すっぴんマスター2011‐観劇 | すっぴんマスター

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(※注:ゲーム攻略サイトではありません)書店員。読んだ小説などについて書いています。基本ネタバレしてますので注意。気になる点ありましたらコメントなどで指摘していただけるとうれしいです。

ちょっとはやい気もするけど、年末に時間がとれるかどうかわからないので、というかまずまちがいなくとれないので、徐々に今年の総括的な記事をあげていこうとおもいます。いちおう、いくつかジャンルごとにわけて、印象深かった出来事をあげていく、いつも以上に自己満足な記事なのですが、ブログには日記としての側面があるわけですし、こういうふうに客観的な事実を列挙しておくだけでも、僕みたいな極度に忘れっぽい人間には非常に意味があるのです。だからこれは、ふだんのような謎解きめいた似非論述ではありませんし、批評ではないので公平性にも欠くとおもいます。


というわけで、まずは観劇納めをしたこのジャンルですが、といっても、最近の観劇体験はすべて宝塚歌劇のものであって、それ以外のものとなると数年前のウエストサイドストーリーの来日公演以来見ていないはず。なので、記事の向きとしてはお芝居のひとつの方法としての宝塚歌劇ではなく、的をしぼったものになります。


今年は8月の花組公演『ファントム』から12月の宙組『クラシコ・イタリアーノ/NICE GUY!!』までぜんぶで5回宝塚を観劇した。「ファントム」以前、最後に見たのがなんだったのか忘れてしまったが(何年か前のまとめ記事を見ればたぶんわかる)、まだ瀬奈じゅんとか水夏希とかがいたころなので、2年くらい前だろうか。そこから特に興味のわかない時期が続いたのだけど、僕の彼女に天海祐希の「ミー・アンド・マイガール」のビデオを見せたところたいへんな食いつきようで、たまたまやっていたファントムを見に行く運びとなったのであった。もちろん、ファントムじたいが名作なのだし、これがお披露目公演となった蘭寿とむをはじめとした花組もすばらしかったのだが、個人的にはなんといっても体験を共有し感想をいいあえるにんげんと見に行けたことが大きかった。幼いころから宝塚を見続けているが、その熱というのは冷めてはぶり返し、また冷めるという感じのくりかえしで、個人史的にはいま第3期にあたる。しかし、今回の熱はたぶん生涯冷めないのではないかとおもう。


で、矛盾するようだが、同時に今回の熱のきっかけが「ファントム」であったことは、非常に重要におもえる。僕は和央ようかバージョンも春野寿美礼バージョンも見ていないが(どちらもちょうど冷めていた時期にやっていた)、蘭寿版のファントムはほんとう、歴史的名演じゃないかとおもう。人事的にどうしてそういうことになるのかよくわからないが、ほかの組がトップと2番手のあいだにかなりの学年差があるのに比べて、優れた男役がもうぎゅうぎゅうにつめこまれているという印象なのだ。壮一帆は、なんというか、むかしながら2番手というか、蘭寿とむと同期だけあってベテランの風格があり、他の組がそうではないというわけではないが、大きく力強い手で、まさしくジェラルドがエリックを見守るのと同じく、トップを、ということは組の機能を支えているという感じだ。文字通りのすばらしい実力者であり、役もよく吟味されていて重厚で、経験に基づいた読解力のようなものすら感じる。3番手格の愛音羽麗は、なんかむかしから3番手という感じだが、その感じも、たぶんこのひとじしんのもつ超越した感じがもたらしているもので、うまくいえないが、組全体の動きで見たとき、このひとがいないとさびしいのである。


花組では、まあいまいったひとはみんな好きなんだけど、特に華形ひかるがいちおしだ。目のきらきらしたかわいらしい風貌の男役で、わりに黒い役、また難しい役をすることの多い、変わったポジションにある。数年前の「銀ちゃんの恋」におけるヤスは、たぶんもっとも難解な役のひとつとおもわれるが、見事に演じられていた。初演の汐風幸があんまりすばらしいので、DVDを見るまではけっこう不安だったのだけど、まったく杞憂というやつにおわった。「ファントム」のアラン・ショレを演じるにあたり、このひとはこれまでの先輩たちの演技をビデオで見ることはしなかったのだという。これは再演をするにあたってけっこう勇気のいることだとおもうが、このひとは基本的にぜんぶそういう感じなんじゃないかとおもう。たとえばヤスに関していえば、銀ちゃんと小夏へのおもいにはさまれ、あの決断をするに至るまでの心象は、まったく論理的ではない。極端なことをいえば、あの葛藤、そしてそこから導かれたひとつのふるまい、これはコンピューターには理解できないのである。つまり、演技をするにあたり、人物の行動を論理の鋳型のなかに落とし込み、ひとつの原因に対してひとつの結果が対応するというかたちに解釈しては、ヤスを演じることはできない。その、ある種の飛躍ができるかどうかが、役者にとっては肝心なわけだけれど、このひとはたぶん、これが一息にできてしまうタイプ、要するに生粋の役者なのだ。きらきらしたスターというふうではないかもしれないが、他の組との相対でいえば、きっと霧矢大夢や真矢みきのようなタイプのスターになるにちがいない。ぜひぜひトップになってもらいたい男役のひとりです。



というわけで、ファントムがあまりにもすさまじい出来だったので、すっかり夢中になってしまった僕らは、とりあえず全組一周してみようということにしたのだった。次に観たのは月組『アルジェの男/ダンス・ロマネスク』である。感想にくわしく書いたが、僕はむかしから月組っ子である。理由はわからないが、月組にこころひかれることが多かったのである。で、やっぱり、現在の感想としても、組全体で見るといちばん好きなのはやっぱり月組なのである。トップが誰かによっても組の色はかわるし、最近は組異動もさかんなので、ずっとおなじ組にいてトップになるというひとはまれかもしれない。にもかかわらず、伝統としかいいようのないなにかが遺伝子レベルにまで組み込まれ、おそらくその組っぽさをつくりだしているのかもしれない。たとえば、娘役トップの蒼乃夕妃は、すばらしいダンスと美貌で、もうなんかポカンとなってしまうようなひとだけど、同様によく蘭寿とむを支える華組の蘭乃はなも、娘役としては満点なのである。そのありかたは、まったくちがう。蒼乃夕妃がほとんどトップの霧矢大夢と対等の目線なのに対し、蘭乃はなはすすんでこれを支える位置にいるのである。まったくことなるありかたが同じ呼称のポジションで成立しうるということは、組によってそれが意味するところがちがうということだろう。その漠然として、組の構造そのものに、なにか僕にとって好ましいものがあるのだ。

細部でいえば、龍真咲と明日海りおのありかたがすばらしい。どちらもたいへんな華の持ち主であって、生得的な舞台人というおもむきであり、ただ見ているだけでからだのどこかが満たされていくような、そういうひとたちである。トップの霧矢大夢はいわずもがな、貫禄の演技であるし、蒼乃夕妃のダンスはほとんど芸術作品、さらに、「いいひと」と「わるいひと」をそのまま具現したかのような青樹泉と星条海斗がぜんたいを大人っぽく、渋くしている・・・。ほんと、バランス的には完璧、時間がとまればいいのになと、ダンス・ロマネスクのDVDを見るたびにおもいます。というのは、霧矢大夢と蒼乃夕妃は来年の本公演で退団することが決定しているのだ・・・。われわれ宝塚ファンはつねに、「好きなトップにできるだけ長くいてもらいたい」というおもいと、「好きな人にはやくトップになってもらいたい」というおもいを、同時に抱えている。両者は同時には成立しない。それに、宝塚の「退団」のシステムじたいは、演劇の一回性を制度的に保証するものとして非常に優れているとおもう。わたしたちの観劇したものは、とりかえのきかない唯一のものであり、ちょうどわたしたちの人生がそうであるように、その瞬間にしか体験のできない、一回的なものなのである。この体験は、所有することができない。それを、退団のシステムが、たしかに一回きりなのだと保証してくれるのだ。しかしそうはいっても悲しいものは悲しい。僕にできることといえば、くりかえし劇場まで足を運び、少しでもたくさん、そうした経験を記憶のなかに保存しておくだけである・・・。



次に観たのは雪組、『仮面の男/ROYAL STRAIGHT FLUSH!!』、そして月組日本青年館公演『アリスの恋人』、そして宙組『クラシコ・イタリアーノ/NICE GUY!!』である。これらはまだ記憶も生々しく、感想も書いたばっかりのような気がするので、くわしくは書かない。各組気になったひとをあげていくとすれば、雪組の彩那音、宙組の北翔海莉だけれど、これまた残念なことに彩那音は今回で退団、北翔海莉は専科に異動ということである。北翔海莉もまた、ぜひトップになってもらいたい男役のひとりだけど、専科からトップになった例もあるようだし(彩那音の姉である彩輝直もそう)、希望をもって待っていたいです。


というわけで、今年は宝塚熱が再燃し、観劇しまくったことで、たいへんな刺激をうけた。いろいろなアイデアも浮かんだ。星組は、いまのところ観る予定はないけど、それ以降もまた続けて観るつもりです。





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