るろうに剣心 配役発表 | すっぴんマスター

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宝塚歌劇団雪組で実施予定のるろうに剣心だが、配役が発表された。




公式ページ



もうなにがなにやら・・・。どこかがっかりした箇所があるとかではないのだが、なんというか、困惑というか、ひとつひとつの発表にサプライズがこめられている感じにまんまとのせられてしまったというところである。

まずだいたい、配役というか展開予想として大雑把に「四乃森蒼紫編」か「志々雄真実編」のどちらかにちがいないと想定したじてんでいかにもシロウトだった。そんなふうに、既存の器を宝塚に翻訳するだけではすまない、というかそれでは成立しないのだということをすっかり忘れていたのである(むろん、少女マンガのように、宝塚かそれに類する文脈がもともと原作にあるようなら忠実に再現するのも悪くはないのだが)。バサラの例もある。僕は、あのじてんではバサラの世界観をよく知らなかったのでなんともおもわなかったが、蘭乃はなの演じたいのりという女の子は宝塚の創作であった。要するにもともとの世界では男女のラブロマンスが、少なくとも真田幸村の周辺ではなかったので、あのように、いくつかの既存のキャラが部分的に含まれるようにして、いのりが立ち上がっていったのである。ラブロマンスに限らず、原作ありの作品を宝塚化するというのはそういうことなのである。


ポスター画像が驚愕の出来栄えで過呼吸になりかけたが、しかしまあこれは(実物とかわりないものをくっきり想像できたわけではないが)いちおう想定の範囲内である。あんなに美しいひとだもの・・・。早霧せいなの緋村剣心は、少年ジャンプの主人公を意識してか若干眉毛が太めになっているように見えるが、こういうのがすんなり馴染んでしまうのもすごい。それからこの手の作品でいちばん心配なぶぶんなのだが、髪の色も絶妙の抑え加減である。前作星逢一夜も終わったばかりで、果たしてどこで吟味したものかわからないが(ということはすばやく行われる制作発表を見るたびにおもうことである。一週間くらいまるまる休みあげてもいいんじゃないの・・・)、まあすでにしてかなりのところまで「るろうに剣心」がどういうものなのかを理解している感じが伝わってくる。早霧せいなは、普段はあんまり聡明なキャラクターではないんだけど、ほんとうにこういうところはプロだなーとおもってしまう。理論的には、原作とお芝居はまったくのべつものである。これはたとえば漫画のドラマ化とかにもいえたことで、ドラマや芝居が原作ではできなかったこと、その媒体でしかできないことを具現しなければ、本質的な意味でメディアミックスをする価値は失われてしまう。つまり翻訳なのだ。言語が異なる以上、「まったくおなじ」表現をかたちにすることは不可能である。小説をただ朗読するのであってさえ、わたしたちがじぶんのペースで脳内で音読するのとは異なっているわけである。翻訳者は、みずからの存在を限りなくゼロに近づけつつ、なお本人の感性にしたがって「だいたい」で同じ意味の言語を探し出すのである。特に文学作品のように、電子レンジの説明書を翻訳するのとはわけがちがう作業では、逐語訳的な翻訳の外側にこそ、作品の個性は宿っている。原作においては、逐語訳が可能な言語の外側にそれがあり、翻訳者はそれを感じ取らなければならないのだ。くどいようだが、理論的にはそうである。だから、極論をいえば、表面上全然似ていなくても、翻訳でいえばぜんぜんちがう固有名詞をつかったりしていても、それがそれとして成立するということはあり得るのである。が、現実はそう単純ではない。原作があるということは、翻訳される以前にそれが存在していたということであり、翻訳されるほどの作品であるなら、人気もある。それぞれ固有の思い入れもあり、それがわけのわからないしかたで翻訳されれば、一種の責任感のようなものから、その作品が世間に(特にこれまでそれを知らなかったひとたちに)まちがった受けとめ方をされてしまうと感じ、抗議をしたくもなるのである。そのあたりの事情を演出の小池修一郎や早霧せいないはしっかり把握している。ポスターと配役を見ただけでもそのことが伝わってくる。


現状僕が読み進めているところまでではもっとも人気があるとおもわれる蒼紫だが、これは擡頭著しい月城かなとが演じることとなった。原作のどのぶぶんをやるにしてもこれがおいしい役であることにちがいはなく、2番手の可能性が高いとにらんでいたが、そういうことにはならなかった。その2番手の望海風斗は加納惣三郎というオリジナルキャラを演じることになる。オリジナルといっても原作には登場しないというだけで、実在する新撰組隊士ということだ。これが剣心の恋敵になるというおはなしである。バサラのいのりを例に出したのは偶然ではなくて、たしかに剣心と薫はいい仲だが、いわれてみればちょっと健康的すぎるきらいがあるというか、バウホールのコメディとかならこのくらいでもいいかもしれないが、一本モノの長大な芝居ではちょっとスパイスに欠けるかもしれない。じっさい、僕が少年時代、ジャンプで読んでいたとき、短い期間、それも間欠泉的な読み方だったとはいえ、薫とのエピソードはむしろ邪魔のように感じていたような気がする。それよりも、蒼紫や、個性的なその配下のものなどとのバトルのほうに胸を熱くしていた。まあ小学生の男子の批評態度なんてなんの参考にもならないけど、少なくともバトルと恋愛を両輪くらいにとらえても、そんなにまちがってはいないだろう。遠めに表情を見る限りでは望海風斗の表情はさびしげで、たぶん薫の父親の知り合いとかで小さいころから知っていて、たたかいの避けられないふたりに薫が引き裂かれる、みたいな展開になるのではないかと妄想。

こういうことを踏まえて、なおかつ、宝塚のオリジナリティを出すために、人気の実在キャラを出すことになったと、そういう運びではないかと想像できる。そうなるとこれは恋敵だから2番手をつかわないといけない。

ところで、彩風咲奈が配役された齋藤一ももと新撰組であるのだが、これは蒼紫編ではまだ登場していない。しばらくして志々雄編がはじまるのだが、そのブリッジ的なエピソードに敵か味方かよくわからない、頑迷固陋な、かなりの使い手として登場し、その後剣心たちとともに志々雄一派とたたかうことになる。蒼紫はというと、その蒼紫編で剣心に負けてから姿を消し、志々雄編ではどちら側ともいえぬポジションで修羅と化して再登場する。こう考えると、いったい物語のどのぶぶんをやるのかぜんぜんわからなくなってくる。ポスターの月城かなとの造形は、直感的には、部下を失い、剣心を超えることのみに生きている修羅の表情に見えるのだが、ひっかかるのは彩凪翔の武田観柳である。この男は蒼紫編に登場した成金で、蒼紫を雇っていたかなり嫌な人物である。てっきり専科かそれに類する芸達者部門の男役がやると思い込んでいたが、まさか眼光鋭いシャープな美貌の彩凪翔が配されるとは、まったく、全然想像もしていなかった。というかこれを予想できたひとはたぶん日本中探してもひとりもいないだろう・・・。で、このひとは蒼紫編でフェイドアウトする。もしかすると僕がまだ読んでいないこのあとの展開で出てくるのかもしれないが、とりあえずいなくなる。ふつうに考えて、このひとが登場する以上、蒼紫はまだ部下を抱えている状態であり、打倒剣心状態にはなっていないとおもわれるのである。しかしそうすると齋藤はいないことになる・・・。


と、こうしたわけで、展開もおそらくオリジナルなものになるであろうことが推測できる。しかし心配はしていない・・・。小池先生ならすべての事情をあわせのんで、誰もが楽しめるエンターテイメントに仕上げてしまうだろう。そういうひとだから。

剣心の親友というか、居候の相楽左之介は鳳翔大だ。これもまた悪くない。極端に背の高いひとがだいたい含んでいるなにかユーモアのようなものが、おもえば左之介的なのだ。

大湖せしるについてはなにも語らない・・・。見たらわかる。


というわけで、また楽しみで具合がわるくなる日々が続きそうである。






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