愛は地球を救う、ってやつですよね(笑)
かつてないくらい強力で、しかるに子供のように無垢なブウを、いちどは愛情で制圧してしまったわけですから。スキなサタンから、「ひとをころすのはよくないよ」って教えられて、まさにフロイトがいうように愛の喪失への恐れの変形で、「じゃあやめた」ってブウはなった。「なぜひとをころしてはいけないか」という問いに対する非常にシンプルな回答ですよね。
んで、へんな金持ちの、バズーカもった馬鹿がわんちゃんを撃ち、ブウの内なる破壊衝動…にんげんの殺害への原始的な欲動があたまを再びあらわれそうになったときも、サタンはブウにとってかわってこの馬鹿に制裁を加えることで、心理学の代償行為的に、ブウと比較したらずっと小さなサタンの暴力行為で満たしてしまった。もちろんブウには欲動を充たすだけのちからがあるわけだけど、サタンとの関係性においてある種の社会が築かれて、「ひとをころしちゃいけない」という抑圧が働いている以上、ここからさきのブウの暴力はこれまでとはちがったもの、たとえばやりたい女がいたらかたっぱしからレイプする、というものになってしまう。サタンとの(そしてわんちゃんとの)関係においてはということですがね。だから身を挺して「社会」を保ったこのシーンのサタンはかっこいい。
それだけに、サタンが撃たれたあとの、喪失を恐れる愛をすべて失い、実質無人島状態に逆戻りしてしまったブウの怒りはすさまじい。この場面、意外と深いんだなー