去年、2018年に宝塚にいけたのは7回でした。花組、月組、雪組を2回ずつと、宙組のウエストサイドストーリー。花組は蘭寿とむの時代から欠かさず観てきたし、明日海りおも好きなので、義務として見に行くし、月組は愛希れいかと美弥るりかがいる、雪組は望海風斗、ということで、この3組は、以前からほとんどすべての公演を見てきて、その本公演を最低限各1回ずつ見るという、いかにもライトなファンらしい状況になった。ほんというともっと見たいけど、去年の後半は無職だったわけで、あんまりガンガン出かけるわけにも行かず・・・。宝塚観に行くと、キャトルレーヴという専門店があるんだけど、チケット代だけでなくてそこでもたくさんいろいろ衝動買いしちゃうからね。
しかし公演をふりかえってみると、去年はあたりだったよなあとおもう。新年1発目がWSSと望海風斗のお披露目になった「ひかりふる路」で、その後も花組では「ポーの一族」「メサイア」というふうに、明日海りおの当たり役が続き、月組では珠城りょうが、珠城りょうそのものを演じるといった感じの「カンパニー」と上田久美子の意欲作「BADDY」、さらに「エリザベート」だもんな。7回でじゅうぶんだった。
作品とは別の劇団の動きという点でみると、望海風斗のトップ着任と、記憶に新しい愛希れいかの退団は大きかった。特に愛希れいかの退団は・・・。アリスの恋人からずっと見てきて、すごい娘役だとおもっていて、かわいいし、もちろん好きだったわけだけど、ずっと見てきたぶん、また娘役トップとしての在団期間がけっこう長かったぶん、やめたときのことは考えてなかったというか、とにかく、あのときはとてもきつかった。じぶんがあんなふうになるとは、まったく想像していなかったわけ。早霧せいなのときがそうだったのだけど、ぼくは、じぶんではじぶんが誰のファンなのかわからないみたいなとこがあって、まあそういう人間なのだといえばそれまでだけど、そういうふうになるのをどこかでおそれているのかもしれない、などとも感じた。でも、どっちしろそうなるなら、全力で応援すればいいような気もする。
望海風斗は、雪組のトップになったわけだけど、もともとは花組だった。蘭寿とむ時代には、2番手だった壮一帆が雪組トップとなって異動し、しばらくしてから明日海りおが月組からやってきて2番手になって、それから彼女の3番手時代がちょっと続くことになった。そして、早霧せいなが雪組でトップになったときに雪組に異動、同組で2番手として活躍した。つまり、蘭寿とむ、早霧せいなという、ぼくの大好きな男役のもとでずっと修行を積んできたのである。トップになるのが楽しみでないわけがないのであった。望海風斗には、必ず期待にこたえてくれるだろうという安心感もあった。なにより劇団随一のあの圧倒的歌唱力である。そのうえ、最近はどういうものさしで決めているのかよくわからない、という感じの人事が多いなかで、歌唱に定評のあった真彩希帆が相手役に着いたのであった。血湧き肉踊る、というとなんかちょっとちがうが、興奮しないわけにはいかないのだった。お披露目公演は「ひかりふる路」となったわけだが、あてられた役はあのロベスピエールである。フランス革命前後を描くことの多い宝塚では、なかなか深みをもって描かれることの少ない、複雑な人間だ。しかしこれはむしろ劇団サイドの期待のあらわれともおもわれた。要するに、ロベスピエールを役者として読解することは、相当に難しいはずなのである。フランス革命前夜を描く物語では革命の旗手として登場し、後を描くはなしでは断頭台のイメージ図を背景に絶対的な悪として描かれがちな人物である。いったいどうやってそこに一貫性をもたせるのか。脚本があるといっても、それを内部で消化しなければ、自然な芝居はできない。
ではどうして、そこまでしてロベスピエールをやるのかというはなしにもなるが、ここには、ディズニーでいう「魔法にかけられて」的な、自己模倣のスパイラルから逃れ出ようとする、自己言及的なものが感じられないでもない。フランス革命は宝塚の十八番で、前をやるのだとしても後をやるのだとしても、やることはそう変わらない。そうしたところで、どちらの場合でもアイコンになるのがロベスピエールであった。もし、革命を境に断絶しているこの人物を矛盾なく統合することができれば、革命は歴史的な段階ではなく、ある恣意的な物語のひとつとなって、この時代が相対化されるかもしれない。あのときの記事にも書いたが、ロベスピエールはくりかえしくりかえし、革命が成就したら状況はよくなる、ということをいう。しかし、革命は歴史目線なのである。それをそのように受け取るのは、後世のものなのだ。あの作品はそうした意味で、歴史の絶対のなかで固定されて、様式美的なものに陥りかけていた宝塚における「フランス革命」を、人肌の連続体として表現したのである。そういう野心を、演出の生田先生が抱いていたかどうかはわからないが、少なくとも望海風斗でなければ、これは不可能だった、ということはいえるとおもう。
明日海りおもまた仙名彩世というすばらしい相手役に恵まれたのだが、仙名さんはすでに退団が発表されている。むっちゃくちゃにうたが上手いすてきな娘役なんだけど、ヒロイン経験がなく、学年的にも微妙になってきて、ああ、これはもうトップはないのかな、などとなっていたところで、花乃まりあの後任として、おととしだったかな、電撃的に娘役トップになったのであった。こういう状況で、2018年の花組本公演はどちらもすばらしかった。「ポーの一族」では、あんまりからみはなかったわけだけど、作品があのような完成度になったわけだから、それが無関係であるはずもない。明日海りおは、ポテンシャルとしてはトップになるずいぶん前から多くのひとが感じていたとおもうけど、ぼく個人としてはなにかこうもうひとつ、もう一皮むけるんじゃないかなという感じがずっとあって、その最後の一枚を仙名さんがめくってくれたんじゃないかなとおもう。
そういうわけで去年のぼくの宝塚ライフはまあまあ充実していたわけだが、相方はどうだったろう、気がついてみると、華形さんの作品を一個も見ていないという・・・。こういう状況なので、いまこそ相方には華形さんが必要じゃないかという感じもするが、あんまり情報追えてないからわからない、次回作どうなってるのかな。
| ポーの一族 (DVD)
8,640円
楽天 |