今週の闇金ウシジマくん/第150話(追記あり) | すっぴんマスター

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(※注:ゲーム攻略サイトではありません)書店員。読んだ小説などについて書いています。基本ネタバレしてますので注意。気になる点ありましたらコメントなどで指摘していただけるとうれしいです。

第150話/テレクラくん④




(昨夜はいい感じの時間にAmebaのメンテナンスがはじまってしまい更新できませんでした。スミマセン)



吉永美代子の娘、美奈に、七万円で母親との同時プレイをもちかけたスキッパーがテレクラで女漁りだ。


これを書くときいつもわからなくて困るのが、テレクラのシステムだ。ウィキペディアのよると、出会いカフェとは逆で、男性が部屋に待機し、女性が自宅などから電話をかけてくるのを待つようだ。二番目の33歳自称ブサイクは、スキッパーと少しはなすと「オーバマ!オーバマ!チェンジ!」といい始めるが、これはそのまま「チェンジ」ってことなのかな…。

あとは、テレクラについての動詞…。「テレクラする」とか「テレクラをつかう」とか「テレクラに行く」とかいういいかたがあてはまるばあいは果たしてあるのか…。「利用する」がいちばん無難なのかなぁ。



「お前らビッ×はみんなそっくりだ。


どいつもコイツも人のコトを軽く見ている豚どもだ!!



貞操の美徳心を捨てた拝金主義の売国奴どもに…


俺が天誅を下す!!


そして美しい祖国を取り戻す!!」




スキッパーは、「人のコトを軽く見」る、つまりじぶんのことを軽く見る「ビッ×」たちを「売国奴」に仕立てることで、「ビッ×」に「天誅を下す」ことの大義名分を獲得する。個人的な感情のゆらぎを、「美しい祖国を取り戻」そうとしている愛国者の意識に転化することで、じしんのおこないを正当化しているのだ。あとの描写で彼が小学校の教壇で社会を教えている場面があるので、事実彼が愛国者である可能性もある。



つけひげをはずしたスキッパーaka杉本先生が教鞭をとるどこかの教室。彼の授業はおりしもポツダム宣言受諾、おそらくは彼の求める「美しい祖国」が向こう側にある、日本の転回点のぶぶんにさしかかっていた。だが教室のなかはひどいありさまだった。こどもたちはみな好き勝手におしゃべりをし、動き回り、休み時間となんら変わりがない。教室の外にまで出ている生徒もいるようす。だがスキッパーは特に注意もしない。

教室を出ると生徒の親から電話だ。授業中に「マーくん」が食べていたスニッカーズを取り上げたらしいが、「マーくん」はお腹がすいていたのだから、かわいそうじゃないか、スニッカーズの代金は弁償していただきたいと、そういうおはなし。俗にいうモンペアというやつだろうか。「学校」という構造を、ふつうのお買い物と同じく、お金を払って、その額に見合った商品が提供される「等価交換」で成り立つものととらえた結果でしょうか。あえて大真面目に、熱く書いてしまうと、授業中に「スニッカーズ」を食べてはいけない理由は、いろいろあるだろうが、なによりそこが「教育」の現場であるということだろうか。そこで学ばれるべきは、「授業中にものを食べてはいけない」ことよりむしろ、「ものを食べてはいけないというばあいもありうる」、あるいは「してはいけないことがありうるという状況もある」という内容の流動的なテンプレート、シチュエーションの鋳型を知ることでしょう。しかし、学校をコンビニでおにぎりを買うような感覚で「利用」すると、たぶん、たとえば「社会の教師」とは、「社会」という科目を教え、その知識を、料金と交換するかたちで「提供」する、あるいは「するだけ」のもの、という認識になってしまうのかもしれない。おなかのすいていた「マーくん」はたしかにかわいそうかもしれないが、それでも、人格を無視して「スニッカーズを食べてはいけない」ことを強要してくる状況は、生きていればあたりまえにある。かなりの一般論だと自覚しているが、ある意味ではそういった融通のきかなさ、世界の不如意さをシチュエーション的に体験させるのが学校という環境のはずだ。これがわからない親が増えているというのなら、いっそその「等価交換」の概念を逆手にとって、「教育とは」と契約書に明文化してしまってはどうだろうか。

追記‐ここのぶぶんは、ちょっと安易なかきかたをしすぎてしまったかもしれないですね。というのは、あまりに「学校」一般を概括しすぎてしまって、私立とか義務教育とかいった特殊性を無視してしまっていますね。重要なのは学校をお店のように「利用」している、する感覚だとおもうのですが、ふつうの公立の小学校においては、ここでいう「社会」の授業においても、「金払ってないからいらない」みたいな意識が働くのかもしれない。なんかわかんないけど義務だから(子供を)行かせてる。しかしべつにその商品(授業の内容)はいらない。そしてそういう親の考えが子供たちに伝播し、最後には「三平方の定理なんて今後の人生でなんの役に立つの?」という問いに、安直な解答を与えてしまう。)



毎度のことなのかスキッパーにはたいしてこたえた様子もない。そこへ美奈=パー子からオッケーのメールだ。



金をうけとりにきた高田が、美代子の髪が今日はきれいだと指摘する。僕にはいつもと同じにおもえたが、よくくしをとおしたくらいのことなんだろうか…。美代子はちょっと赤くなる。電車のなかでお化粧もする。これからデートって感じに鼻歌までうたってる。しかし着いたさきは、スキッパーの待つ、名前も露骨などこかのホテルだ。美代子はともかく、美奈は不安げだ。

スキッパーはまずお母さんからということで、いっしょにシャワーをあび、コトを開始する。携帯で占いをやる18歳の娘の横で、母親がすべてをさらけだしている。美奈ははじまってから画用紙みたいに無表情になっていて、感情は読み取れない。

続けて美奈があいてをする。スキッパーはむこうをむいていた美代子の髪をつかんで起こし、娘の顔を見ろという。これがスキッパーのいう「天誅」であろうか。


男が去ったあと、七万を前にしたふたりは表情をかえる。2で割り切れない。スキッパーはこれを見越し、「天誅」の一環として奇数の金にしたのだろうか。

けっきょくは紹介した美奈が四万、美代子が三万を受け取る。美代子は気楽に焼肉食べにいこうなどというが、美奈はすぐに母親と別れてしまう。



美奈のこころの傷は大きく、とりかえしのつかないものだった。どこかの駐輪場の陰にしゃがんだ美奈は、涙やよだれを流しながらはげしくえずくのだった…。



つづく。




今週もきつい…。



娘に行為を見せてもなんにも感じない美代子と、お金のために深いトラウマを負ってしまった美奈。どちらも売春はしていた。自宅でやるのもマンキツでやるのも、似たようなものだといえばそうだろう。だけど若い美奈には、まだ「若いがゆえ」というか、わけもわからず、ただひとつ残ってる武器を手に、突っ走っているというぶぶんも少なからずあったのだろう。じぶんのしていることに自覚がないということの意味が、ふたりではちょっとちがうはずだ。しかし、今回のことで、美奈は、母親という大きな、本来依って立つような存在の陰部を目撃し、またみずからの陰部もさらしてしまった。これ以上ない決定的なかたちで、じぶんがとても遠いところにきてしまったのだということを、自覚させられてしまったのかもしれない。映画『サイレントヒル』には、「子にとって母親は神」という台詞が、大きなテーマとしてあった。そういう手付かずの、聖域として誰に対してもとっておかれるべきこころのある「ぶぶん」が、このように他人の手で開かれ、踏み荒らされてしまったのだ。「強引に」ではないというところも、またきつい。美奈は立ち直れるのか…。



ところで、スキッパーのいう「天誅」というのは、まさに美奈が負ったこころの傷を期待したものだったのだろうか。彼が天誅を下そうとしていたのは、「貞操の美徳を捨てた拝金主義」のひとびとだ。これを「売国奴」とし、愛国者の立場から、「だから天誅を下す」とするところが彼独特の論理の飛躍だが、彼が七万円も払ってまで「三人」に、つまり「親子」にこだわったのは、無意味なことではなかったのかもしれない。彼の怒りは、「ビッ×」のみに向けられたものではなく、仕事上の不満やストレスも大きく関わっているはずだ。そういう身の回りの諸悪を、テレクラで出会う「ビッ×」とやらに代表させ、天誅をくだそうというのが、彼の思考順路なのだろう。テレクラを利用するとき、彼はつけひげをつけている。いまちょうど読んでいる金子光晴の『絶望の精神史』によれば、明治というのはひげが幅をきかせた時代であって、権威の象徴だったそうだ。



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彼はひげをつけることで、杉本先生からスキッパーへと変身している。無気力な教育者が、拝金主義者どもに天誅を下す愛国者に変わるわけである。ひげの着脱をして表と裏の世界を行き来することで、彼は自分の位置が相似的に逆転すると考えている。描写にあったように、彼は毎日どうしようもない親や子を相手にしているのだ。どことなく平野啓一郎『顔のない裸体たち』の片原盈が思い出される。彼の目的は、たんに強い立場に立って弱いものを支配するといったこと以外に、他者が日常平気な顔で隠している陰部を引き出し、指差して嘲笑し、歪んだ復讐を果たすことにあるのかもしれない。



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