第225話/ホストくん⑤
今月号のWOOFIN'で、真鍋昌平とライムスターの宇多丸が対談しています。日本のヒップホップと漫画という文化を並べた、たいへん興味深い内容となっています。
それにしても、真鍋さんはやっぱり日本語ラップ好きなんですね。そんな気はずっとしていました。
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丑嶋を「パパ」と呼ぶ女。
対して丑嶋は、否定もせず、いわれるままにお姫様だっこをしてあげている。人形でいっぱいのピンク色の部屋がカラーでよく映えているが、その中央で、無表情に女をだっこする社長がシュールすぎる。
棚のうえには大量の薬が置かれていて、中央のテーブルにはチュッパチャップス的な棒つきキャンディーの塔が、コンビニに売られているそのままの状態で置かれ、これを崇めるようにして周囲をぬいぐるみたちが囲う。
社長が優しくするので、柄崎は気に入らない。女はモモカという。高田や柄崎のひとことひとことにいちいち激昂して、なかなか、鰐戸三蔵的に会話にならない。
モモカが「パパうさぎ見せて」といえば、一拍おいたのち、丑嶋は携帯の画像でうーたんを見せる。さらに、うーたんに話しかけるモモカの相手をして、社長はうーたんの役までやってみせるのだ。
で、モモカはキャンディをあげようとするのだが、これがなくて、がたがた震えて混乱し始める。コレを見て、社長は高田にキャンディを買いにいかせるのだった。
柄崎のはなしでは、モモカはもとグラビアアイドルだという。社長がいやに優しいのには、もちろん理由がある。モモカは、利息だけですでに5000万円も払い続けている客だというのだ。
モモカは25歳。まだ若いが、シモのお世話をした男性はかるく5000人を超えるという。やや幼いため、大人の友人というものができない。だから、いまのモモカには、社長だけがこころのよりどころであり、もしかすると完済が不可能ではないところでも、丑嶋をつなぎとめておくため借金を続けているというぶぶんもあるのかもしれない、ともかく、ずっと利息を払い続けているのだという。生命保険の受取人も丑嶋になっているらしい。
柄崎は高田に対し、女に関しては、闇金もホストも一緒だろと、かなり鋭い指摘をする。
高田は、キャンディを探しにドンキ的なところにむかう。そこにいたぜんぜん知らない女に、柄崎のひとことで混乱した高田は例の「愛華」という女の影をみる。今日はその愛花の命日だという。
モモカの家を出た丑嶋と高田は、トッポギ(?)を食べながら隼人の面接をいつにするか話し合う。(柄崎は車で待っていたはずなのだが、ここにはいない)
隼人は、面接日はいつでもいいという。だが、ちょっといまから会えないかと、瑠偉斗に相談したいことがあるという。
高田も仕事があるのだが、隼人の様子がどうもおかしい。だから、用事を済ませてからならよいということになる。
丑嶋と別れた高田は、隼人と合流し、ユリの花束を手に入れ、墓地へとむかう。愛華が死んでから四年たつという。高田はそれ以来毎年、命日に墓参りをしているらしい。
ふたりがその場を離れているあいだに、同じく愛華の命日を弔う人物が訪れていた。たぶん、愛華の父親だろう。毎年のことで誰のものかわかっているのかもしれない、高田が生けた花が脇に捨てられている。
なにをしたのかわからないが、高田には罪の意識もある。だが、肉親ははっきりと彼を拒絶する。高田はただ、土下座をして、遠くから謝る以外ないのだった。
つづく。
次号は高田の昔話になりそうだ。
隼人は土下座する高田を見てなにをおもうか。
丑嶋のモモカのあつかいは、柄崎がいうように、ホストのありようを誇張したものであるかもしれない。
たしかに、客観的に見てみれば、丑嶋のおこないは悪魔のようである。
しかし、利息を払い続けることによって、モモカは丑嶋社長という頼れるパパをそばに維持している。
つまり、取立てにやってくるあいだの丑嶋を、時間で買っているのだ。
モモカが「利息を払い続けている」ということの意味が、もはや完済は不可能であり、入るそばから丑嶋にもっていかれているということであるのか、あるいは、丑嶋を近くにおきたいがために借金を続けているということなのか、いずれかによって、モモカの考え方というものもちがってくる。
つまり、もし、モモカが意図して「利息を払い続けている」という状態にいるのだとすれば、少なくとも彼女にとって丑嶋は、時間いくらで買われるホストなのである。
もちろん、たいへんな上客なのであるから、丑嶋のほうでも、うまいことまた借金をさせようとはするだろう。
だがそれ以前に、モモカじしんが、これをすべて返済しようとはせず、多少残るようにしているのだとしたら、やはり彼女は、構造的には金銭で丑嶋社長を引き止めていることになるのだ。
丑嶋にとって、利息は、闇金を営むうえでのリスクを考慮した、「金を貸す」という行為に返ってくるものだ。
だから、取り立てるつもりできた利息さえ手に入れば、モモカに用などない。
しかるに、今週のように優しくていねいに扱うのは、丑嶋にみずからの役割の自覚があるからである。たんに貸した金の利息が支払われているのではなく、それを媒体にして、あらたな交換が生まれていることを、丑嶋もよく知っているのである。
ここに、誇張されたかたちで「ホストくん」が示されているのだとすれば、その定義は、「時間いくら」で人生のいちぶを売るにんげん、ということにとりあえずなるかもしれない。
隼人は高田にはなしがあるという。
彼はこれから700万円つくらなくてはならない。たぶんそのはなしだろう。
かといって、高田にその金を頼むとか、カウカウに頼むとか、そういう具体的なはなしにはならない気がする。ただ「どうしよう」ってなるだけかも。そんなこといわれても「どうしよう」としか応えられないけど。
そして、高田の過去も、なかなかたいへんなもののようである。
隼人は愛華のことを知っているらしい。慶次もたぶん知っているだろう。
方向はちがうが、慶次も高田も、以前にいた正統的ホストの位置から離れてしまった。
そこには、「ホストくん」一般に通じる、なにか人類学的トラウマみたいなものがありそうである。
人生のいちぶを売るとはいったいどういうことであるのか。通常の時間給労働となにか異なるのか。あるいはいっしょなのか。
そして、そうした結果、にんげんにはどのようなことが起き得るのか。
次週までの宿題ですね。
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