バイトが固定シフトのため、忘年会も新年会も同期飲みも行けず、クリスマスも新年も勤務中に(言うまでもなくひとりで)むかえる予定の、ニセ仕事人間、ボクです。ときどきじぶんがナニモノかわからなくなるYO。ナマケモノか?空き時間を求めてフリーターやってるのにな…。
ク、クリスマスがなんだ。FUCK DA ILLUMINATION、KISS MY ASS、と呻く血の気の多い反逆ピーポーは、これを聴いて一緒に優しい気分になろう。
クリスマス・ソングに名曲が多いことは誰もが認めることだろうけど、旋律が明快で、単純な展開のものが多いためか、ジャズ・ミュージシャンがこれをとりあげることはけっこうあって、また名演も数多い。そういう演奏を集めた、まあ、よくあるコンピレーション盤です。多くのコンピレーション盤は、そのコンセプト、曲を集める基準となる共通のものがなにかあいまいで(「貴方とのステキな夜に」とか「酒の肴に」とかそういうの)、そもそもそのようなシチュエーション作りのために用意された音楽ではないので、おうおうにして首を傾げてしまうものが多いのですが、「クリスマス・ソング」という括りは誰が見たって明確ですのでそういうことはありません。コンピレーション盤は“誰の、どのような演奏か”ということを重視しない購入層に向けてつくられているため、消費者的な思想に端を発する「ジャズ・ムード説」を推進してしまいかねないのだけど、購入者がきちんと意識してさえいれば、一枚でさまざまな名演が聞けるというのはやっぱりおいしいですから
、まあクリスマスですし、かたいこといわずに楽しもうかってところです。ただ、こういうCDって毎年発売されるにちがいないから、いまも同じものが売られているかどうかは知りませんが…。
発売は1998年。ソニー傘下のレーベルに残された新旧クリスマス・ソングの名演を特に拘泥なく集めたもの。僕がこれを買ったのは…ふたしかな記憶ですが、マンハッタン・トランスファーが入っていたからだとおもう。このひとたちは、ウェザーリポートの名曲「バードランド」をカバーしてヒットさせた四人組コーラス・グループなんですが、ハーモニーがすばらしくて、このアルバムでは2曲、「ザ・クリスマス・ソング」と「聖しこの夜」をうたっていて、とうぜんこれは期待できるものと、買ったのでした。
(言うまでもないことでしょうが、ジョジョ6部、『ストーンオーシャン』に登場するジョンガリ・Aのスタンド「マンハッタン・トランスファー」の元ネタはこれです)
はじまり、「ザ・クリスマス・ソング」はマンハッタン・トランスファーの都会的なコーラスと熟練トニー・ベネットの共演。マントラの紡ぐ洗練されたハーモニーは鍵盤で弾いたかのように正確で、そこにからみあうトニー・ベネットの身体性を含んで振動するうたごえは、すべてのにんげんが肩のちからを抜いてくつろぐこの美しい夜のはじまりをまさに告げるよう。トニー・ベネットはスコア④で最大の名曲、「ホワイト・クリスマス」もうたっています。
③、「ジングルベル」はデューク・エリントン・オーケストラによる演奏ですが、このピアノはエリントン本人ではなく、彼の片腕的存在だったビリー・ストレイホーンが弾いています。
⑤も定番、「サンタが街にやってくる」は、「テイク・ファイブ」で有名なデイヴ・ブルーベック・カルテットによるもの。この選曲は、ちょっと見事だとおもう。こんなふうに優しく音を紡ごうとしたらポール・デスモンドの右に出るものはいないでしょう。演奏じたいも◎。特にデスモンドのソロは、ちょっとした名演だとおもう。
⑦「ひいらぎ飾ろう」は我らがハービー・ハンコックによってフュージョンっぽいアレンジがされています。この演奏には驚くべきことにチック・コリアも参加しています。1967年の録音なのだけど、元ネタはどこなのかなー。ここではハービーは通してアコースティック・ピアノでバックをつとめ、途中に出てくるエレクトリック・ピアノのソロがチックのようです。
⑧「ウィンター・ワンダーランド」はマーカス・ロバーツのピアノソロで、僕は原曲を知らないのですが、単純に演奏が楽しいです。ピアノという楽器のポテンシャルをぜんぶ引き出してる感じ。バウンスしてます。
⑪「聖しこの夜」は前述したようにマントラが、子供たちのコーラス隊とともに、きわめて浄らかで澄んだうたを聴かせてくれます。この夜のしめくくりにふさわしい、清潔で、透明な、聖なる音楽。
(余談ですが、僕はこの「聖しこの夜」という題名をずっと、キリストの別名「聖し子」の夜だとおもっていました…。高校生くらいまで…)
クリスマスは、すでに日本でも、日曜日の最上級。ひとびとは日々の、一年の消費をここで回復する。したがってこの日の盛り上がりにその国が文化的にどれくらい栄えているかというのが表れるといっても…単純に考えてそこまでまちがってはいないでしょう。これだけ名曲が多いのは、いかに芸術家たちが、すなわちにんげんたちが、この日に多くを感じるかということの証明だとおもう。カントもフロイトも…かたいこといわずに、楽しくやりましょう。
そう…、楽しく…、楽しくやろう。バイトも。