今週の範馬刃牙/第113話 | すっぴんマスター

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(※注:ゲーム攻略サイトではありません)書店員。読んだ小説などについて書いています。基本ネタバレしてますので注意。気になる点ありましたらコメントなどで指摘していただけるとうれしいです。

第113話/恋慕


カリスマを得るために烈海王の仇討ちを大義名分として神心会門下を総動員し、ピクルを包囲したはいいが、花山と主人公にあっさりいいところをもっていかれ、本来は主人公的演出ともいえる「遅れて登場」のコマンド入力をしながら最高にかっこわるい愚地克巳、なのであった…。



だらだらと汗を流しながら、がっかりなのかなんなのか、複雑な表情をみせてうなだれる克巳に、ピクルを包囲しながら、はじめてのお産のときの旦那みたいに手をこまねいて見送ることしかできなかった門下生たちを代表し、崎村という、たぶん初登場のおとこが謝罪する。けっこうなビビりようだ。そりゃそうだろうな。仮にも館長だもの。


「父親をハリ倒してまで…

喜び勇んで来てみたら…

いないと…

行っちまったと…



いとおしい彼女は…

つまらん彼氏を残し…

気の利いたクラスメイトと出掛けちまった
と…」



さりげなく独歩を打ち倒したことも述べている。崎村たちもこれには敏感に反応し、驚いている。“独歩を”倒したことか、“父親を”倒したことか、どっちに驚いてるのかはわかりませんが。


沈んだ雰囲気から一転、おもてをあげた克巳はしかしにこやかに「よかったじゃん」という。きっかけは烈の仇討ちだった。それなら刃牙や花山がやったって一緒じゃないかと。烈を思う気持ちは皆同じだと克巳はいうのだが、この“皆”というのは、刃牙や花山などを含めた“皆”という意味だろうか。彼らがどうおもってるかはわからんけど…、少なくとも仇討ちということとは無関係におもえる。それにあれだけ門下生を鼓舞し、しかも父親を半殺しにして、あいだをかきわけてピクルへと猛進した行為とは矛盾したことばだ。明らかに自己欺瞞である。克巳の言に崎村がすぐさま反論する。寺田だってやられてるのだ。誰でもない克巳がやってこそではないかと。


「ところで崎村…
質問がある


勝てるのかなァ!?

この俺があのピクルにッッッ」


克巳は狂気の表情で絶叫する。本気で勝てるとおまえらは思ってんのかと。おもてには出ない、内面の激しい葛藤が窺い知れる描写だ。天才のはずだった。空手界のリーサルウェポンのはずだった。しかしどうだ。館長としては“二代目”に甘んじ、ライバルたちからはほとんどシカト状態、過去の栄光もどこへやら。もとが優等生のあつかいだっただけに、その反動で激しい劣等感にさいなまれ、卑屈になっていたのだろう。館長のポジションがなかったらぐれてるとこかもしれない。

館長が仮面を捨て、はだかの本音を吐露した。神心会その他大勢はあまりの衝撃にどうリアクションをとるべきかわからず硬直してしまっている。

徐々に表情をゆるめる克巳は、やがて謝っていう。勝てるからやる、勝てないからやらない、そういう戦いじゃないと言ったのは俺じゃないかと。ついでにバンダナもほどき、こうべをたれ、神心会のために協力してくれと、克巳はお願いをする。門下生たちはこれまで以上の忠誠を見せて、ピクル捜索のために散るのだった。

直後、ひとり克巳が、晴れやかな表情で路上に棒立ちしている。


ううむ、これはもしかして、すべて克巳の企図的な策略なのだろうか。


どう考えても、克巳がピクルを倒すことは不可能におもえる。しかし克巳はカリスマを得たい。館長たる器を得たい。そして出した結論が、このキャラクター振動なんじゃないのか。すでに単なる記号と化している“天才”をいちど捨て、門下生たちと同じ生身になることでシンパシーを獲得し、翻って再び“烈師範のため”、“神心会のため”という大義を呈示し、あたかもそういった幻のシンボライズであるかのごとく正面に立つことで、いわば錯覚を利用して館長たろうとしているのでは…。


いずれにせよ神心会が再び一致団結したことはまちがいない。これが意図したものならたいした政治力だ。独歩のいう“化ける”とはこのことなんだろうか。


いっぽう、ピクル、刃牙、花山の一行は地下闘技場にきていた。ピクルが目指していたのはここだったのだ。てことは、新宿から水道橋までまた歩いたんか。けっこうな時間がかかるとおもうんだけど、そのあいだの三人の気まずさを想像するとちょっと笑える。ピクルはじゃべれないし、花山はしゃべらない。刃牙はどんな面して歩いてたんだろ。

目覚めてから唯一、ピクルが涙を流し、まともにバトった場所といえばここしかない。つまりピクルは刃牙を、少なくとも烈以上の相手とみなしたわけだ。


積極的な彼女に連れられてなにやらエロのにおいがぷんぷんする夜の公園にやってきた童貞みたいに、ピクルと目を合わせぬまま、刃牙はどうでもいいことをぶつぶつとつぶやいている。ちっちゃいおじいちゃん、徳川さんは、喜びをおさえきれない表情で、ここはなにする場所じゃ、と問う。

「喧嘩売られとるんぞ
バキッッ」



「…………………………………………
…………………だよね…………」



だよねじゃ、ねえ。


つづく。




わからない、刃牙はコレ、ビビってんのか?わからん。自信がないのだろうか。喰われるのがこわいのだろうか。怖がってたとしてもべつにおかしくはないけど、違和感が残る。“初体験は失敗する”理論だろうか。自信満々、悟りきったバキしか最近は見ないので、ちょっと意外な感じだ。それだけピクルに対する闘争衝動が原初的なものということか。刃牙じしん最近は必要なときしかヤってなかったから、久しぶりの感覚にとまどっているのかもしれない。



…これ、はじまってしまうんでしょうか?


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