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(※注:ゲーム攻略サイトではありません)書店員。読んだ小説などについて書いています。基本ネタバレしてますので注意。気になる点ありましたらコメントなどで指摘していただけるとうれしいです。

ジャズとヒップホップはその音楽的発想に近いものがある…また、こいつはおかしなこと言い出しおってと思わないでください…。
でも、冗談抜きで僕は昔からこのことをおもっていました。それは、ループしたトラック(コード進行)の上で、フリースタイル(アドリブ)をするという点です。それぞれ独自のルートで進化を果たして、いまでは様々なスタイルが存在するので、まず原型について、一般化して考えてみます。

ここでいうジャズとは、吹奏楽部なんかで聴かれるスイング・ジャズではなく、モダン・ジャズのことです。言うまでもなく、ジャズは即興の音楽です。ある音階と一定のコード進行だけをたよりにドラムス、ベース、ピアノが土台を作り、その上をサックスやトランペットが自由に、思い付くままに、あるいは指の動くままに、吹きまくる。造りこんで、練習を重ねた音ではなく、たったいま生まれたばかりの生々しさと、ビートだけをたよりにそれをアンサンブルで奏でる緊張感に主眼をおいた、ひどく身体的な音楽です。ソロをとるのはもちろん管楽器だけではなく、たいていはすべての楽器にその枠が用意されています。チャーリー・パーカーやセロニアス・モンクがまだ若かったころはそんな約束事すらなく、そいじゃ、やるか、みたいな感じで演奏していたとも聞きます。完全に、奏者側の音楽だったわけです。やがてある程度の時間を経て洗練され、モダン・ジャズの原型ビ・バップはハードバップと呼ばれるカタチに発達していきます。1950年代の半ばくらいでしょうか。既
存の曲や自ら作曲したものをまず用意し、ソロをとる順番やその長さなんかを決めて、おもむろに演奏が開始されます。最初は全員で「テーマ」を演奏します。原曲にある、作曲されたメロディです。そしてそれぞれが順番にソロをとり、最後にもう一度テーマを合奏して、おしまい。これがもっとも典型的な形でしょう。ソロのバックを流れるコード進行は、テーマのものをそのまま借りて、ループします。たとえば、テーマ部でBm→G→A→Dというコードの上で合奏したのち、ドラムス、ベース、ピアノは(ドラムは関係ないか)この約束事をある程度キープしつつ、自由に弾きまくりながらバックをかため、そしてこれを何度も繰り返し、その上をソロイストがこれも好きに吹くと、つまりこういうことです。
一方、ヒップホップにおけるDJ・トラックメイキングの手法の原型は、間違いなく「二枚使い」でしょう(クール・ハークが発見した…んだったかな?)。自分の気に入ったブレイク・ビーツを含んだレコードを二枚用意し、二台のターンテーブルとミキサーを使って、同じ箇所を繰り返してループをつくる(右のレコードを鳴らしているあいだに手動で左を巻き戻し、右が終わると同時に音を左に移す…DJは耳にあてているヘッドフォンで鳴っていないほうのレコードを聴いているわけです)。ラッパーはくどいほど繰り返されるブレイク・ビーツに乗って、好きなようにフロウする。便利なマシンが次々と発明され、様々な音楽様式が取り入れられている現在でもこの「ループ」という発想は基本中の基本だし、ヒップホップの中毒性を呼ぶ部分でもある。僕はこの二つのブラック・ミュージックを見て、ジャズというのは金をかけたヒップホップなのではないかと考えるのです。既存の曲をポンと用意して、ムズカシイことは言わず、その上でとにかくやり
たいように楽しくやる、というのは、やっぱりこの音楽帯独特のものだと思うわけです。