+22 |
622トン |
北朝鮮最初の核実験(0.6キロトン) |
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78 |
1.51116E+23 |
1.24キロトン |
1キロトン原爆 |
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79 |
3.02231E+23 |
2.49キロトン |
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80 |
6.04463E+23 |
4.98キロトン |
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81 |
1.20893E+24 |
9.95キロトン |
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82 |
2.41785E+24 |
19.9キロトン |
初期原爆(20キロトン) |
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83 |
4.8357E+24 |
39.8キロトン |
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84 |
9.67141E+24 |
79.7キロトン |
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85 |
1.93428E+25 |
159キロトン |
プルトニウムの臨界量(8㎏) |
この表を見て分かることは、
1~58世代ではTNT爆薬よりも低いエネルギーでしかない。
67世代でようやく通常爆弾と同じ威力を持つ。
78世代くらいから1キロトン原爆と同じ威力を持つ。
82世代で初期原爆と同じ威力を持つ。
85世代くらいで臨界量に達し、プルトニウムが完全燃焼した計算になる。
つまり、原子爆弾の主要エネルギーは最後のたった4~5世代の時に放出される。1世代の時間は(1シェイク・10ナノ秒)であり、50ナノ秒継続できるか否かで、核爆発か不完全核爆発(フィズル)になるのである。
これを見ると、70~78世代くらいでちょうど、通常爆薬以上核兵器以下の威力が出ている。ここも不完全核爆発(フィズル)だが、威力は75世代でTNT換算156トンと大きい。
原子炉級プルトニウムを使うと、おそらくこの程度の威力になると思うが、これを初期原爆の100分の1の威力しかないと考えるのか、通常爆弾の100倍の威力があると考えるのかの違いである。
日本政府や多くの科学者が、原子炉級プルトニウムで原子爆弾が作れないというのは、初期原爆の100分の1程度の威力は核爆弾と呼べないという意味で使っているのである。
余談だが、プルトニウムコアの内部にトリチウムと重水素の高圧ガスを詰め込んだブースト型原爆(強化原爆)方式にすると、不完全核爆発(フィズル)を抑えられる。
理屈は、最初の世代でトリチウムと重水素がDT反応による核融合を起こして中性子が大量に放出する。
これが中性子を増やし、1.3.9.27.81と反応をブースト(後押し)するので、世代を短縮できる。つまり70世代程度でもTNT換算1キロトン程度の威力を出すことができる。
注.エクセルで細かく計算した表を下に貼り付けておく。