1962年のキューバ危機が起こる。これはキューバが共産主義になり、ソ連の核ミサイルが配備されるようになるのをアメリカが全力で阻止した事件である。
 世間ではソ連のフルシチョフ書記長はケネディ大統領に譲歩して、キューバの核ミサイルを撤去したことになっている。あるいは両首脳とも核戦争の恐怖に怯えたような事を言う人が多い。
 しかし、それは違っているのではないか?

①トルコの核ミサイルも撤去されている
 撤去されたのはキューバの核ミサイルだけではなく、トルコに配備されていた核ミサイルも同時に撤去された。なぜトルコに核ミサイルが配備されていたかというと、アメリカはICBM(大陸間弾道ミサイル)の開発と配備が遅れていたので、射程の短いIRBM(中距離弾道ミサイル)ジュピターミサイルをトルコに配備してソ連を射程に収めていたのである。
 これは西ヨーロッパに衝撃を与え、フランスのドゴール将軍は「アメリカは核の傘だと言っているが守ってもらえないのでは?」と考え、フランスは独自に核武装するという方針が強まった。
 日本にアメリカの核兵器を設置してもらって防衛しようと考えている人たちがいるが、アメリカが敵国との交渉して撤去してしまう危険性があるという事は頭に入れておく必要がある。

②ソ連では新型のICBM(大陸間弾道ミサイル)R-16の配備が始まろうとしていた。
 キューバ危機の時、ソ連では新型のICBM(大陸間弾道ミサイル)R-16の開発に成功し、配備している最中だった。R-16はそれまでのICBMであるR-7とは違う画期的なミサイルでもあった。
 それまでのICBMはR-7で、これは1957年に初の人工衛星スプートニクや、1961年にガガーリンを乗せた初の有人宇宙船ボストークを打ち上げたロケットに水素爆弾を搭載した物であった。
 ただ重大な欠点があり、まずは大きすぎて地下サイロや車載移動が出来ず地上に設置しなければならなかった。次にロケットの酸化剤に液体酸素を使用しているので、超低温でしか保管が効かず。発射前にまる1日かけて燃料をミサイルに充填しなければならなかった。そして、充填したら直ちに発射しないと中の液体酸素が蒸発してしまう。
 つまり、ミサイルを発射する前に敵の攻撃によって先に破壊されるリスクが極めて高かった。
 この問題を解決したのがR-16で、ロケットの燃料が非対称ジメチルヒドラジン、酸化剤が赤煙硝酸に変わり常温で保管できるようになった。これで1時間で燃料注入が可能になり注入した後でも30日程度は保管が可能になり、大きさもスリムになったので、地下サイロに設置でき、燃料を抜いた状態でも車載して移動できるようになった。
 これによって敵の攻撃が起きても直ぐに反撃ができ、なおかつ敵が先制核攻撃をしても、地下サイロに残した核ミサイルで反撃可能になった。
 つまり、ソ連にとっては(今、核戦争になるよりもいったん引いて、R-16の配備が整うまで待った方が相手にとって有利になる)という状況だった。
 敵基地攻撃で北朝鮮の核ミサイルを先制攻撃で破壊しろと訴えてる人たちがいるが、R-16以降、液体燃料式の弾道ミサイルは常温保存可能な液体燃料なので、人工衛星で発見したころには発射されてしまい間に合わない。その事実も考えておくべきである。

 このキューバ危機以降、徐々にではあるがアメリカの同盟国やソ連の衛星国から核兵器は撤去されていき、本国の安全な場所に保管されておくようになった。核弾道ミサイルの射程や核爆撃機の航続距離が著しく伸び、大陸の反対側からも攻撃可能になったので、前線に置いておく必要がなくなったからである。
 1972年に沖縄返還された時、佐藤栄作首相はアメリカに対し沖縄の核兵器の撤去を求めたが、アメリカにしてみればもう核兵器を前線に置いておく必要なかったので簡単だったのではないだろうか?
 未だに、日本にアメリカの核兵器が持ち込まれていると言う人がいるが、日本から望まない限りアメリカが設置することは無いだろう。ヨーロッパもアメリカに要請して、わざわざ航空用のB61水爆を置いている。

本の紹介・・・89式小銃がAK-74やM-16と比較して、何が違っているのかを細かく解説している。