第3話/チャレンジマッチ
神話のおはなしは終わって、いきない現代の、それもずいぶん俗っぽい雰囲気のイベントである。クライミングのチャンピオンに力自慢の素人たちがボルダリングで挑む、という趣向だ。このスーツを着ているチャンピオンのひとは、あれかな、きっとあのCMのひとだよね。
10メートルちょっとくらいの大きな壁に、点々と岩が突き出ている。力ももちろんだが、身軽さや運動神経も大事な要素なので、挑戦者はわりと小柄っぽいイレズミの男だ。
挑戦者はもう半分くらいにまで到達してしまっているのに、チャンピオンはまだ地面にいる。難しい位置・角度の岩とかはなく、ただタイムを競うという競技のようだ。つまり、素人でもゴールすることだけはできるようになっているのである。だが速くはない。だいたい、この手のイベントでは、そのテクニックを理解してもらうことが難しいので、計量できるしかたで競わないと、素人にはよくわからなくなってしまうのだ。手っ取り早いのがタイムなのである。
挑戦者が残り3メートルというところで、チャンピオンは悠然と最初のホールドに手を伸ばす。足では岩を蹴り、スピードを殺すことなく、テンポよくあがっていくのである。こういうひとはたぶん、見上げただけで、動線というか、どうやって上がっていけば最速になるかが一瞬で見えてしまうんだろうな。
いちばんうえのところにはパネルがあって、それを押せばゴールだ。挑戦者はもう目の前にまできていた。だが、あっけにとられている彼の横を一瞬で通り過ぎ、チャンピオンはあっさり勝ってしまうのだった。
そこでもうひとりチャレンジャーの登場。われらが範馬刃牙である。横には光成がいる。なんでこんなところにいるのかというと、この勝負に勝ったら二代目スクネを紹介してもらう、という約束をしているようだ。
バキは背が低いし、着やせするタイプだが、落下に備えたハーネスを装着することで服が少し絞られたせいか、観衆や実況もバキのガタイが非常にいいことに気がつく。期待できるかもしれないと、それなりに盛り上がるのだった。バキも地下ではチャンピオンだからね。
跳躍に備えてバキが前傾する。開始の合図とともに、バキはあたまの高さくらいのホールドを蹴って3メートル強くらいの位置に手が届こうとしている。チャンピオンも即座に対応し、待たずにスタート。わずかの差ではあったが、バキが勝利してしまうのだった。でもこれ、チャンピオンがちゃんとスタートと同時に動いてたら、かなりいい勝負だったんじゃないかな。
王者スコット・ハリスはわりと大人だ。苦笑いをしながらすぐにバキにリベンジを申し込んだりしている。だが、彼は汗だくだが、バキは息すら乱していない。いい勝負に見えたのはバキが空気を読んだせいなのかもな。「ちゃんとスタートしていたら互角くらいだった」とみんながおもうように。
だが、その場にいたあるものが、さらに挑戦を申し込む。ニット帽をかぶった巨漢なのであった。
第4話につづく。
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