※直接描写はありませんがスパ以外のR-18 BL要素匂わす表現が

あると言えないくらい後半にほんの少しあります。

 

 

 

 

 

「センパイ、絶対2人をダシにして自分の好き勝手やって楽しんでましたよね?
うちの子たち都合良く口実にしてろくでもない世界見せてくれちゃったことは許してませんから。
しっかり懲らしめられてくださいね♪」

「っ…」

カランカランッ

とんでもない台詞を吐いて去ってくれた風丘。
出入口のドアにかかったベルの音色が空しく響く。
日室は立ち尽くす呉羽を尻目に店の外に出ると、看板を「close」に変えて戻ってきた。

「來流。そこのテーブルに手をつけ。」

日室が風丘から受け取った木べらで指し示したのは、

夜須斗や仁絵が手をついていた椅子の座面より位置が低いカフェスペースのローテーブル。

「なんでっ…」

「なんで? そこが道具使うときの定位置だろ?」

さも当然と言わんばかりに返されて、呉羽は顔を真っ赤にする。
この年になって「お仕置きを受ける時の定位置」があるなんて恥ずかしいことこの上ない。
というよりも、呉羽の主張はそこではなかった。

「ちげぇよ! なんで俺が道具使われてケツ叩かれることになってんだってはな…し…」

呉羽が見上げると、そこには絶対零度のまなざしでこちらをにらみつける日室。
視線に射貫かれ、呉羽の言葉尻は口を開いたときの勢いを完全に失っていた。

「…はぁ。これは久々に躾け直しだな。」

「え゛っ…ちょ、弥白っ…」

不吉な言葉と共に日室は呉羽の腕を引っ張ると、

3人掛けのソファの座面に上半身、肘掛けに下腹部が乗るような体勢で呉羽を押さえつけた。
その瞬間、呉羽が暴れ出す。

「やっ…やめろ弥白! このカッコはっ…」

しかし、華奢な呉羽の抵抗にびくともしない日室は、

淡々と呉羽の履いているものを下着ごと下ろし、尻を出すと
座面に伏している呉羽の背中に片膝を乗せ、

抵抗する両腕を頭上でまとめて木べらを持っている逆の手で押さえつけた。
屈辱的かつ不安定な格好に、呉羽が動かせる足だけでもより一層暴れるが、

日室は気にもとめない様子で木べらを振り下ろした。

バッチィィィィンッ

「いぃぃぃぃってぇぇぇぇっ!! 弥白てめぇっこんなっ…」

バッチィィィィンッ

「あああぁぁぁっ! ふざっ…」

バッチィィィィンッ

「ぎゃぁぁぁっ」

強烈な3連打は、真っ白な呉羽のお尻に真っ赤な跡を残した。
そもそもこの体勢は、屈辱的というよりも何よりもシンプルに痛みが増すのだ。
背の高い日室の高い打点から振り下ろされる凶器が与える痛みは

単純に手をつく体勢の時と比べると倍増と言っても過言ではない。
呉羽は早々に素直に手をつかなかったついさっきの自分を後悔することになった。

「ふざけてるのはどっちだ來流。」

バチィンッ バチィンッ バチィィィンッ

「ああっ…いてぇぇっ…あ゛あ゛っ…」

「ホスト辞めた時から俺が何回言い聞かせてきたと思ってる。
『ホスト辞めたらもう人の人生を玩具にしない』『ホスト時代の女を悪いように使わない』
今回はどっちもアウトだろうが。」

バッチィィィィンッ

「いぃぃぃっ…だって今回はっ…

つーかお前も最初に仁絵たちがネタ持ってきたとき聞いてただろ!
そこで止めなくて後出しは卑怯じゃねーかよ!」

吠える呉羽に、日室はほぅ…と呟いて目を細める。
怖い物知らずとはこのことか、と呆れを通り越して感心する。

バッチィィィィンッ バッチィィィィンッ バッチィィィィンッ
バッチィィィィンッ バッチィィィィンッ バッチィィィィンッ

「~~~~~~~!!!!」

尻の右左それぞれへの強烈な3連打に呉羽は悶絶した。

「俺はほどほどにしろと忠告しただろう。それを完全無視しやがって。
葉月にもバレバレだったなぁ、面白がってたこと。」

「うっ…」

バチィィィィンッ

「ああぁぁっ…ってぇぇぇ…」

「葉月も言ってたが仁絵たちを言い訳に使おうっていう根性も気に入らねぇ。」

「そんなつもりじゃっ」

「さっき言いかけたよな? 『だって今回は』。その後なんて言うつもりだった。」

「それはっ…」

日室に指摘され、呉羽は口籠もる。
「だって今回は仁絵たちが報復したいと言ってきたから」。

そう言おうとしてしまったのは事実だった。

「…まぁ、言い訳って思いとどまって途中でも口にしなかったのはせめてもの救いだな。」

バチィィィンッ バチィィィンッ

「あーっ いってぇぇっ」

バチィィィンッ バチィィィンッ

「い゛い゛っ…もっ…弥白勘弁してっ…」

「なんだもうギブアップか。その程度の覚悟で俺の言いつけ破ったのか。」

「言いつけって…俺はてめぇのガキじゃねぇよっ」

しおらしくなりかけていた呉羽だが、日室の挑発するような言い方にまた反抗心が湧き出てくる。
顔を必死に上げて弥白を睨むが、しかし結局現在進行形でお仕置きされているのだから説得力も何もない。

バッチィィィィンッ

「うぁぁっ」

「そういう台詞はケツ叩かれるようなことしなくなってから言え。」

バッチィィィィンッ

「ぎゃぁぁっ」

一蹴され、痛いのを余計もらうことになっただけだった。

「とりあえずあと10発な。」

「もういいってっ…」

バチィィィンッ

「あ゛あ゛っ」

「甘い。面白半分に人の人生にちょっかい出すことの罪の重さはほんとはこんなもんじゃないだろうが。」

バチィィィィンッ

「ってぇぇぇ…」

「お前はホスト時代に無茶苦茶しすぎてその辺の加減を知らなすぎだ。
だいぶマシになってきたと思ったが…まだまだ躾が足りなかったな。」

勝手に自省する日室に、呉羽が慌てる。
辞めた直後、突然小姑のように口うるさくなった日室との散々な日々が脳裏を駆け巡る。

「いや! 足りてる、めちゃくちゃ足りてる!」

バッチィィンッ

「んんんっ!!」

「本当か? 信用ねぇな…」

バチィィィィンッ

「あ゛~~~~っ マジでっ…ほんとにもう気をつけるからっ…」

バチィィィンッ

「…じゃあ言うことは。」

「え…」

バッチィィィィンッ

「いってぇぇぇぇっ」

しまった、失敗した。反応の悪かった自分を恨む呉羽に、日室が容赦なく言った。

「『言いつけ破ってごめんなさい』だろう。」

「だっ…誰がそんなっ…」

バチィィィンッ

「あぁーっ!!」

バチィィンッ バチィィンッ バッチィィィィンッ

「~~~~~~~!!!!」

声にならない声を上げる呉羽に日室が追い打ちをかける。

「おら、言わないならもう少しこの木べら味わうか?」

30発の木べらを受けた呉羽の尻は真っ赤に痛々しく染まり、

そこにペチペチと脅すように日室が木べらを当ててくる。
呉羽は拳を握るも、もう白旗を揚げるしかなかった。

「言いつけ破って…悪かった…」

バッチィィィィンッ

「んぁぁぁっ!? なんでっ…」

予想外の木べら。

打ち下ろされた瞬間拘束から解放されて、呉羽は体を起こして抗議する。

「『ごめんなさい』言えない分をこれでチャラにしてやるんだから感謝しろ。
ったく…仁絵たちは素直に言ったってのに…」

「…俺をあいつらと一緒にすんなっ…もう27だぞ…」

「年関係ないだろ。悪いことしたなら謝罪は人としての常識だ。」

「言葉は違くても謝っただろ…はぁ…弥白、ケツ冷やしたい…」

細かい奴だな、と呉羽がブツブツ言いながらソファにうつ伏せになろうと体を前進させようとする。
しかし、それは呉羽の進行方向に腰を下ろした日室に阻まれた。

「何言ってる。次はここに来い。」

「…え?」

今のは聞き違いか。呉羽が聞き返すと、日室はご丁寧に膝を叩いて呉羽をどん底に叩き落とした。

「膝に乗れ。まだ躾は終わってない。」

「な、なんでもう無理っ…もう終わりだろ!?」

「俺は終わりなんて一言も言ってないだろうが。來流が勝手に勘違いしただけだろ。」

「っ…なんでっ…」

尻の痛みもさることながら、終わりと信じて疑わなかったせいで絶望は倍増だ。
心が折れた呉羽が涙をにじませると、

日室はため息をついて、それでも呉羽の腕を引いて膝にうつ伏せにさせた。

「來流。お前アカネさんから情報もらうために何をした。」

「っ…何って…」

日室の言いたいことが分かって呉羽は体を強ばらせた。

「一晩エスコート、アフターまで、だったな。

アカネさんのあの言い方。店で飲んだだけじゃないだろう。」

「それはっ…」

「嘘ついたり誤魔化したりすれば別れる。」

「なっ…」

唐突の宣言に、呉羽は焦った。もう正直に言うしか道は残されていない。
昔から、日室は呉羽の嘘やはったりに敏感だ。

この状況で日室相手に嘘を突き通す自信も勇気も今の呉羽にはなかった。

「ホテルには…行ったけど…でも抱いてはないっ それは絶対、誓って!」

「当たり前だ馬鹿野郎。」

バシィィィンッ バシィィィンッ

「あぁぁ~~~~っ いってぇぇっ!」

真っ赤な尻でも分かるくらいの新しい紅葉が尻の左右に舞い落ちた。

「さて。來流。ここからは尻軽な恋人へのお仕置きだ。
浮気は尻左右100叩きずつだったな?」

「なっ…待てっ…今日は無理っ っていうか浮気なんかじゃっ…」

「女とホテルに行って浮気じゃないだと? そんな都合の良い世界がどこにある。」

「アカネは俺と弥白の関係知ってんだぞ!? 

俺がもう女抱かないこと知ってんだから浮気にはならねぇよ!」

これから左右合わせて198発はいくら平手だとしても耐えられない。
なんとか回避したくて、呉羽も必死だった。

「ほんとに何もなかったから! 部屋でシャンパン開けて寝ただけだから!
もちろんシャワーもそれぞれ別々だしっ…」

「…ベッドは。」

「ベッド…も…別々…」

「來流。」

日室の一睨みで、來流は俯いた。

「いやっ…でもっキングサイズだったしっ」

「…諦めろ。」

背後から平手の振り上げられた気配を感じる。
呉羽は悲痛な叫び声を上げた。

「やだもうほんと無理っ 弥白っ…せめて別のっ…

ケツ叩くんじゃなくて別のお仕置きにしてっ…なんでもするからっ」

呉羽の情けない訴えに、日室は呆れたようにため息をついた。

 

「はぁ…つくづくお前はバカだな。『なんでもする』なんてそう簡単に言うもんじゃない。
接客してる時は頭良いくせにな。」

「っ…だってっ…」

そう言いたくなるくらいに尻は痛いし、日室の平手の威力はすごいのだ。

「まぁ、せっかくの申し出だし受け入れてやるか。俺以外には口が裂けても言うなよ。」

「言わねぇよ…」

そう言いつつ日室はスラックスの尻ポケットから携帯を取り出すと、

呉羽の腰を小脇に抱えた状態で、どこかに電話をかけ始めた。

「アカネさん。今いいですか。」

「なっ…弥白何してっ…」

日室が電話をかけた相手はアカネ張本人だった。
とんでもない展開に呉羽が顔を真っ青にするが、日室は呉羽をチラと見ることもない。

日室がスピーカーボタンを押すと、明るいアカネの声が返ってくる。

[あらぁ、弥白どうしたの?]

「この前アカネさんにうちの來流がお世話になった件です。」

[フフッ、なーに? 今更浮気だなんてあたしに文句つけに来たの?]

「いえ。來流の方が話を持ちかけたようですから。
ろくでもない目的で浮気した恋人を絶賛お仕置き中です。」

「おい弥白っ何馬鹿なこと言ってっ…」

呉羽の声がスピーカーに乗ってアカネのもとに届く。
勘の良いアカネは、これで気が付いた。
日室が望んでいるであろう言葉を返してやる。

[まぁ。麗ちゃん可哀想。どんなお仕置きされちゃってるのかしら。]

「せっかくですからアカネさんにも見てもらおうかと思いまして。」

「やめっ…弥白っ」

日室がスマホの画面のビデオ通話ボタンを押す。
腰をガッチリ抱えられている呉羽は今更逃げられない。
アカネの携帯画面に映し出されたのは、画面いっぱいの真っ赤な來流のお尻だった。

[やだぁ痛そうっ 麗ちゃんお尻ペンペンのお仕置きされちゃったのね!]

「アカネお前…」

羞恥心を煽るベストな返しに呉羽は耳まで真っ赤に染める。

「そういう訳ですから。これからは來流に誘われても尻の無事を案じるなら身を引いて頂けると。」

[あら、元S嬢の私にそんなこと言ったら逆効果だと思わないの。

お尻ペンペンされてる麗ちゃん、可愛いとしか思わないけど。]

「っ…アカネもう黙れっ…」

呉羽はもう何も聞くまいと手で耳を塞ぎ、ソファの座面に顔を伏せる。
しかし日室は画面越しに楽しそうに笑うアカネを見て、

呉羽のお尻を映すのを止めて自分の顔を映し、真剣な顔で語りかける。

「俺は恋人がいると知っている上での浮気は両成敗が妥当だと思ってるので。
今回は宣言前なので見逃しますが次からは…」

[まぁやだそういうこと? それは…ちょっとご遠慮願いたいわね。]

「ご理解いただけましたか?」

[…仕方ないわね。分かったわよ。私スパンキングはカー専門だから。
でもざんねーん。せっかく麗ちゃんがキーだって有益な情報が得られたのにぃっ]

「ちげぇよ!!」

[でも一緒に飲むのはOKでしょ? 今回の話じっくり聞きたいわぁ~
麗ちゃんまたねっ そんなに浮気心配なら弥白もたまには付き合いなさいよ!]

ピロロンッ

アカネの軽快な声で通話が終わると、日室は呉羽を解放し、

冷やしタオルを用意すべく厨房へ入っていった。
 

 

 

 

 

「うぅ~~…」

日室が呉羽の元に戻ると、涙目で目を赤くした呉羽が日室を睨んだ。
痛みは耐えたくせに、最後の羞恥責めに泣いたらしい。

「尻叩きのお仕置きは止めてやっただろう。」

「だからってっ…あんなっ…」

「これに懲りたら浮気するな。」

「だから浮気のつもりじゃ…まぁ…ごめん…」

呉羽がボソッと謝ると、日室が頷いて、目を閉じて顔をこちらへ向けてきた。

「ん。」

「…何だよこのむっつり…」

その意図を読み取った呉羽は今度は顔を赤くしながらも、上半身を起こし、日室の首に腕を回した。



その夜、「お仕置きは終わった」と口では言いつつ

日室にいつもの3割増しで意地悪く抱かれた呉羽のわがままで、

臨時休業が1日伸びたのは呉羽にとっては全然笑い事じゃない笑い話。