第136話/日中合作
今週の扉絵はフライドチキンを眼前につまみあげてぼんやり眺める範馬刃牙くんである。克巳のもぎ取られた手羽先を意図しているのだろうか…。このやろう、チキン食べるときこれから毎回思い出しちゃうだろ。「次なる標的、見据えるその瞳」という文句は本来ピクルにあてはまるものであるから、結局克巳の手羽先を食べなかった彼の心情のこれは表現なのだろうか…。
誇張ぬきの世紀の一戦を終えて、克巳は杉谷総合病院に入院していた。右腕はやはり肩から先がない。さすがの板垣ワールドでもどうもならなかったか…。鎬センセには相談したのか?
それにしても克巳が下にはいているのは空手着だろうか?烈のときもそうだったが、なぜか掛け布団がない。
そしてその烈が、じぶんでブレンドしたという中国茶をもってお見舞いにきていた。お茶がクッキーで烈が女の子だったらよかったのにね克巳。
克巳と烈がお茶を語り合う。日本の玉露もいいがじぶんにはものたりない、茶葉を発酵させた中国茶のほうが深い、じゃあこんどおれが玉露淹れてやるよ、発酵はしてないけどどれもウマいよ…。歴史ある中国拳法と若い克巳の比喩だろうか?
「克巳さん…
片腕を失った君にこんなことを言うのは―――
不謹慎すぎることは百も承知している
君に嫉妬している
それが癪だ…」
克巳はまっすぐに烈の言をうけとめ、あの試合の価値をじぶんでも認めた。しかしじぶんひとりのちからでできたものではないともいう。
「中国―――
琉球―――
日本―――
三国に渡り
数千年もの間
一刻も進化を止めなかった
数多の先人達
幾百万―――幾千万もの先輩達の息遣い
温もり…
そして悠久の時…
今も感じている」
ふつうに生きていく日常でも、ものごとはなんでも誰かの発明や発見が複雑にからみあうことで成り立っている。どのような大天才も、人類の全仕事をゼロからやりなおすことはできない。なにかをはじめようというとき、僕らは過去の偉人たちの到達したところからはじめることができる。先人たちの試行錯誤が発見したある技術や方法の、その存在をすでに知っている地点から出発することができるのだ。だからにんげんは成長をすることができる。記憶が歴史を支え、歴史が進歩を保証するのである。それは武術にしたところで同じこと(なはずなのだ。ほんとは)。
(幸運にも俺は代表しただけ
日中合作なんだあの試合は)
「なのに勝てない」
…出たよ主人公…。
花束をもって見舞いにきた刃牙が開口一番この憎々しさである。
刃牙の不敵なひとことに烈が反応するが、克巳がそれを制す。それは誰かが言わねばならぬことだ。だが力足らずも根限りやったことであり、それだけは否定させない。あれ以上はないと。
そして克巳はいう。君に継なぎたい。
バキは花束(バラ?)を根元からしぼり、左手に花びらのかたまりを収める。おや…?なにか見たことのある描写だぞ…。
新聞紙トレーニングの効果をここで見せるか、バキは花片のかたまりをすさまじい握力ですりつぶし、一滴の雫を抽出する。文字通りハンドメイドの香水である。いったいどれほどの握力があればこんなことができるのか。
…そしてこの筋肉魔人らしくも洒落たテクニックは、花山薫が刃牙とたたかう直前、病床の母親に向けてみせたものとまったく同じである。
バキはこれもまた花山同様、香りを孕ませた掌を克巳の両頬にそえ、克巳のおもいをうけとるのだった。
つづく。
…あの地味すぎる新聞紙トレーニングはこの伏線だったのかっ!
こんなところで花山の描写を復元するとは、いったいどういう意図なのだろう。バキはあの場所にはいなかったので、これは物語的な操作である。しかしこの場面が僕ら読者のなかにどのような感触を惹起するのだろう。たしかに僕、花山のこのシーン好きだけどさ…。超握力も含め、花山の全人格をあらわすような、見事な場面だとおもう(それ以前に元ネタがあったりするのかな)。
それともこの場面すらも、新聞紙と同様の伏線のひとつであり、これからまた「握力」ということがキーワードとなってくるんだろうか。
というかそもそも、バキはたたかうんだろうか?いや、たしかにもう残りのキャラではどうにもならない感じはある。主人公が出てくる頃合いだともおもう。だがどこかで、噛ませ犬でいいからガイアや寂や本部や鎬兄弟の動きを見たいという感じもある。ゲバルとかアライJr.(…と申し訳なさそうにうつむいてバキと目を合わせない梢江)なんかが再登場してもおもしろい。
それからジャック・範馬くん…。なんというか不遇のキャラだよな。範馬の血では弟に負け、パワーとかタフネスキャラでも、ピクルをはじめかぶるやつが多すぎる。まちがいなく作中トップレベルの実力の持ち主なのにな。主人公でも噛ませでもないという意味でどこか中途半端な感じで、作者もつかいあぐねているのかもしれない。
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