この物語は
悪魔のような鬼教師に
小学6年の子供たちが戦いを挑んだ
一年間の記録
新聞タイトルは、
『みんなにドロボウと言われてクラス崩壊・犯人探し先生友達を帰して!!』
神田和美(志田未来)は母・章子(羽田美智子)に、なぜ開校記念日に式典に
出ていなかったのか問い詰められ、腹痛で出られなかったとごまかす。
章子が和美の顔を疑いのまなざしで覗き込む。
「ティヒ。」
「何がティヒよー。」
「いいじゃないかよ。和美がそう言ってるんだから。」と父・武(尾美としのり)。
「またそうやって甘やかすー。」
「俺は娘の言うこと信用しろって言ってんの。」
章子は夫の体に香水の匂いがすることに気づく。
武は動揺し、風呂に入ってくると逃げる。
「私の予感は当たるんだから。
言ったでしょう?あんたが頑張れば頑張るほど、状況はどんどん悲惨に
なっていくって。
やばいんじゃない?あんたのクラス。もう誰も真矢に逆らえないって感じで。」
姉・優(夏帆)は喘息の発作のせいで苦しみながらも妹にそう言う。
「みんなだって真矢の言いなりになるのは絶対嫌だと思う。」と和美。
「あまり無理しない方がいいよ。
これ以上揉めたら、今度は和美がみんなから浮いちゃうよ。」
「何言ってんの。うちのクラスみんな仲がいいんだからね。
真矢がどんなにいじめたって。」
「そうやって無理に自分に言い聞かせようとする気持ちわかるけどさ。」
優は、又悪い予感がすると心配そうだ。
学校へ向かいながら、
『もう誰も頼れないわよ。親も、先生も、友達もね。』
真矢に言われた言葉に不安になる和美。
校門で近藤校長(泉谷しげる)に
「6年3組の捜索ダンスに感動した。」と声をかけられ、答えに迷う和美。
佐藤恵里花(梶原ひかり)、田中桃(伊藤沙莉)、安藤桜(藤本更紗)に
「この前はごめんね。和美ちゃんのこと裏切ったわけじゃないんだよ。」
「真矢に脅迫されて、仕方なくダンスやっただけ。」
「今でも和美ちゃんの味方だからね。」
と言われ、和美は大喜び。
始業のベルとともに真矢がやってきた。
一通り生徒達を見渡した後、
「今日から、毎週月曜日にやっていたテストを廃止します。
これからは、毎日、一日の最後にやって、テストが全部出来た人から
順番に、帰るのを許可します。
出来ない人は、いつまでたっても、帰れません。
いくらボイコットを企てた人にそそのかされたとはいえ、
開校記念日に、全員で、私に逆らおうとした罰です。」
みんなの視線に怯える和美。
「二度とあのようなことが起こらないよう、今日からグループ分けをします。
今配ったプリントを確認して、あとで班ごとに席替えをしておくように。
もし、服装が乱れたり、けんかをしたり、何かしらトラブルを起こすような
者がいたら、そのグループの、全員の連帯責任にします。」
真矢の言葉にクラスがどよめく。
「しかたないでしょう?そうでもしないと、いつまでたっても
クラスに悪影響を及ぼす人が後を絶たないんだから。」
「先生!連帯責任って、どんなことをするんですか?」
西川浩一(酒井翔太郎)が質問する。
「今にわかります。」真矢はそう言い微笑んだ。
「各班のリーダーも選出しておきましたので、自分の班のメンバーが
問題を起こさないよう、しっかりと監視しておくように。
自分の班以外にも、よからぬ事を企む人を見つけたら、
すぐ私に知らせるように。
その人には、ご褒美を上げます。
たとえば、代表委員が三人もいる6班なんて、一番その可能性があるかも。」
真鍋由介(松川尚瑠輝)た机をバンと叩いて立ち上がる。
真矢が、みんなが由介に注目する。
「・・・ガチョーン。」
「真鍋君静かにして下さい。班の人が迷惑します。」と馬場。
「その調子よ。馬場さん。リーダーとしてがんばってね。」
「はい。」
和美は6班。
班長は馬場久子(永井杏)。
真鍋由介、進藤ひかる(福田麻由子)と一緒の班だ。
放課後、体育館の掃除をする6班。
ふざける由介に注意する久子。
「うるっせーな!開校記念日の前日に真矢にチクったの、お前だろ!?」
「知らないよ。」
「とぼけんなよ。お前、なんであんなことやろうとしたか忘れたのか!?
神田がお前のこと助けようとしてやったんだぞ!?なぁっ!」
「ちょっとやめてよ、もう。」和美が駆け寄る。
「そうよ、放っておけば。
真矢に脅迫されて、逆らえるわけないじゃない。」とひかる。
俯く久子に和美が声をかける。
「ねぇ馬場ちゃん!進藤さんに似顔絵見せてあげたら?
馬場ちゃんすごく絵が上手いんだよ。
そうだ!掃除終わったらみんなで馬場ちゃんちに行かない?」
「そんなこと言って油断させる気でしょう?
私の悪い所見つけて真矢にチクる気なんだ。」
「そんなわけないでしょ。友達になろうって約束したじゃない。」
「そんなの信じられないでしょ!
・・・無駄口叩いてないて、早く掃除して下さい。」
二人のやり取りを、黙ったまま聞くひかる。
由介も口惜しそうに唇をかみ締めた。
六月。
テストの答えを生めていく子供達。
和美は問題に考え込み、由介はテスト用紙に落書きしていく。
ひかるが解答用紙を真矢に提出する。
「全部合ってるわ。
残念ね、進藤さん。代表委員じゃなかったら、すぐ帰れたのに。
今まで私に逆らったことを謝るんなら、許してあげてもいいわよ。」
「・・・遠慮しておきます。」
「ふんっ。じゃ、みんなが終わるまで待っていなさい。」
真矢に言われ、ひかるは黙って席に戻った。
カラオケ。
「なんか、クラス全体が暗いっていうか、梅雨みたいにジメジメしちゃって。」
和美は天童しおり(原沙知絵)にクラスの雰囲気の悪さを訴え相談する。
「わかった。私から、阿久津先生に、言ってみる。」
「本当ですか!?良かった。もう天童先生しか頼る人いなくって。」
「あー、でもあまり期待されても・・・。
そうだ神田さんさぁ、あなただってクラス明るくすること出来るんじゃない?
私も神田さんといるといっつも楽しいし。
あなたの明るさっていうか、元気だけは忘れないでほしいんだ。」
気を良くした和美「歌っちゃおうかな~!」。
マイクを両手を握り、ペコリとお辞儀。
「雨にぬれながら たたずむ人がいる♪」
身振り手振りを交え、熱唱した。
音程外れてたけど(カラオケが低すぎましたね。)
表現力豊かに歌ってくれました!
図工室。
島田マリ(柳田衣里佳)は新しい財布を渋谷のキューツーでゲットしたと
松本エマ(高田彩香)、宮内里絵(仲村泉貴)に見せはしゃぎ出す。
「島田さん、松本さん、真面目にやって下さい。」と恵里花。
「何よ、リーダーだと思って偉そうに。」
「大体さ、なんであんたがウチの班のリーダーなのよ。」
「私に言われても・・・。決めたのは阿久津先生だから。」
「前から言おうと思ってたんだけど、その中途半端な髪型いつになったら
やめるの~!?」
「似合ってない。」「ダサいし。」
和美がイスの上に立ち上がる。
「歌いまーす!
お~やま~がひ~~と~つ、あ~りま~した~♪
チューリーープ さ~かさ~まに~♪
ドーナ~ツ ふ~たつ~と お~まん~じゅう~♪
ひ~げを~つけ~ も~ぐら~くん~♪
ダハー!」
和美の絵描き歌に、クラスは静まり返る。
「ちょっと何やってんの・・・。」
「私はただ、ケンカはやめて欲しいっていうか、
みんなと楽しくやりたいなーと思って。」と和美。
「はっ!?何それ!」「しかもモグラかよ!?」エマと里絵がバカにする。
「ちょっとやめなよ!
恵里花ちゃんいじめて、和美ちゃんまでいじめないで。」桃が和美を庇う。
「いじめてるつもりはないよ。」
「いじめてんじゃんかよっ!」
「みんな、班とか連帯責任のことばっか、気にしすぎだよ。
それより、休憩時間とかもっとみんなで遊ぼうよ。
真矢に怒られるからってやりたいこと我慢するのおかしいよ、やっぱ。」
「どうせ勉強サボりたいだけじゃないの?」
「そうよ。自分がいい点取れないからって、私達まで巻き込まないでくれる?」
刈谷孝子(佐々木ひかり)が言う。
西川は何も発言せずに視線を落とす。
「私はそんなつもりじゃ・・・。」
そこへ、真矢がやってきた。
「何かあったの?各班のリーダー!
一班?」
「別にありません。」と西川。
「二班。」
「・・・ありません。」と馬場。
「三班。」
「ありません。」私立受験組。
「四班。」
「ありません。」サッカー少年。
「五班。」
「・・ありません。」班の三人に睨まれ恵里花が答える。
「六班。」
「・・・神田さんが、」と馬場。
「神田さんが、どうしたの?」
「一人で騒いでいたので、注意しておきました。」
和美は席を立ち、「ごめんなさい。」と謝る。
「罰として6班は、授業が終わった後、みんなが使った物を
片付けておきなさい。
良くやったわね、馬場さん。これからも、頑張って。」
由介は真矢を睨んでいた。だが、真矢に見つめられ、
「すんません。」といつものようにおちゃらけてしまう。
「何をしてるの!早く作りなさい。時間がないわよ。」
真矢は呆然と立ち尽くす和美にそう言った。
和美を庇う友達は、もう誰もいませんでした。
お姉ちゃんの予言が、また当たりましたね。
図工室を片付ける6班の4人。
馬場が、トイレに出ていく。
「無駄な努力するの、やめとけって。」と由介。
「じゃあ、クラスがこのままでいいの?」
「だって、こんなクラスに期待してもしょうがねーじゃん。
俺が最初から言ってるみたいに諦めるのが一番だって。
真矢とはなるべく関わらないようにするの。
なんなら、今から一緒にフケちゃう?」
「あんたは卑怯よ。
調子いいことばっかり言って、都合が悪くなるとすぐ逃げ出して。
あんたなんか結局いつか真矢が言ったみたいに弱虫なだけじゃない。」
「・・・あっそ。悪かったな。
じゃ、あとはよろしくな。」由介が教室を後にする。
「ちょっと言いすぎなんじゃない?
彼の気持ちもわかってあげたら?
あなたのこと心配して言ってるんだよ。あれでも。」
「どうせ私は進藤さんと違ってバカだから。
進藤さんこそ、何でいつもそうやってクールでいられるわけ?
私、そういうの、全然わからない。」
ひかるが一瞬悲しそうな顔をした。
「ごめん。」
「別に、いいけど。」
ひかるは片付けに戻りながら、ちらっと和美のほうを見た。
神田家。
優の喘息の発作が酷く、病院に入院していた。
章子が荷物を揃え、今日は病院に泊まりこむ、と和美に言う。
「じゃ、私も行く!ママとちょっと話あるし。」
和美はそう言うが、章子は優のことでいっぱいいっぱい。
躓いてソファーに倒れこむ章子。
和美に部屋の片付けと、夫への伝言を頼むと、出かけてしまった。
翌日。
体育を追え着替えて教室に戻る女子。
和美と由介は、お互い話しかけられずにいた。
「嘘!私の財布がない!!
ちゃんとここに入れておいたんだよ。
お金はたいしたことないんだけどさ、あの財布、レアもので
もう売ってないんだよ。」島田マリが騒ぎ出す。
「誰よ犯人は!?」
「ホントはどっかにあるんじゃないの?もっとちゃんと探しなさいフー。」
由介がいつものようにおちゃらける。
「ちょっとふざけないでよ!」
「ガチョーん!」
「何よそれ。いい加減寒いこと言うのやめてくんない!」
始業のベルとともに、真矢がやってきた。
「何を騒いでいるの?」
「島田さん、本当になくなったのね、財布。」
「はい。」
「犯人はすぐ名乗り出るように。」
みんながクラスを見渡す。
「じゃあ、犯人を知っている人は?」
誰も何も言わない。
「仕方ないわね。
犯人がわかるまで、帰しませんよ、今日は。」
真矢が紙を配っていく。
「無記名でいいから、それに犯人と思う人の名前を書きなさい。
言っておくけど、もし知っていて隠している人がいたら、
盗んだ人と同罪ですからね。
休み時間に必ず書いておくように。
次の時間に回収します。」
職員室。
「阿久津先生、6年3組は休み時間も全員残っているようですが
何かありました?」近藤校長が尋ねる。
「児童の財布がなくなったんです。」
「え!?で、犯人は、見つかりました?」
「いいえ。」
「じゃ、どうするんですか?」と上野教頭(半海一晃)。
「もちろん、徹底的に犯人を捜します。」
「そんな!そんなことしてどうなるんですか?」と天童。
「このままうやむやになったら、犯人はどんどん付け上がって
同じような罪を犯すに決まっています。
それを食い止めるのが、教師として当然の義務じゃないですか。」
「阿久津先生のことですから、きちんと対応していただけると
思いますけどね。」と校長。
「全員居残りさせるとか、体罰とかで問題にならないように
注意していただければいいですが。」と教頭。
「最近の6年3組は、すごくがんばっていると思いますよ。
授業中も静かだし、遅刻する者も少なくなったようです。
クラスの団結力も固まっているようだしね。
お二人も、阿久津先生に負けないように、自分のクラスのこと、
よろしくお願いしますよ。」
「参ったな・・。頑張ります。」と並木平三郎(内藤剛志)。
天童はまだ何か言い足りなさそうだ。
「遠慮しなくていいんですよ。言いたいことがあるのなら。」
「本当に、犯人探しなどして大丈夫なんでしょうか?
並木先生ならどうされます?」
「え!?・・・難しいなぁ。
昔はよく、誰にも言わないからとか言って、全員に目をつぶらせ、
手を挙げさせました。
それでも犯人が名乗りあげるわけでもなく、
ほとんどのやつが、薄目、開けてたりして。」並木が笑う。
「私はやっぱり、犯人探しはするべきではないと思います。
見つけても、その子が傷つくだけだから。」
「じゃあ、どうするの?」
「全員の前で話します。
もし、盗んだ人がいるなら、盗まれた人の気持ちを考えて、
もう二度とこんなことはしないでって。」
「まぁ、そういうやり方もあると思いますね。」と並木。
「事なかれ主義というか、奇麗事の典型ね。
人の善意に訴えるってわけ?
それで何とかなるんなら、戦争なんかとっくになくなっています。」
「私は子供達の自主性を育てたいって、」
「自主性や自由とか言って大人が放っておいたら、
子供は自由と非常識を混同するようになるだけです。
悪いことは何なのか、わからない人間になるだけです。
彼らに一番教えなければならないことは、真面目に勉強することと、
目上の者にはちゃんと従うこと、
そして、罪を犯したら、必ず罰を与えられるという恐怖感なんです。
あなたの言ってるような、うわべだけの優しさなんて必要ありません。」
「私は、みんなが仲良くしてくれることが一番嬉しいんです!」
「ふん。うちのクラスの神田和美みたいなことを言うのね。
そういえばあなた達、カラオケボックスかどこかで仲良くしている
みたいだけど。
他のクラスの児童と仲良くしていることが知られたら、
あなたのクラスの児童や保護者は、何て思うかしらね。」
真矢にカラオケのことを知られていたことに驚き、天童は大きなため息をつく。
真矢は自分の信念に基づいて、突き進んでいるんですね。
教育者のプロフェッショナル。
やり方は正しいかどうか置いといて、そう感じました。
回収したメモを生徒達の前で一枚一枚見ていく真矢。
白紙、『わかりません。』
ウンコの絵が出てきたとき、真矢は由介を見る。
由介がニヤっと笑う。
すごい絵!(汗)由介なりの、ささやかな抵抗なんでしょう。
「結局、犯人に関する情報は何もありませんでした。
そこで今回、島田さんが財布を盗まれた件に関しては・・・
クラス全体の連帯責任にします。
罰として全員に今から反省文を書いてもらいます。
もちろん、宿題も増やします。
それから、これからは全員で、代表委員と同じ雑用をやってもらいます。
今まで特権があった人も、全て剥奪します。」
「そんなの不公平です。」
「僕は関係ないのに!」
「連帯責任というのは、そういうことです。」
「でも何で私まで責任取らなきゃいけないんですか。
被害者なんですよ、こっちは!」と島田マリ。
「同時に、あなたもクラスの一員です。」
「誰だよ、やったのは。」
「ドロボウは名乗りでろ!」
「」
「迷惑だから、名乗り出なさいよ!」と桃も言う。
「本当はあなたなんじゃないの?」
「ちょっとそれ、どういう意味よ!」
桃が怒って彼女の筆箱を床に落とす。
クラスは大騒ぎになる。その様子を静かに見つめる真矢。
「私、怪しいヤツ知ってます!」
一人の生徒が手を挙げる。
その手が、一人の生徒を指差す。
「ドロボウ顔じゃない。」
「どんな顔だよっ!」
「あいつの荷物調べて下さい、先生!」
「そっちこそ、本当に失くしたのかよ?」
「どういう意味よ!」
「ちょっと見せなさいよ、カバン!」
「潔白なら見せればいい。」と西川。
クラスはまた大騒ぎに。
「ちょっとやめてよ、みんな!!
クラスメイトのこと疑うのはよくないよ、絶対。」
「とかなんとか言って、あんたが一番怪しいのよ!
体育の時、最後に教室にいたのは代表委員のあんたたちじゃない!」
「ふざけんなよっ!俺たちは前の授業の片付けをしてた
だけじゃないか!」と由介。
「どうだか。」
「自分達で雑用係やるのが嫌だから、こうやって問題起こして、
わざと全員の連帯責任狙ったんじゃないの?」
「誰がそんな面倒くさいことするかよ。」
「先生、とにかく僕達だけでも、許してもらえませんか?」と西川。
「お願いします。私達が犯人の訳ないじゃないですか。」と
刈谷孝子(佐々木ひかり)。
「雑用なんかやってる暇ないんです。塾あるし。」
「何よ偉そうに!」
「偉そうなのはあんたたちでしょ!」
「お前らみたいにエリートぶってるやつらに限って、
裏じゃとんでもないことしてるんだ。最低!」
「くだらないこと言うなよ!」と西川。
「そっちこそ、少しは反省したら?
この前先生が言ってたでしょ。あんた達みたいな怠け者のせいで、」と刈谷。
「誰が怠け者だよ!」
「暴力反対!」
「あんたでしょ、犯人!」
「お前さっきから何言ってるんだよ!」
「暴力反対!」
「勉強している環境を壊さないで下さい!」
「犯罪者は名乗りでろ!」
大騒ぎになるクラス。
もみ合いになる生徒達、
ひかるは本を読みながらクラスを静観、
和美は悲痛な声で必死に友達を止めようとし・・・
そして阿久津真矢は、黙ってただ生徒達を見つめていた。
その表情に、うっすらと微笑を浮かべて。
はぁ~。生徒達の心に溜まった膿が、噴出した、というシーンでしょうか。
『仲が良い』と思っていた友達、クラスメートは、実は本当はこんな風に
思っていたんですね。
こんなに言いたい放題言い合って、友達関係、修復出来るのかな・・・。
和美は2階ベランダから下を見ると、様子のおかしい恵理花を姿に気づく。
恵理花は人の気配に気を配り、誰もいないことを確認すると、
ポケットから島田マリの財布を取り出した。
それを、そっと置こうとする。
和美はその姿に、持っていたゴミ袋を落とす。
「何で!?」
「・・・別にお金が欲しかったわけじゃないよ。
だって島田、この財布レア物だって見せびらかしてたじゃん。
なんかむかついて。」
「どうすんの?」
「どうしよう。こんな大騒ぎになっちゃって。」
「やっぱ謝るしかないよ。」
「それだけは絶対嫌!
真矢にどんな罰受けるかわかんないし、
島田たちにだって何されるかわかんない!」
「じゃ、どうすんの?」
「・・・そうだ!
和美ちゃん返しておいてくれない?
次の時間音楽だし、みんながいなくなったあとにこっそりさ。」
「無理だよ、そんな。」
「大丈夫だよ。和美ちゃん雑用係だし、何かやってる振りすれば
怪しまれないし。」
「でも・・・」
「お願い!親友でしょ。恵理花のこと、助けて。ね?お願い!」
恵理花はそう言い、財布を突き出した。
罰への恐怖感が、事態を悪い方向へと導いていきます。
真矢の信念は、正しくない、ということなのかな。
みんなが音楽室へと移動していく。
恵理花がそっと両手を合わせ、音楽室へと走っていく。
誰もいなくなった教室。和美はそっと財布を取り出し、島田の机へと向かう。
カバンの中に入れていたその時、馬場が教室に戻ってきた。
和美はあまりの驚きに、持っていた財布を放り出す。財布は宙を舞い、水槽の中へ。
「違うの馬場ちゃん!」両手を振りながら必死に訴える和美。
「先生!」馬場が走り出した。
馬場を追い、走っていた和美が急に立ち止まる。
そこには、真矢と馬場の黒い影。
「どうしたの?」表情のない真矢と馬場が立ち尽くす。
教室。
生徒達は和美を取り囲み、睨みつける。
「何でこんなことをしたの?」と真矢。
「私、盗ってません。」
「じゃあ、何で持っていたの?島田さんのお財布を。」
「・・・友達に頼まれたんです。返しておいてくれって。」
「誰なの?その友達って。l答えなさい。」
「・・・言えません。」
「どうして?」
「友達、裏切りたくないから。」
「本当は全部作り話なんじゃないの?」
「そんなことありません!」
「じゃあ何で何も言わないの?その友達は、今。」
「・・・それは・・・。わかりません。」
真矢がクラスを見渡す。
「仕方ないわね。その友達が名乗り出ない以上、あなたがやったとみなして
罰を与えます。
同じ班の人も連帯責任になりますからね。
まずはみんなに謝りなさい。迷惑をかけたんだから。」
「・・・」
「早くしなさい。」
「ごめんなさい。」和美が頭を下げる。
「ごめんなさい。」と右を向いて。
「ごめんなさい。」と後ろを向いて。
「ごめんなさい。」と左を向いて。
放課後、雨の中掃除をする由介。
和美、ひかるはろうかのモップ掛けをしていた。
友達と一緒の恵理花が和美の様子をを見つめ、そして足早に帰っていく。
「最っ低!」馬場が和美に文句を言う。
「信じて。私やってないんだよ、本当に。」和美がひかるに言う。
「私が信じたって、他のやつらは誰も信じないよ。
もうあなたが何を言っても、誰も聞いてくれないんじゃない?これから。」
ひかるはそう言い、和美の前から立ち去る。
「俺もう当分学校来ないから。
マジで嫌になったよ、うちのクラス。」
校庭の掃除を終えた由介がそう言い、帰っていった。
帰り道、和美は天童に会い、カラオケに行こうと誘う。
「当分行くのやめようと思って。 給料日前で苦しくって。」と天童。
「そうですか・・・。」
和美は天童に挨拶をし、一人通学路を歩いていく。
公衆電話を見つめた和美は・・・。
「何?こんなところに呼び出して。」と恵理花。
「お願い。自首して、恵理花ちゃん。」
「無理だよっ。」
「どうして?」
「和美ちゃんがいけないんだよ。余計なことするから。」
「どういう意味?」
「あのまま財布捨ててれば、こんなことにならなかったのに。」
「そんな・・・。」
そこへ、桃と桜がやってきた。
「和美ちゃんが私のこと犯人扱いするの。」
「うそ!ひっどい!」
「恵理花ちゃんがそんなことするはずないでしょう!?」
「もういい。
和美ちゃん、悪いけどもう絶交だから!」
「恵理花ちゃん・・・。」
三人は和美を置いて行ってしまう。
4人で過ごした楽しかった日を思い浮かべ、和美はトボトボと歩き出す。
家に戻ると、章子が武に部下から届いたラブラブ・メールを問い詰めていた。
武はいたずらだ、と説明している。
両親の言い争いに、和美は家を飛び出していく。
雨が降る中、傘も差さずに走る和美。
だが、和美の足が急に止る。真矢が和美を見下ろしていた。
「いい加減目覚めなさい。
もうあなたの味方は、誰もいないのよ。
私の言うことを大人しく聞いていれば、泣かなくて済むの。」
「私・・・私、泣きませんから。絶対に泣きませんから。」
和美はそう言い、家へと帰っていった。
退院した優を見舞う和美。
「大丈夫、具合は?」
「和美の顔見たらちょっと元気でた。」
「よかった!」
「・・・どうかした?」
「ううん、別に。
じゃーもっと元気にしてあげるね。」
和美はノートを取り出し、絵描き歌を優に歌って見せる。
和美の表情を見つめる優。
「ダッハー♪」
「なにこれー!なんかもぐらっていうよりあざらしって感じ?」
優が楽しそうに笑う。
「えー。そうかな。」
「和美?」
「なに?」
「何かあったら、いつでも言いなよ。」
「え?」
「和美をいじめるようなやつは、ぶっ飛ばしてやるから。」
「うっ。」
「体弱くて情けないけどさ、私はあんたの味方だからね。いつでも。」
姉の言葉に俯く和美。
「和美?」優が顔を覗き込む。
言葉にならない小さな叫び声を上げ、和美が優に抱き、そして泣いた。
真矢は和美の住むマンションを見つめ、そして小さく微笑んだ。
悪魔のような鬼教師に
小学6年の子供たちが戦いを挑んだ
一年間の記録
新聞タイトルは、
『みんなにドロボウと言われてクラス崩壊・犯人探し先生友達を帰して!!』
神田和美(志田未来)は母・章子(羽田美智子)に、なぜ開校記念日に式典に
出ていなかったのか問い詰められ、腹痛で出られなかったとごまかす。
章子が和美の顔を疑いのまなざしで覗き込む。
「ティヒ。」
「何がティヒよー。」
「いいじゃないかよ。和美がそう言ってるんだから。」と父・武(尾美としのり)。
「またそうやって甘やかすー。」
「俺は娘の言うこと信用しろって言ってんの。」
章子は夫の体に香水の匂いがすることに気づく。
武は動揺し、風呂に入ってくると逃げる。
「私の予感は当たるんだから。
言ったでしょう?あんたが頑張れば頑張るほど、状況はどんどん悲惨に
なっていくって。
やばいんじゃない?あんたのクラス。もう誰も真矢に逆らえないって感じで。」
姉・優(夏帆)は喘息の発作のせいで苦しみながらも妹にそう言う。
「みんなだって真矢の言いなりになるのは絶対嫌だと思う。」と和美。
「あまり無理しない方がいいよ。
これ以上揉めたら、今度は和美がみんなから浮いちゃうよ。」
「何言ってんの。うちのクラスみんな仲がいいんだからね。
真矢がどんなにいじめたって。」
「そうやって無理に自分に言い聞かせようとする気持ちわかるけどさ。」
優は、又悪い予感がすると心配そうだ。
学校へ向かいながら、
『もう誰も頼れないわよ。親も、先生も、友達もね。』
真矢に言われた言葉に不安になる和美。
校門で近藤校長(泉谷しげる)に
「6年3組の捜索ダンスに感動した。」と声をかけられ、答えに迷う和美。
佐藤恵里花(梶原ひかり)、田中桃(伊藤沙莉)、安藤桜(藤本更紗)に
「この前はごめんね。和美ちゃんのこと裏切ったわけじゃないんだよ。」
「真矢に脅迫されて、仕方なくダンスやっただけ。」
「今でも和美ちゃんの味方だからね。」
と言われ、和美は大喜び。
始業のベルとともに真矢がやってきた。
一通り生徒達を見渡した後、
「今日から、毎週月曜日にやっていたテストを廃止します。
これからは、毎日、一日の最後にやって、テストが全部出来た人から
順番に、帰るのを許可します。
出来ない人は、いつまでたっても、帰れません。
いくらボイコットを企てた人にそそのかされたとはいえ、
開校記念日に、全員で、私に逆らおうとした罰です。」
みんなの視線に怯える和美。
「二度とあのようなことが起こらないよう、今日からグループ分けをします。
今配ったプリントを確認して、あとで班ごとに席替えをしておくように。
もし、服装が乱れたり、けんかをしたり、何かしらトラブルを起こすような
者がいたら、そのグループの、全員の連帯責任にします。」
真矢の言葉にクラスがどよめく。
「しかたないでしょう?そうでもしないと、いつまでたっても
クラスに悪影響を及ぼす人が後を絶たないんだから。」
「先生!連帯責任って、どんなことをするんですか?」
西川浩一(酒井翔太郎)が質問する。
「今にわかります。」真矢はそう言い微笑んだ。
「各班のリーダーも選出しておきましたので、自分の班のメンバーが
問題を起こさないよう、しっかりと監視しておくように。
自分の班以外にも、よからぬ事を企む人を見つけたら、
すぐ私に知らせるように。
その人には、ご褒美を上げます。
たとえば、代表委員が三人もいる6班なんて、一番その可能性があるかも。」
真鍋由介(松川尚瑠輝)た机をバンと叩いて立ち上がる。
真矢が、みんなが由介に注目する。
「・・・ガチョーン。」
「真鍋君静かにして下さい。班の人が迷惑します。」と馬場。
「その調子よ。馬場さん。リーダーとしてがんばってね。」
「はい。」
和美は6班。
班長は馬場久子(永井杏)。
真鍋由介、進藤ひかる(福田麻由子)と一緒の班だ。
放課後、体育館の掃除をする6班。
ふざける由介に注意する久子。
「うるっせーな!開校記念日の前日に真矢にチクったの、お前だろ!?」
「知らないよ。」
「とぼけんなよ。お前、なんであんなことやろうとしたか忘れたのか!?
神田がお前のこと助けようとしてやったんだぞ!?なぁっ!」
「ちょっとやめてよ、もう。」和美が駆け寄る。
「そうよ、放っておけば。
真矢に脅迫されて、逆らえるわけないじゃない。」とひかる。
俯く久子に和美が声をかける。
「ねぇ馬場ちゃん!進藤さんに似顔絵見せてあげたら?
馬場ちゃんすごく絵が上手いんだよ。
そうだ!掃除終わったらみんなで馬場ちゃんちに行かない?」
「そんなこと言って油断させる気でしょう?
私の悪い所見つけて真矢にチクる気なんだ。」
「そんなわけないでしょ。友達になろうって約束したじゃない。」
「そんなの信じられないでしょ!
・・・無駄口叩いてないて、早く掃除して下さい。」
二人のやり取りを、黙ったまま聞くひかる。
由介も口惜しそうに唇をかみ締めた。
六月。
テストの答えを生めていく子供達。
和美は問題に考え込み、由介はテスト用紙に落書きしていく。
ひかるが解答用紙を真矢に提出する。
「全部合ってるわ。
残念ね、進藤さん。代表委員じゃなかったら、すぐ帰れたのに。
今まで私に逆らったことを謝るんなら、許してあげてもいいわよ。」
「・・・遠慮しておきます。」
「ふんっ。じゃ、みんなが終わるまで待っていなさい。」
真矢に言われ、ひかるは黙って席に戻った。
カラオケ。
「なんか、クラス全体が暗いっていうか、梅雨みたいにジメジメしちゃって。」
和美は天童しおり(原沙知絵)にクラスの雰囲気の悪さを訴え相談する。
「わかった。私から、阿久津先生に、言ってみる。」
「本当ですか!?良かった。もう天童先生しか頼る人いなくって。」
「あー、でもあまり期待されても・・・。
そうだ神田さんさぁ、あなただってクラス明るくすること出来るんじゃない?
私も神田さんといるといっつも楽しいし。
あなたの明るさっていうか、元気だけは忘れないでほしいんだ。」
気を良くした和美「歌っちゃおうかな~!」。
マイクを両手を握り、ペコリとお辞儀。
「雨にぬれながら たたずむ人がいる♪」
身振り手振りを交え、熱唱した。
音程外れてたけど(カラオケが低すぎましたね。)
表現力豊かに歌ってくれました!
図工室。
島田マリ(柳田衣里佳)は新しい財布を渋谷のキューツーでゲットしたと
松本エマ(高田彩香)、宮内里絵(仲村泉貴)に見せはしゃぎ出す。
「島田さん、松本さん、真面目にやって下さい。」と恵里花。
「何よ、リーダーだと思って偉そうに。」
「大体さ、なんであんたがウチの班のリーダーなのよ。」
「私に言われても・・・。決めたのは阿久津先生だから。」
「前から言おうと思ってたんだけど、その中途半端な髪型いつになったら
やめるの~!?」
「似合ってない。」「ダサいし。」
和美がイスの上に立ち上がる。
「歌いまーす!
お~やま~がひ~~と~つ、あ~りま~した~♪
チューリーープ さ~かさ~まに~♪
ドーナ~ツ ふ~たつ~と お~まん~じゅう~♪
ひ~げを~つけ~ も~ぐら~くん~♪
ダハー!」
和美の絵描き歌に、クラスは静まり返る。
「ちょっと何やってんの・・・。」
「私はただ、ケンカはやめて欲しいっていうか、
みんなと楽しくやりたいなーと思って。」と和美。
「はっ!?何それ!」「しかもモグラかよ!?」エマと里絵がバカにする。
「ちょっとやめなよ!
恵里花ちゃんいじめて、和美ちゃんまでいじめないで。」桃が和美を庇う。
「いじめてるつもりはないよ。」
「いじめてんじゃんかよっ!」
「みんな、班とか連帯責任のことばっか、気にしすぎだよ。
それより、休憩時間とかもっとみんなで遊ぼうよ。
真矢に怒られるからってやりたいこと我慢するのおかしいよ、やっぱ。」
「どうせ勉強サボりたいだけじゃないの?」
「そうよ。自分がいい点取れないからって、私達まで巻き込まないでくれる?」
刈谷孝子(佐々木ひかり)が言う。
西川は何も発言せずに視線を落とす。
「私はそんなつもりじゃ・・・。」
そこへ、真矢がやってきた。
「何かあったの?各班のリーダー!
一班?」
「別にありません。」と西川。
「二班。」
「・・・ありません。」と馬場。
「三班。」
「ありません。」私立受験組。
「四班。」
「ありません。」サッカー少年。
「五班。」
「・・ありません。」班の三人に睨まれ恵里花が答える。
「六班。」
「・・・神田さんが、」と馬場。
「神田さんが、どうしたの?」
「一人で騒いでいたので、注意しておきました。」
和美は席を立ち、「ごめんなさい。」と謝る。
「罰として6班は、授業が終わった後、みんなが使った物を
片付けておきなさい。
良くやったわね、馬場さん。これからも、頑張って。」
由介は真矢を睨んでいた。だが、真矢に見つめられ、
「すんません。」といつものようにおちゃらけてしまう。
「何をしてるの!早く作りなさい。時間がないわよ。」
真矢は呆然と立ち尽くす和美にそう言った。
和美を庇う友達は、もう誰もいませんでした。
お姉ちゃんの予言が、また当たりましたね。
図工室を片付ける6班の4人。
馬場が、トイレに出ていく。
「無駄な努力するの、やめとけって。」と由介。
「じゃあ、クラスがこのままでいいの?」
「だって、こんなクラスに期待してもしょうがねーじゃん。
俺が最初から言ってるみたいに諦めるのが一番だって。
真矢とはなるべく関わらないようにするの。
なんなら、今から一緒にフケちゃう?」
「あんたは卑怯よ。
調子いいことばっかり言って、都合が悪くなるとすぐ逃げ出して。
あんたなんか結局いつか真矢が言ったみたいに弱虫なだけじゃない。」
「・・・あっそ。悪かったな。
じゃ、あとはよろしくな。」由介が教室を後にする。
「ちょっと言いすぎなんじゃない?
彼の気持ちもわかってあげたら?
あなたのこと心配して言ってるんだよ。あれでも。」
「どうせ私は進藤さんと違ってバカだから。
進藤さんこそ、何でいつもそうやってクールでいられるわけ?
私、そういうの、全然わからない。」
ひかるが一瞬悲しそうな顔をした。
「ごめん。」
「別に、いいけど。」
ひかるは片付けに戻りながら、ちらっと和美のほうを見た。
神田家。
優の喘息の発作が酷く、病院に入院していた。
章子が荷物を揃え、今日は病院に泊まりこむ、と和美に言う。
「じゃ、私も行く!ママとちょっと話あるし。」
和美はそう言うが、章子は優のことでいっぱいいっぱい。
躓いてソファーに倒れこむ章子。
和美に部屋の片付けと、夫への伝言を頼むと、出かけてしまった。
翌日。
体育を追え着替えて教室に戻る女子。
和美と由介は、お互い話しかけられずにいた。
「嘘!私の財布がない!!
ちゃんとここに入れておいたんだよ。
お金はたいしたことないんだけどさ、あの財布、レアもので
もう売ってないんだよ。」島田マリが騒ぎ出す。
「誰よ犯人は!?」
「ホントはどっかにあるんじゃないの?もっとちゃんと探しなさいフー。」
由介がいつものようにおちゃらける。
「ちょっとふざけないでよ!」
「ガチョーん!」
「何よそれ。いい加減寒いこと言うのやめてくんない!」
始業のベルとともに、真矢がやってきた。
「何を騒いでいるの?」
「島田さん、本当になくなったのね、財布。」
「はい。」
「犯人はすぐ名乗り出るように。」
みんながクラスを見渡す。
「じゃあ、犯人を知っている人は?」
誰も何も言わない。
「仕方ないわね。
犯人がわかるまで、帰しませんよ、今日は。」
真矢が紙を配っていく。
「無記名でいいから、それに犯人と思う人の名前を書きなさい。
言っておくけど、もし知っていて隠している人がいたら、
盗んだ人と同罪ですからね。
休み時間に必ず書いておくように。
次の時間に回収します。」
職員室。
「阿久津先生、6年3組は休み時間も全員残っているようですが
何かありました?」近藤校長が尋ねる。
「児童の財布がなくなったんです。」
「え!?で、犯人は、見つかりました?」
「いいえ。」
「じゃ、どうするんですか?」と上野教頭(半海一晃)。
「もちろん、徹底的に犯人を捜します。」
「そんな!そんなことしてどうなるんですか?」と天童。
「このままうやむやになったら、犯人はどんどん付け上がって
同じような罪を犯すに決まっています。
それを食い止めるのが、教師として当然の義務じゃないですか。」
「阿久津先生のことですから、きちんと対応していただけると
思いますけどね。」と校長。
「全員居残りさせるとか、体罰とかで問題にならないように
注意していただければいいですが。」と教頭。
「最近の6年3組は、すごくがんばっていると思いますよ。
授業中も静かだし、遅刻する者も少なくなったようです。
クラスの団結力も固まっているようだしね。
お二人も、阿久津先生に負けないように、自分のクラスのこと、
よろしくお願いしますよ。」
「参ったな・・。頑張ります。」と並木平三郎(内藤剛志)。
天童はまだ何か言い足りなさそうだ。
「遠慮しなくていいんですよ。言いたいことがあるのなら。」
「本当に、犯人探しなどして大丈夫なんでしょうか?
並木先生ならどうされます?」
「え!?・・・難しいなぁ。
昔はよく、誰にも言わないからとか言って、全員に目をつぶらせ、
手を挙げさせました。
それでも犯人が名乗りあげるわけでもなく、
ほとんどのやつが、薄目、開けてたりして。」並木が笑う。
「私はやっぱり、犯人探しはするべきではないと思います。
見つけても、その子が傷つくだけだから。」
「じゃあ、どうするの?」
「全員の前で話します。
もし、盗んだ人がいるなら、盗まれた人の気持ちを考えて、
もう二度とこんなことはしないでって。」
「まぁ、そういうやり方もあると思いますね。」と並木。
「事なかれ主義というか、奇麗事の典型ね。
人の善意に訴えるってわけ?
それで何とかなるんなら、戦争なんかとっくになくなっています。」
「私は子供達の自主性を育てたいって、」
「自主性や自由とか言って大人が放っておいたら、
子供は自由と非常識を混同するようになるだけです。
悪いことは何なのか、わからない人間になるだけです。
彼らに一番教えなければならないことは、真面目に勉強することと、
目上の者にはちゃんと従うこと、
そして、罪を犯したら、必ず罰を与えられるという恐怖感なんです。
あなたの言ってるような、うわべだけの優しさなんて必要ありません。」
「私は、みんなが仲良くしてくれることが一番嬉しいんです!」
「ふん。うちのクラスの神田和美みたいなことを言うのね。
そういえばあなた達、カラオケボックスかどこかで仲良くしている
みたいだけど。
他のクラスの児童と仲良くしていることが知られたら、
あなたのクラスの児童や保護者は、何て思うかしらね。」
真矢にカラオケのことを知られていたことに驚き、天童は大きなため息をつく。
真矢は自分の信念に基づいて、突き進んでいるんですね。
教育者のプロフェッショナル。
やり方は正しいかどうか置いといて、そう感じました。
回収したメモを生徒達の前で一枚一枚見ていく真矢。
白紙、『わかりません。』
ウンコの絵が出てきたとき、真矢は由介を見る。
由介がニヤっと笑う。
すごい絵!(汗)由介なりの、ささやかな抵抗なんでしょう。
「結局、犯人に関する情報は何もありませんでした。
そこで今回、島田さんが財布を盗まれた件に関しては・・・
クラス全体の連帯責任にします。
罰として全員に今から反省文を書いてもらいます。
もちろん、宿題も増やします。
それから、これからは全員で、代表委員と同じ雑用をやってもらいます。
今まで特権があった人も、全て剥奪します。」
「そんなの不公平です。」
「僕は関係ないのに!」
「連帯責任というのは、そういうことです。」
「でも何で私まで責任取らなきゃいけないんですか。
被害者なんですよ、こっちは!」と島田マリ。
「同時に、あなたもクラスの一員です。」
「誰だよ、やったのは。」
「ドロボウは名乗りでろ!」
「」
「迷惑だから、名乗り出なさいよ!」と桃も言う。
「本当はあなたなんじゃないの?」
「ちょっとそれ、どういう意味よ!」
桃が怒って彼女の筆箱を床に落とす。
クラスは大騒ぎになる。その様子を静かに見つめる真矢。
「私、怪しいヤツ知ってます!」
一人の生徒が手を挙げる。
その手が、一人の生徒を指差す。
「ドロボウ顔じゃない。」
「どんな顔だよっ!」
「あいつの荷物調べて下さい、先生!」
「そっちこそ、本当に失くしたのかよ?」
「どういう意味よ!」
「ちょっと見せなさいよ、カバン!」
「潔白なら見せればいい。」と西川。
クラスはまた大騒ぎに。
「ちょっとやめてよ、みんな!!
クラスメイトのこと疑うのはよくないよ、絶対。」
「とかなんとか言って、あんたが一番怪しいのよ!
体育の時、最後に教室にいたのは代表委員のあんたたちじゃない!」
「ふざけんなよっ!俺たちは前の授業の片付けをしてた
だけじゃないか!」と由介。
「どうだか。」
「自分達で雑用係やるのが嫌だから、こうやって問題起こして、
わざと全員の連帯責任狙ったんじゃないの?」
「誰がそんな面倒くさいことするかよ。」
「先生、とにかく僕達だけでも、許してもらえませんか?」と西川。
「お願いします。私達が犯人の訳ないじゃないですか。」と
刈谷孝子(佐々木ひかり)。
「雑用なんかやってる暇ないんです。塾あるし。」
「何よ偉そうに!」
「偉そうなのはあんたたちでしょ!」
「お前らみたいにエリートぶってるやつらに限って、
裏じゃとんでもないことしてるんだ。最低!」
「くだらないこと言うなよ!」と西川。
「そっちこそ、少しは反省したら?
この前先生が言ってたでしょ。あんた達みたいな怠け者のせいで、」と刈谷。
「誰が怠け者だよ!」
「暴力反対!」
「あんたでしょ、犯人!」
「お前さっきから何言ってるんだよ!」
「暴力反対!」
「勉強している環境を壊さないで下さい!」
「犯罪者は名乗りでろ!」
大騒ぎになるクラス。
もみ合いになる生徒達、
ひかるは本を読みながらクラスを静観、
和美は悲痛な声で必死に友達を止めようとし・・・
そして阿久津真矢は、黙ってただ生徒達を見つめていた。
その表情に、うっすらと微笑を浮かべて。
はぁ~。生徒達の心に溜まった膿が、噴出した、というシーンでしょうか。
『仲が良い』と思っていた友達、クラスメートは、実は本当はこんな風に
思っていたんですね。
こんなに言いたい放題言い合って、友達関係、修復出来るのかな・・・。
和美は2階ベランダから下を見ると、様子のおかしい恵理花を姿に気づく。
恵理花は人の気配に気を配り、誰もいないことを確認すると、
ポケットから島田マリの財布を取り出した。
それを、そっと置こうとする。
和美はその姿に、持っていたゴミ袋を落とす。
「何で!?」
「・・・別にお金が欲しかったわけじゃないよ。
だって島田、この財布レア物だって見せびらかしてたじゃん。
なんかむかついて。」
「どうすんの?」
「どうしよう。こんな大騒ぎになっちゃって。」
「やっぱ謝るしかないよ。」
「それだけは絶対嫌!
真矢にどんな罰受けるかわかんないし、
島田たちにだって何されるかわかんない!」
「じゃ、どうすんの?」
「・・・そうだ!
和美ちゃん返しておいてくれない?
次の時間音楽だし、みんながいなくなったあとにこっそりさ。」
「無理だよ、そんな。」
「大丈夫だよ。和美ちゃん雑用係だし、何かやってる振りすれば
怪しまれないし。」
「でも・・・」
「お願い!親友でしょ。恵理花のこと、助けて。ね?お願い!」
恵理花はそう言い、財布を突き出した。
罰への恐怖感が、事態を悪い方向へと導いていきます。
真矢の信念は、正しくない、ということなのかな。
みんなが音楽室へと移動していく。
恵理花がそっと両手を合わせ、音楽室へと走っていく。
誰もいなくなった教室。和美はそっと財布を取り出し、島田の机へと向かう。
カバンの中に入れていたその時、馬場が教室に戻ってきた。
和美はあまりの驚きに、持っていた財布を放り出す。財布は宙を舞い、水槽の中へ。
「違うの馬場ちゃん!」両手を振りながら必死に訴える和美。
「先生!」馬場が走り出した。
馬場を追い、走っていた和美が急に立ち止まる。
そこには、真矢と馬場の黒い影。
「どうしたの?」表情のない真矢と馬場が立ち尽くす。
教室。
生徒達は和美を取り囲み、睨みつける。
「何でこんなことをしたの?」と真矢。
「私、盗ってません。」
「じゃあ、何で持っていたの?島田さんのお財布を。」
「・・・友達に頼まれたんです。返しておいてくれって。」
「誰なの?その友達って。l答えなさい。」
「・・・言えません。」
「どうして?」
「友達、裏切りたくないから。」
「本当は全部作り話なんじゃないの?」
「そんなことありません!」
「じゃあ何で何も言わないの?その友達は、今。」
「・・・それは・・・。わかりません。」
真矢がクラスを見渡す。
「仕方ないわね。その友達が名乗り出ない以上、あなたがやったとみなして
罰を与えます。
同じ班の人も連帯責任になりますからね。
まずはみんなに謝りなさい。迷惑をかけたんだから。」
「・・・」
「早くしなさい。」
「ごめんなさい。」和美が頭を下げる。
「ごめんなさい。」と右を向いて。
「ごめんなさい。」と後ろを向いて。
「ごめんなさい。」と左を向いて。
放課後、雨の中掃除をする由介。
和美、ひかるはろうかのモップ掛けをしていた。
友達と一緒の恵理花が和美の様子をを見つめ、そして足早に帰っていく。
「最っ低!」馬場が和美に文句を言う。
「信じて。私やってないんだよ、本当に。」和美がひかるに言う。
「私が信じたって、他のやつらは誰も信じないよ。
もうあなたが何を言っても、誰も聞いてくれないんじゃない?これから。」
ひかるはそう言い、和美の前から立ち去る。
「俺もう当分学校来ないから。
マジで嫌になったよ、うちのクラス。」
校庭の掃除を終えた由介がそう言い、帰っていった。
帰り道、和美は天童に会い、カラオケに行こうと誘う。
「当分行くのやめようと思って。 給料日前で苦しくって。」と天童。
「そうですか・・・。」
和美は天童に挨拶をし、一人通学路を歩いていく。
公衆電話を見つめた和美は・・・。
「何?こんなところに呼び出して。」と恵理花。
「お願い。自首して、恵理花ちゃん。」
「無理だよっ。」
「どうして?」
「和美ちゃんがいけないんだよ。余計なことするから。」
「どういう意味?」
「あのまま財布捨ててれば、こんなことにならなかったのに。」
「そんな・・・。」
そこへ、桃と桜がやってきた。
「和美ちゃんが私のこと犯人扱いするの。」
「うそ!ひっどい!」
「恵理花ちゃんがそんなことするはずないでしょう!?」
「もういい。
和美ちゃん、悪いけどもう絶交だから!」
「恵理花ちゃん・・・。」
三人は和美を置いて行ってしまう。
4人で過ごした楽しかった日を思い浮かべ、和美はトボトボと歩き出す。
家に戻ると、章子が武に部下から届いたラブラブ・メールを問い詰めていた。
武はいたずらだ、と説明している。
両親の言い争いに、和美は家を飛び出していく。
雨が降る中、傘も差さずに走る和美。
だが、和美の足が急に止る。真矢が和美を見下ろしていた。
「いい加減目覚めなさい。
もうあなたの味方は、誰もいないのよ。
私の言うことを大人しく聞いていれば、泣かなくて済むの。」
「私・・・私、泣きませんから。絶対に泣きませんから。」
和美はそう言い、家へと帰っていった。
退院した優を見舞う和美。
「大丈夫、具合は?」
「和美の顔見たらちょっと元気でた。」
「よかった!」
「・・・どうかした?」
「ううん、別に。
じゃーもっと元気にしてあげるね。」
和美はノートを取り出し、絵描き歌を優に歌って見せる。
和美の表情を見つめる優。
「ダッハー♪」
「なにこれー!なんかもぐらっていうよりあざらしって感じ?」
優が楽しそうに笑う。
「えー。そうかな。」
「和美?」
「なに?」
「何かあったら、いつでも言いなよ。」
「え?」
「和美をいじめるようなやつは、ぶっ飛ばしてやるから。」
「うっ。」
「体弱くて情けないけどさ、私はあんたの味方だからね。いつでも。」
姉の言葉に俯く和美。
「和美?」優が顔を覗き込む。
言葉にならない小さな叫び声を上げ、和美が優に抱き、そして泣いた。
真矢は和美の住むマンションを見つめ、そして小さく微笑んだ。