今週の範馬刃牙/第111話 | すっぴんマスター

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第111話/精神力



ピクルのロケット・ダッシュを花山が正面からうけとめた!踏ん張った両者の足がアスファルトを深くけずる。

そして強力な花山の粘りに、ピクルはトリケラトプスの幻影を見ていた。じぶんよりはるかに小さい相手が、かつて同じように組み合った好敵手たちと同等の力を有していたのだ。大きさはその他の小さな恐竜たちと大差ないのだが、その重量感ときたらまるっきり大型恐竜だ。


同等はウソだろ。
とにかく、それくらい、力強いという意味でしょう。

ピクルが思い浮かべる小さな恐竜ってなんだろ?絵とコメントから察するに、いっぽうは『ジュラシック・パーク』で有名なベロキラプトルかその亜種のようですが(でも大きな爪あるんでしたっけ?前脚にもあったんだったかな)、もうかたほうは?ヒサクニヒコ『世界恐竜図鑑』(新潮文庫)で2m程度のヨロイ竜を探してみましたが、ストルティオサウルスくらいしかいない。あとはみんな小さくても4mとかになっちゃう。だけどこいつ、ヨーロッパの恐竜なんだよな…。

まいいか。

ちなみにトリケラトプスと同じ北アメリカで最小のヨロイ竜は、少なくともこの図鑑ではシルビサウルス。やはり4m。この絵のような角はないみたいだけど、同じく白亜期後期と書かれてあります。


呆然としているピクルに、花山が不敵に笑いかける。


「ふふ…

原始だ恐竜だとごたいそうな騒ぎだが

それっぱかしじゃあんちゃん

新宿(ここ)じゃあ通らねェ」


…パンチラインですね。
新宿における生存競争の文脈で捉えたら、原始の喰うか喰われるかのたたかいも日常にすぎないのかもしれない。特に花山のような無法者においては。より複雑化しているぶんたいへんかも。



花山が押し返す!花山同様、剣持から奪ったスニーカーをずたずたに裂いて、汗をかきながらちょうど前屈立ちの構えになってピクルはこれに耐える。


(この雄(オトコ)を取り巻く様々な社会的事情―――

義理?人情?責任?約束?

そんな様々な人間模様から発揮される

理屈や常識
人智を超えた

ある種神懸りな力


そんな精神力は彼(ピクル)の好敵手たちには望むべくもない

それらを発揮するには彼らはあまりにも巨大すぎ

あまりにも強力すぎ

そしてあまりにも脳が小さすぎた)


この描写はファイターとしての花山を、すなわち花山という全人格を、見事に説明しきっているとおもう。

言語を用い、情報を交換し、貸し借りのしがらみにバランスをとる「社会」という人間独特の条件の中心に、先端に、花山は生きている。あまりに強力すぎる恐竜たちの破壊力は(もちろんあたまわるいってのもそりゃあるけど)関係性というようなことを許さないし、必要でもない。範馬勇次郎とおなじ。彼に友人が少ないのもそのためだ。関係性などということを彼は必要としないから。
しかしそれは逆にいえば集団のなか、内側におけるたたかいを未経験ということになるのか。ピクルや恐竜のたたかいは、いってみれば現代における国家間の戦争みたいなものなのかもしれない(規模という意味合い以外でも)。単独で自己規定可能な存在どうしの、文字通りやるかやられるかの、強いものと弱いものしかない二元論的闘争だった。集団“内”でのたたかいというのは、もう少し意味がちがうのかもしれない。そしてそこから生じるじっさいの腕力以外のなにかを、ここでは「精神力」ということばで包括し、規定しているんだとおもう。…そういうことでいいんでしょうか板垣先生?なんか迫力で押し切られてしまった感じだ。


踏ん張る両者は、お互いに組み合ったまま膠着状態に陥る。そしてピクルは、待ち侘びていた「己の全てをぶつけてもいい実力者」の登場にすさまじい笑みをもって喜びを示す。


と、ピクルの頬に手をあてた花山が、好意的な微笑みをもって突如“終わり”を宣言する。きょとんとするピクルの背後、「遅ェぞ」と花山が声をかけるのは…。


愚地克巳…ではない。


主人公である。刃牙である。サナブオーガである。


ピクル発見を花山がバキに伝えたみたい。花山はバキ到着を待ってピクルを足止めしていただけだったのだ。そりゃちょっとはたたかいの衝動もあったにはちがいないんだろうけど。特にすすんでたたかうわけではないみたいなことを考えたら、バキと花山は似た心理状態なのかもしれないな。神心会その他大勢もバキの登場に大騒ぎだ。しかし「本物!?」はわかるけど、「出た…ッッ」って、どういうリアクションだ。


「いやァ…ッ

キレイだな…

やっぱり…」


イケメン刃牙がピクル口説きモードに入ったとこで、今週はおしまい。ピクル、でかっ。



いまさらだけど、ここ新宿だったんだな…。剣持はどこでヤラレたんだろう?同じ新宿だとしたら、ピクルは水道橋からここまで素っ裸で来たことになるのだが…。深夜っぽいので、線路を歩いてきたのかな。


ピクル発見をわざわざ連絡するくらいだから、バキはじぶんがピクルに魅力を感じているという本音を花山にははなしていたことになる。仲いいんですよね。バトル漫画なので、どうでもいいような、バトルに無関係なプライベートの描写(アニメ版ドラゴンボールのような)はほとんどカットされてしまっているのでね…。


そして克巳はどうなった。いま出てきても完全に浮いてしまう気がする。


でも、へんなはなし、バキのいで立ちからはあまりこれからたたかうという気配が感じられないですよね。なんか顔見にきたって感じがする。ここで主人公がガチでやりはじめたらほんとに克巳があほみたいになってしまうし、また同時に克巳を送り出した独歩の立場も失われてしまうから、まあ一悶着あったのち、克巳がやることになるんだとはおもうけど。

でもそうなると、今度はあそこまでしてピクルを引き止めた花山の立つ瀬がなくなってしまうな…。やっぱりふつうに順番に、みたいなことはなさそうだな。もめそうだ。


そしてピクルはバキを見てなにをおもうのだろう。体重は半分以下だろうし、身長も烈より低かったはず。ピクルが遭遇したファイターでは渋川の次に小さなおとこだろう(いや、ガイアもけっこう小さいか)。そんな主人公に彼はなにを見るか…?


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