第234話/千春イズム
今週は・・・バキと千春のターンか。
隔週で描写がすすむうえに先週お休みだったので、このたたかいがどこまですすんだのかふつうに思い出せない。
たしかバキがチハル流をはじめて、攻撃を顔面で受け、千春の脚の骨を折ったと、そんなところだったとおもう。
しかしバキは、挑発のつもりか、吹っ飛ばすつもりだったのにあんたすげえな、とかいうことをぬかす。
そんな千春のすごさを、バキは「闘志天翔」と形容する。千春の強さとはいったいナニか?なつかしい最大トーナメントの絵とあわせて解説がはじまる。それは、気迫だとか根性だとか、狂気だとか向こう見ずだとか、いろんなことばで表現可能なもの。千春の得意技(らしい)にいたっては、あらゆる急所が思春期のにきびのようの散っている顔面を、顔面そのものを、相手のからだのもっともかたい箇所、額に強打するというものだ。ふつうに戦略というものは「じぶんのもっとも強いところで相手のもっとも弱いところを叩く」ということを基本とする。しかし千春ではそれが文字通り逆である。敵の体力を計量化してゼロにすることを目的とするごくふつうのファイトのとらえかたでは、こんなことは理解不可能だ。
そんな千春をしたうアウトローたちは数知れない。花山は強い。問答無用で強い。だから憧れの的になるのも当然かもしれない。だが千春への憧れの目線は、それとはぜんぜんちがう。
そんな自称千春一の子分のひとり、トモジはいう。東京マラソンに出れば千春さんが断トツで優勝すると。マラソンは根性のスポーツだから。つまり、根性を数量で競うのだから、優勝はまちがいないと。そもそもマラソンのこの定義がどこまで正しいかも疑問だが、とにかくトモジはそう断定するのである。
そのカリスマが動揺している。じぶんのおもいつきに揺れているのである。
その戦略とは、チハル流を見せると豪語したバキの顔面にむけて、二本の指を伸ばしてみせることだ。
千春戦がはじまってはじめてのことかもしれない、バキが大量に発汗している。
しかしバキはチハル流をつらぬく腹のようだ。かめなおし、「外すなよ」とさらに千春を煽るのだった。
つづく。
このままチハル流を貫くのなら、バキは顔面のもっとも弱いところでこの指を受けねばならない。
それはまっすぐに失明を意味する。とっくに義眼とかでなければ。
目つきを回避することはチハル流をあきらめることにほかならず、それは「じぶんにはチハル流を完遂することはできない」ということを示すかたちになり、どちらを選択しても、バキはかなり敗北に近づくことになる。
チハル流を貫きながら、つまり目つきをまっすぐにうけながら、同時に失明も回避する方法があるだろうか。
しかしなんらかの方法を講じて回避してしまえば、それはやはりチハル流にもとる行動となる気がする。あとは偶然のみが行方を支配する。あんがい千春のほうがチキって指をひっこめ、バキがチハル流で千春をこえた、なんていう展開になるのかもしれない。
もちろんバキは千春ではないのだから、それをやりとげなければならないということはない。やりとげることができず、じぶんとはまったく異なった合理性のもとに生きる異生物の世界を知るだけで、バキにはたいへんな勉強だろうし。
これまで僕は、絶対者である勇次郎に打ち勝つためにはバキもまたそれに近づかねばならず、「誰が勝つかは最後までわからない」戦闘の流動性から、バキだけは抜け出さなければならない、と書いてきたが、じつはそうではないのかもしれない。
いつか書いたように、父・勇次郎が世界=私という自我のありかたにいるいっぽう、その脇に生まれたバキには世界=師匠という世界観が育まれた。
勇次郎が敗北するということは、彼の世界のいちぶを「他者」に書き換えるということにほかならない。
わがままの通らないものがあるということをつきつけるのである。
世界そのものを、Gですらも師匠としてきたバキは、世界の他者性を背負ったかたちで勇次郎の前に立つ。
バキはもしかすると千春をチハル流で乗り越えるという最大トーナメントで暴れた勇次郎的な行いを選択せず、そのまま、幼児が「世界って広いなぁ」と実感するようにして、千春を知るものとして、成長を果たすのかもしれない。
わかんないけど。
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