第202話/ヤミ金くん23
鰐戸三蔵の畑山への暴行を阻止しようとのりこんできた竹本優希だが、ではかわりに友人の丑嶋を売れと、一は言う。
なんで丑嶋を呼ばなければならないのかと問う優希に、一が、借金をたてかえてやるからという。
「キミの嘘にはもう乗らない。
もし、カオルちゃんを呼ぶなら分け前を貰う」
うん・・・?
風向きが変わってきたぞ。
優希は鰐戸兄弟の丑嶋襲撃計画を知っている。
しかしそれをとめようというのではない。やるなら誠愛の家の住人にも分け前をよこせというのだ。
甲本をはじめとした住人たちには余裕がない。金が少しでもあれば、少しはかわれる。
一は、分け前をわたすといういちおうの約束をする。そして、おまえに丑嶋を裏切ることができるのかと訊く。
「裏切るつもりはない。
貯め込み過ぎたカオルちゃんに分けてもらうだけだ」
なにぃ・・ッッ。
なんだかすごいことになりはじめた。
はなしがすすめばすすむほど、優希という人間がわからなくなってくる。
これは老人を襲ったときの甲本と同じ論理だ。
意外なことに、優希自身も、奪う奪われるという、ゼロサムゲーム的な語り口を採用している。
これは、たいへん不思議なことだ。
そうした関係性から逃れでてはというのが、優希の丑嶋への提案だったからだ(と、僕は理解している)。
とすれば、優希はその行為じたいではなく、その程度を問題にしていることになる。
丑嶋と待ち合わせの約束をしてから、優希はいうのだ。
「強欲は罪だと思う。
分け合う気はないか?」
しかし、その「程度」は、いったい誰が判定するのか?
奪われすぎたものが分け前をもらうとき、そこに強欲はないのだとすれば、そこにはやはりゼロサムゲーム的な、たしてゼロになる原則があることになる。
奪う奪われるということがふつうに通用する世界で、それはまちがっているというのは、まだわかる。
しかしそれをつきつめた先では、奪われすぎたから返してくれ、という言い方も、できないはずだ。
殺す殺されるの闘争の世界に平和主義者の通常人が投げ込まれたとする。
家族を殺された彼は、しかし復讐のために(殺し返すために)武器を手に取ったじてんで、このゲームにのってしまっているのだ。
優希の真実はどうであれ、こうしたことばづかいをしているじてんで、彼はこのゲームの原則に従っていることになる。
そのありかたを認めつつ、「やりすぎ」を彼が判定しているのだとすれば、彼は自分自身に神のような特別性を見ていることになる。
甲本たちについて語るときの、「金銭的な余裕が少しあれば人は少しは変われる」という“人”に、彼自身はどうも含まれていないようだ。
そうした点を見ると、優希じしんの思想はここではおかれ、神としての彼は甲本たちのいる地点、すなわち「奪う奪われる」を弱者の側から“認める”立場におりてきて、そのうえで交渉しているのではないかとおもえる。
老人襲撃のときの甲本の言と合わせて、ここで優希は甲本の代弁者となっているのかもしれない。
鰐戸強盗団が結成される。
1班は三蔵を班長にして丑嶋を拉致。
2班は榊原が班長。丑嶋の通うスポーツジムを調査。金を隠してないか調べにいくのだろう。
3班は二郎が班長。重要なカウカウ襲撃班だ。総指揮ははじめ。
そのころの丑嶋は、戌亥から例の都陰弁護士のはなしをきいていた。
そういう弁護士はじっさいいるらしい。しかしかなりあくどい男のようだ。
ふたりは都陰の背後に誰かがいると推測する。ふつうに考えたらそれは鰐戸なんだろうけど、一などがそうした動きをした気配はこれまでいっさいなかった。だけど、まったくべつのところからきたとも考えにくい。あとの描写を見ると、甲本ははなしを知っているっぽいし。
そこへ柄崎から電話。優希に会うのは柄崎だ。やっぱり丑嶋は優希から取り立てにくいのかもしれない。
ひとけのない道をひとりでゆく柄崎を、うしろからそっと追う自転車は、三蔵である。チャリンコで襲撃というのがまったく三蔵らしい。ふりおろされた巨大なスパナは確実に柄崎の頭頂をとらえる。出血もたいへんなものだ。柄崎は拉致されるが、これは、ふつうにだいじょうぶなのだろうか・・・。
カウカウの事務所には甲本がきている。休みになっていたはずだが、事務所には高田、マサル、加納がいるらしい。小百合はいないようだ。
弁護士の件に怒っているマサルは、ドアを開けるなと丑嶋にいわれていたにもかかわらず、開けてしまう。つきだされた辛子スプレーがマサルの目をとらえる。そして一、二郎を先頭にした集団が、バット片手に乗り込んでくる。
誰だという加納に、一はあっさり正体をあかす。加納は連れて行かれたが、高田とマサルは放置されたみたいだし、あとのことはいっさい考えていないらしい。
戌亥にいわれ、数え切れないほどいる、じぶんにうらみをもつものを思い浮かべる丑嶋が、もうひとつ、戌亥になにかをお願いしようとする。だがそのはなしがはじまるまえに、「柄崎うんこ野郎」から電話である。便所が長い柄崎を丑嶋は「うんこ野郎」と呼んでいたが、あれは彼のなかでの柄崎の名前だったのか…。
とにかく、電話の相手は柄崎うんこ野郎ではない。鰐戸一はここでも、あっさりと正体をあかすのだった。
つづく。
鰐戸が決死の覚悟だということがよくわかる。
柄崎と加納はつかまった。事務所も、金や重要な書類はアウトと考えていいだろう。一がどう出るのかはわからないが、闇金ウシジマくんには大ダメージだろう。
救いはすぐそばに戌亥がいることだろうか。彼が何者かは未だに不明だが、丑嶋のアドバイザーとしてはむかしから変わらない。丑嶋がしようとしていた頼みごとも気になるところだ。
そして、優希のミステリーは深まるばかりである。
今週はちょっとショックですらあった。
うえのほうで多少の考察はしたけれど、わけがわからないというのが正直なところだ。
来週は休載だそうです。…このタイミングでッ?!
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