第144話/この闘いとは――
烈を仕留めたピクル・ダッシュをなんらかの方法で回避し、ジャックは逆にピクルを観客席まではじきとばした。歩み寄ったジャックはピクルの髪をつかみ、顔面をコンクリにたたきつける。
(なァ先輩…
教えてくれよ先輩…
俺たち現代人はさァ…
進化できたのかい???)
髪をひっつかみ、ジャックはピクルをぶん投げて闘技場へともどす。髪が抜けないのが不思議なほどの剛投である。相変わらずけろりとしてはいるが、しりもちをついたままのピクルの背後に接近したジャックは、なんの遠慮もない、すさまじい蹴りを顔面に決める。ピクルはあの涼やかな表情で振り返ったところなので、顔面にもろに受けてしまったかたちであり、それ以上に首がへんなことになってしまいそうだ。
ジャックの怒涛の如き攻撃はとまらない。あおむけに倒れたピクルののどのあたりに、真上からスタンピングだ!ふつうならキマリだ。どころか生命も危うい。しかし相手はピクルである。放った本人の腕が破裂するような技を受けてもなんのダメージも受けないナチュラル無限アストロンである。ジャックはふたたび髪をつかんでピクルを引き起こし、左耳を噛み千切る!!
ジャックは攻撃を続けながらこころのなかでくりかえしピクルに語りかける。感じ取ってくれているかいと問いかける。美食も美酒も美女も、金も地位も名誉もいらない。たったひとつのものがあればいい。たったひとつのための人生でいい。
(強きこと!!!)
失禁しても特訓をやめない。
死のふちに追い込まれてもクスリをやめない。
強くなるために、大きくなるために、骨延長手術の激痛だって厭わない。
(生命活動の全ては―
強さの獲得
この一点のみに向けられた
そんな俺が―
現代を代表する)
しびれるぜジャック…。
シンプルだが、やはりジャックは、究極のキャラクターだ。到達点だ。
強さだけを求める、という言い方じたいはよく見るけど、ここまで「だけ」というぶぶんをやりきっている人間はほかにいないでしょう。
ジャックが口に含んだモノを吐き出す。そして血に包まれたそれを蹴り飛ばし、ピクルの顔面に叩きつける。むろん、ちぎりとられたピクルの左耳だ。
闘いを見守るバキ、博士、烈、光成の四人は、同じおもいにとらわれていた。
(ジャック対ピクルとは
最新VS―――
最古の闘いッッ)
つづく。
ついにというかやっとというか、目に見える、かたちになったピクルのダメージだ。
といっても、なんかあのまま口のなかにいれて嚥下してしまいそうな予感がすごくするけど。そういえば夜叉猿も、バキに目をつぶされたとき、みずからの指で眼窩から眼球をひっぱりだし、口に含んで食べてしまっていた。
最新対最古か…。なんか似たような煽り見たことある気もするけど…。
ジャックの本質は、強くなるために必要なことを、考えうることを、なにもかもやる、というところでしょうか。
ピクルのいた原始の世界では、こういうことはありえない。なぜなら、強いものしか強くないからである。強くなる、という考え方も、そもそも存在しない。シロサイとライオンでは、ガチでやったらどっちが強いだろう。けっこう互角のたたかいをするのではないか。しかしライオンは、シロサイより決定的に強くなってやろうとはしない。シロサイも、ライオンに脅威を覚え、噛み付きを避ける訓練を重ねたりはしない。
ピクルは克巳とのたたかいでその努力と犠牲の痕跡を感じ取り、そこに価値を覚えた。ある不可能なこと、あるいはむずかしいことをやれるようになる…、それが努力を重ねることの意味である。できないことができるようになり、行けないところに行けるようになり、わからないことがわかるようになる…。これは僕たちの人間的活動そのものだ。ここでいう「努力」が文明を支える最小単位だとすれば、ピクルは文明に価値を見たことになるのだ。
しかしジャックほどに極端になると、またはなしはちがってくるのかもしれない。もしピクルが、努力とその犠牲の影を感じ取るとすれば、彼にはジャックがほとんど形而上的な存在に見えてくるのではないでしょうか。ジャックは、強くなるため努力を重ねた「結果」ではなく、強くなるための方法そのもののような人間であるのだから。
それにしても、あれだけの猛攻を受けながらピクルがけろりとしているのは、ほんとにどうなんだろう…。ピクルは恐怖を覚えることはないのだろうか。ピクルに同族がいたかどうかということは過去にさんざん考察しましたが、顔の下半分を失いながらまったく勢いを失わず、どころか人間とはおもえぬ破壊力を徐々に開示し始めたこの怪物を前ににして、仮にダメージがないとしても恐怖を覚えないというのは、ジャックに自己投影ができていないことの証明であり、やはり彼には同族が存在せず、おそらくじぶんの姿も見たことがないからラカンの鏡像段階も通過していないのだろう。
いずれにせよ、ジャックはカッコイイ!!すばらしいキャラですね。絵もなんだか生き生きしている。じっさい、この手の描写(こないだのアッパーみたいな)をさせたら右に出るものはいないですよね。
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