第130話/出会いカフェくん⑧
闇金ウシジマくん“悪役キング”コンテストが開催されるそうな。
丑嶋からはじまりいちばん新しいJPまで、選択肢は11。このなかだったら…うーむ、困ったな。インパクトでいったら肉蝮だけど、滑皮や丑嶋じしんも捨てがたい。それにしても、肉蝮の「超天然ドS男」って説明はなんだ。ナチュラルにサディスティック、ぐらいの意味だろうか。
新宿で美來を捕獲したJPは、アキトとふーみんを人質に3000万円を要求する。しかしそんな途方もない金額をミコが払えるわけがない。JPをゆするヤクザにしたところで、彼からそんな額を回収できるとは考えていないはずだ。いくらでもいい、払えない額を請求して、いきのいいJPを引き入れたいのだ。そのことはJPもよくわかってるようだ。あくびまじりにJPは、払えたら払えたで伝説じゃね、という。ミコにはとても飲めたはなしではないが、アキトたちを人質としていることをJPは再度くちにする。…しかし緊迫感はほとんどない。ニヒリストのJPもそうだし、ある程度の恐怖も手伝うのか、ミコもこの理不尽にはたいした反応も見せない。
ミコは母親が金を借りているカウカウ・ファイナンスに電話をしようとするが思いなおし、いつかの「勝負に勝って大金ゲット」男、“K”に電話することにする。
夜が明けてからふたりの前に現れたKは、今日がちょうど“その日”だという。ていうか、一晩中ミコとJPはなにヤッてたんだ。「エッチでもしながら作戦練るか」ってまさか…。
どう見てもさわやかとは言い難いKを、JPは「気持ち悪い黒豚眼鏡」呼ばわりだ。しかしKはおそれることもなく「充分お前も気持ち悪い」とやり返す。
いつもなら口より先に手が出ているところだろうが、金の話をしたいJPはとりあえず脅しをかけるだけにとどめる。
「3千万に見合ったお前の大切なモノはナンだ?」
KはJPに問う。しかしJPは明確には応えず、悪態をついてお茶を濁してしまう。
睨み合う男ふたりのあいだに入ったミコは、本当にお金がどうにかなるのかということをKに確認する。ずいぶん協力的だな。Kに電話できたのだから、上手くやれば警察に電話するなり、メールで知り合いに110番をお願いするなりできたはずだが、それをしないということは、まだまだ僕ら読者の知らない機微、関係のコノテーションが、おそらくはアキトを含めた三人のうちではあるのだろう。あるいはJPが、「警察を呼べばアキトは見つからない」的な脅しをかけた可能性もあるが、このことについてはとりあえず保留として、「ミコもJPと同じくらいお金を必要としている」というふうに認識をかえてしまおう。
ふたりを連れて先頭を歩くKは、“彼等”と連絡をとる。彼等とKのあいだではすでに「例の女」としてミコの共有が果たされている。したがってこの勝負は、Kのもつ限られた情報で組み立てられたミコ像で成立可能なものということになる。たんにきれいな女だとか名刺を受け取ったとかいう些細なことであっても、「例の女」ということばにはもっと深い認識の共有が感じられるのだ。
ミコは切羽詰まっているからやるとおもうと言うKに対して“彼等”は、その二人がやらなかったらまたキミがやれ、と宣う。つまりその「勝負」とはKにもできる(できた)ことなのだ。このことから、おそらくはKがミコに感じたくみしやすさのような人間性がカギだということがわかる。AVとかではどうもなさそうだ。
早朝の新宿を力無く行く浮浪者を目にして、Kが自分語りをはじめる。30歳を超えたKはホームレスの一歩手前だったのだという。
「俺のような人間は一発で解決できないと、
ナニも変わらない」
Kは狂ったように「一発のチャンス」を謳いあげる。きょとんとするミコ。JPですらがリアクションもとらずに唖然としている。真鍋昌平独特の乾いたユーモアだなー
そのころ、太陽に熱せられてひどい暑さとなっているコンテナのなかではアキトと冬美がはげしい渇きに苦しんでいた。アキトが持っていた水はふーみんが一気してしまったし、ふーみんはカフェオレを持っているが、アキトが寝るまで隠しておくつもりだ。渇きもたいへんだが、僕はむしろ休載で一ヶ月近く放置されたふーみんのう〇こが気になる。
ところで、前回ふーみんはペットボトルにおしっこを入れてなかったろうか?床に転がる空のミネラル・ウォーターは、アキトがたまたま持っていたやつで、飲み干した空のそれにおしっこをして…。いまそれがまたからっぽで転がっているということは、どちらかが飲んだんだろうか?だとしたらかなりの極限状態だ。
ミコ、JP、Kの三人はどこかの高級ホテルに到着していた。“彼等”は一泊80万のスイートにいるんだそうだ。
「ここでナニするの?」
「それは“彼等”が決めるコトだ。
“彼等”に会えば分かる」
あれ…勝負の内容は特に決まってないんだ…。
廊下の奥、観音開きのドアの向こうに、“彼等”は待っていた。全部で四人。服装はふつうのものだが、顔には映画のスクリームみたいな、どくろや不気味な笑い顔のマスクをつけている。四人はまたすべて片手に、拡声器とも変声器ともつかぬ、ドラえもんの「テキオー灯」みたいなものをもっていて、いちばん右の男はバラエティ番組の司会者がつかうような指差し棒を握っている。きわめてドンキ的な出で立ちだ。新宿のドン・キホーテは品揃えがすごいからなぁ…。
“彼等”は何者なのか?ミコにはどんな勝負が用意されるのか?また、ふーみんはカフェオレを飲んでアキト用の飲み水を製造するのかっ?!
つづく。
…カイジかっ!!
ある程度予想できたとはいえ、こりゃ新展開だな。といって新しい方向に手を伸ばしたということともちがうだろう。Kの「一発のチャンス」ということばが、本編のテーマである「若さ」にどうやって返っていくのか、かなり見ものだ。
「勝負」とはなんなのだろう?そして彼等のこの不気味にして滑稽な姿はなにを示すのか?
Kの口ぶりからは、すでに彼等とのあいだでミコのはなしが出ていたことがわかる。それはつまり、Kが話題として提示したということだ。出会いカフェでミコを選んだのはKだ。この段階ではまだ、なにをもってしてKが紹介客としてのミコに目をとめたのかはわからないが、いずれにせよそれなりの空気を、おそらくはくみしやすいミコの人柄を、Kは感じ取ったのか。勝負の内容は会ってから彼等が決めるということからもそう言えそうだ。は受けるか受けないかが重要なのだから。
マスクと指差し棒、それにテキオー灯が示すのは“彼等”の階級だろうか。これらは顔や声を隠すものだ。彼等は芸能人のようにすでに顔が知られた存在か、そうでなくとも知られてはまずい存在か、そんなようなものなんだろう。いよいよカイジだな。
そして、このはなしのいったいどこに丑嶋がからんでくるのかということもじつに興味深い。どうなる主人公?!バキといいガンツの玄野といい、僕の好きな漫画はいつも主人公がキャラ的に受難だなー。


