今週の範馬刃牙/第158話 | すっぴんマスター

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(※注:ゲーム攻略サイトではありません)書店員。読んだ小説などについて書いています。基本ネタバレしてますので注意。気になる点ありましたらコメントなどで指摘していただけるとうれしいです。

第158話/矜持



ついに範馬刃牙VSピクルがはじまった。

勇次郎もああいってることだし、事実上範馬勇次郎戦のキップをかけた準決勝ってところだろうか。


地下闘技場に花山と光成が駆けつけると、そこにはすでに烈海王が。

彼らがその先に見たのは、バキの蹴りを受けてダウンしたピクルだ。



「豊饒な――


それでいて厳かで


いかにも刃牙さんらしい初弾です」



烈がなんか詩人みたいなこと言い出した。


じぶんの腕も粉々にはじけてしまうような克己のマッハ突きでも、さまざまな形容のされてきたジャックの戦慄のアッパーでも、ピクルを仕留めることはできなかった。

それがダウンしている。

白目をむいて気絶している。



んなあほな…、といってもはじまらない。

とにかく豊饒で厳かだったのだ!


バキはそのあいだ、いつものようにテープを手首と足首に巻き、服を脱いでパンツ一丁になる。そのあいだに烈も解説を続ける。



「おそらく――


刃牙さんは伝えるでしょう


『狩り』のため――ではなく


食べるため――ではなく


言うなれば――


文化としての闘争(たたか)い」



今日の烈はまるで文芸批評家だ。


そうそう、僕がこれまで言いたかったことってこれですよ…。



目の覚めたピクルは正面からふたたびバキの蹴りを受けてしまう。とりあえずすごいダメージだ。そんなばかな…。ピクルにはアストロンがかかってるんじゃなかったのか?!


魔法はいつかとける。2ターンくらい待ってから攻撃をはじめればそれでいい。続けて高く飛び上がったバキのかかとがピクルの顔面に…。『餓狼伝』に出てきた闇空手の久我重明さんも、下段の踵蹴りは金的蹴りと並んでもっとも危険な技のひとつだといっていた。

バキは容赦ない感じで何度も何度もピクルの顔面を踏みつける。同時にピクルの後頭部はくりかえし地面にうちつけられている。光成も「殺す気か」とびっくりだ。いやしかし、あなたがファイターの「殺す気」にびっくりしていることに僕はびっくりだよ。ていうかふつうに考えて殺す気でやんないと生還もむずかしいんじゃないでしょう。


しかし、バキには「殺す気」などないのだった。それどころか、この漫画ぜんたいをひっくりかえすような、新しい哲学に達しているような気配だ。



(殺るか――ッッ

殺られるかッ


――ではないんだよ)


(喰うか――

喰われるかッ


――ではないんだよ)


(俺達がやることは


殺し合いではないッッ)


(命の奪い合いまですることはないんだ…)


(そうまですることは――


ないんだよ…)



怒涛のスタンピングから這って逃れようとするピクルの背後をバキがとる。チョークスリーパーだ。完全にきまったチョークはぜったいにはずせないと、巽だったか誰かがむかしいっていた。それにバキの腕のサイズとピクルの首回りがぴったりって感じで、見事にきまっているといっていいでしょうか。


ピクルは首を絞められるのは初体験だろうか。首をしめるには、少なくとも首と同じサイズの「絞めるもの」がなくてはならない。関節技なども、人間の指と、握力という概念がなければ、多くは成立すらしないものでしょう。ピクルはつねにじぶんより巨大なものとたたかってきた。関節技や絞め技のような“小手先”の攻撃は、彼のいた世界にはありえなかったでしょう。あったとしても蛇くらいだろうか。

とはいえ、首をしめるとどうなるか、のどを圧迫するとどんな苦しみがやってくるか、そのくらいはピクルだって知っているかもしれない。チョークをかえられたことのないひとでも、それまでのさまざまな経験から複合的に“絞められる感じ”を推測することはできる。寝てるときに髪の毛がからまって息苦しかったこともあったかもしれない、転んでのどのあたりを強く打ったこともあるかもしれない、いずれにせよ、なんかわかんないけど首のまわりに巻きついてる、痛ぇ、苦しい、ということは理解できただろう。舌を出して白目を向いて、スピーシーズに出てきたエイリアンみたいな顔になりながらもピクルは、バキを背負ったままも猛然と観客席を駆け上がる。そしてちょうど烈や花山が観戦している頂上の手すりにたどりつき、そこから反転して闘技場へと落下をはじめたのだ。


ピクルにからまったままのバキは、空中でまたも謎めいたことばを浮かべる。



(ワカってるじゃんピクル…


それでいいんだよ…


そんな程度でいいんだよ…


強さ比べなんて…)



“そんな程度”とはいったい…。



つづく。



勇次郎や烈や花山や独歩や本部の、迫力ある解説に説得されたい、そんな気分でいっぱいのツッキーニ(25)です。


ペイン博士はさがっててくれ。ここからの解説はファイターだけの領域だッッ!!

それか勇次郎あたりが解説でむずかしいことばつかったら、そのことばの解説してくれ。

それが学者の領域だッ!



いずれにせよ、バキの攻撃は想像以上に効いているようだ。

格闘技で体重の差というのは、ときに決定的な意味をもつ。

10キロちがえばもう次元がちがうといってもいい。

道場でじぶんの倍くらいもある先輩と対峙するときなど、僕ははっきりいっていつも恐怖だったし、それこそまんがみたいに、じぶんの攻撃がはねかえってくるような感覚もよく覚えていた。

そういう理由があるから、選手人口が厚く、技術志向の、洗練された格闘団体ほど、ウェイト制ということをよく重視している。柔道やボクシングなどがそれだ。

ばあいによっては腕力の差と等号で結んでもよい、体重差というものを、限りなくゼロに近づけることで、複雑で知的な技術戦が可能となり、結果としてぜんたいの技術レベルを飛躍的に向上させることができるのだ。

これはウェイト制に限らず、たとえば極真空手の「手技による顔面攻撃の禁止」などにもいえる。

もちろん、極真の標榜する「実戦」ではそんな制約はありえないし、むしろ顔面への手わざなど、いちばん最初に飛び出てくる技だろう。

しかしこのルールなしで、現在ひろくつかわれている下段廻し蹴りや、接近してはなつボディへの下突きやカギ突きなどの技術はありえなかった。

というか、蹴り技のほとんどは、ただ足を突き出すレベルを出ず、まったく進歩しなかったんではないだろうか。

はなしがそれてしまったけど、とにかく、それだけ体重差というのは決定的なもの。

ピクルはバキの倍くらいある。

バキより30キロは重い烈や克己の決死の一撃がきかなかったのに、主人公の攻撃はきくのかよ、という意見はあるだろう。

しかし、よく考えればピクルはじぶんの倍ではきかない、はるかに巨大な生物に勝利してきたのである…(という論法は、すでに本編に出てましたっけ。克己あたりで)。



そして、まちがいなく殺し合いであり、喰い合いであったこれまでのたたかいの行き過ぎを指摘するような、バキの発言だ。


現段階ではまだまだ説明が足りないので、なんのことやらよくわからないが、烈はバキの求める「文化としての闘争」を看破していたから、今回は彼がしっかり解説してくれることでしょう。烈ならまあいいか…。どちらともガチでたたかってるあなたにはその資格がじゅうぶんにあるよ。


それから「ワカってるじゃん」というのもよくワカらん。

どうしてピクルのとったあの行動が「ワカってる」ことになるのだろう。


…うん、これも烈さんの解説待ちだな。


なんかこの段階でごちゃごちゃいうのは野暮な気もしますしね。


ところで、明日は範馬刃牙⑱巻が発売だ。

疵面の⑤巻も出る。


疵面はどこまでのるのだろう。連載がとまるところまで載せるんだろうか。


もう週刊連載はいいから、

ここはいっそのこと単行本書き下ろしにしてしまってはどうだろう。


思いつきでぱぱっと書いちゃうのって、一週間であれだけの分量を書かなければならないっていう重圧もあるんでないでしょうか。


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