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※こちらの作品は、東京ディズニーシーにかつてあったアトラクション「ストームライダー」の

 ストーリーを使用した二次創作のスパ小説となっております。

 断片的な情報しかないため、作者のご都合主義による想像によって設定がいろいろ盛られています。

 特にこのアトラクションおよびキャラクターにこだわりのある方、思い入れのある方は

 恐れ入りますがバック、もしくは自己責任でお読みくださるようお願いします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ~ 疲れた。」

司令室から出てきたデイビスはやれやれ、と伸びをした。

デイビスは対ストーム用航空機「ストームライダー」のパイロットだ。
 

今日、超大型ストームを消滅させるミッションに向かった。
ストームの規模は大きいものの、ミッション内容としては比較的安全性が高いものとされ、

コックピットの上に設けられたビューポートには一般の見学客も同乗してのミッションだった。
しかし、デイビスとペアを組んでいたスコットが操縦する1号機が落雷を受けミッションから離脱する事態となり、
ミッションは2機体制での実施を基本としていることから、

司令を出すベース・コントロールからは『ミッション中止』を命ぜられた…のだが。
デイビスは独断で自らの乗る2号機のみでミッションに向かった。
そして、ストームを消滅させるための装置「ストームディフューザー」のトラブル、

ストームライダー墜落の危機など紆余曲折あったものの何とかストームを消滅させ、ミッションをコンプリートさせたのだ。

しかし、終わり良ければ総て良し…というわけにはいかず。
帰還するとすぐさまベース・コントロールから

 

「キャプテン・デイビス! 司令室まで来なさい、今すぐに!!」

とのご指示。

そしてデイビスがやれやれ、と司令室におとなしく馳せ参じてから小一時間、

耳にたこができるほど延々とお説教を受けていたのだ。
ミッションから帰還した時はまだ日が高かったはずだが、もうだいぶ傾いてきている。
今日はタイトスケジュールだった上におやつの時間もろくにとれなかったので、だいぶ空腹だ。
とりあえず部屋に戻って飯にしよう、そう決めて廊下を歩いていると、壁にもたれかかっている同僚に声をかけられた。

「あぁ、デイビス。反省タイムは無事終わったか?」

「なんだよスコット。わざわざ俺を茶化すためにこんなとこで待ってたのか?」

彼はデイビスと共に先ほどのミッションにあたっていたスコット。
大方説教の終わりを見計らってデイビスが必ず通るであろうこの廊下で待っていたんだろう、と考えたデイビスは

お前も案外暇だな…と言い捨てる。

「いつにも増してながーーーーい説教だった。おばさんしつこくてさ。勘弁してほしいぜ全く。
こっちはあのアクシデントの中最大レベルのストーム消滅させて疲労困憊だってのに。」

「はぁ…デイビスお前なぁ…」

デイビスの言い様にスコットがため息をつくが、デイビスは構わず続けた。

「あー、もう腹減った。じゃ、俺は部屋で着替えて飯に…「飯の前に。」

スコットはデイビスの肩をつかんで引き留めた。

「デイビス。ちょっと顔貸せ。」

「腹減ってるって言っただろ? 今日のミッションの話なら飯食った後にしてくれよ。」

デイビスが不服そうに言うと、スコットは呟くように言った。

「…飯の後にして戻されたらかなわんからな。」

「はぁ?」

はっきり聞こえない上に言っている意味が理解できずデイビスが聞き返すも、
スコットはそれには答えず、つかんだままのデイビスの肩を少し強く引いて言い募った。

「とにかく。来い、デイビス。」

「っ…わかったよ。」

スコットの気迫に押され、デイビスは渋々スコットの後を着いていった。



着いた先はスコットの自室だった。

デイビスたちが働く気象コントロールセンターの職員は、

自然相手の仕事でパイロット含め皆不規則な出勤を強いられることも多いため、
仮眠や休息をとるための個室が1人1人与えられている。
広くはないが、ベッドをはじめ机とソファー、ちょっとしたクローゼットなど、必要最低限の家具はそろっている。

スコットはデイビスに先に入るよう促し、デイビスが入ると自分も続いて、その後鍵をかけた。
その様子をデイビスは不思議そうに見つめる。

「? なんで鍵なんか…」

「万が一、人に入られたらさすがにお前が気の毒だからな。」

「はぁ? おいスコット。お前さっきから何を…」

「司令室から出てきたお前の態度が少しでも萎らしかったら俺もここまでするつもりはなかったんだがな…」

スコットはそう言うと、おもむろにデイビスの腕をつかむと、自分はベッドに腰かけ、その膝の上にデイビスを引き倒した。
そしていつの間に用意したのか、ベッドの上に置かれていた洋服ブラシを手にすると、

その厚い背板をデイビスの尻に向かって振り下ろす。

バシィィィンッ

「いぃぃってぇ!! おいスコット!!」

突然の衝撃にデイビスは反射的に身をよじったが、

すかさずスコットに押さえつけられてしまい、スコットに比べ線の細いデイビスではびくともしなかった。

バシィィィンッ

「うっあ!! スコット、おまっ…なにすっ…

バッシィィンッ

「いってぇっ! おい、ふざけるのも大概にしろよ!」

続けざまに叩かれ、衝撃がじわじわ痛みに変わると、
デイビスにいよいよ突きつけられるのは「同僚の膝の上で尻を叩かれている」という耐え難い事実である。
今は痛みよりも羞恥が勝るデイビスが一刻も早くやめさせようと怒鳴ると、
それを聞いたスコットは眉間にしわを寄せ「なんだと…?」と低い声で呟いた。
普段温厚なスコットの滅多に聞かないその声にデイビスがほんの少し身じろぐと、次の瞬間。

「それはこちらのセリフだ!」

バッシィィィィンッ

「うぁぁぁっ」

一喝と共に更に威力を増したブラシが降ってきた。
さすがにこの一発は効いたデイビスが思わず右手を回して尻をさすっていると、不意にその手をスコットにとられた。
そして、スコットがもう片方の手をデイビスの制服のベルトのバックルに手をかけているのに気づくと、

デイビスは思わず叫び声をあげた。

「ぎゃーーっ! 何してるスコット!!」

「デイビス腰を上げろ。やりにくい。」

「俺がそう言われてはいそうですかと素直に従うと思うか!? 
何が悲しくて俺がこんなエレメンタリースクールのガキみたいに

お前に膝にのせられてケツ叩かれなきゃいけないんだよ!」

デイビスはスコットの膝の上でぎゃーぎゃー喚くも、スコットは全く動じなかった。

「お前が今日やらかした諸々への罰だ。」

「説教ならさっきベース・コントロールに嫌ってほどされったっつっただろ!」

「俺には司令室から出てきたお前の顔は説教されて反省した奴の顔には見えなかったがな。
どうせろくに聞かないで、あと何分でここから出られるか、ばかり考えていたんだろう。」

「うっ…」

図星を指されたデイビスが思わず目を泳がすと、スコットはため息をついて、
いつの間にやらベルトを緩めてしまったデイビスの制服のズボンを下着もろとも引きずり下ろした。
外気を感じ、耐えられない羞恥にデイビスが悲痛な声で「反省してるからっ」とスコットを呼ぶが、

スコットは涼しい顔で言った。

「安心しろ。これから俺がそんな口から出任せの『反省』じゃなくて、

きっちり涙ができるほど真摯に反省させてやる。」

「冗談だろ…?」

デイビスにとって地獄の時間の幕開けだった。



バチィィンッ バシィィンッ ベシィィンッ

「いった! いっ…いたいってスコット!!」

「痛くしてるからな。当然だ。」

素肌に受けるブラシの痛みは先ほどまでとは段違いだった。
厚手の制服というガードを取り上げられ、しかもブラシを握るのは日頃から鍛錬を欠かさないスコット。
尻が赤く色づくのに、そう時間はかからなかった。

バチィィンッ バチィィンッ バチィィンッ

「うぐっ…っあぁ!! ちっくしょ、なんで俺が…」

「なんで…だと?」

「あ、いや…」

頭上からのスコットの冷たい視線を感じ、デイビスが慌てる。

「あぁ、そうか。ベース・コントロールの説教は聞いていないんだったな。
わかった。俺がもう一度尻叩き付きで一から説教してやろう。」

「げぇっ いや、冗談、わかってる、わかってるから!」

「分かってるなら今日のお前の行動の問題点を全てきっちり挙げられるな?」

「え」

「言っておくが、全部言い終わるまで尻叩きは終わらんぞ。」

「うぇ~~」

全て挙げられなかった時のリスクが高すぎる。
大方分かってはいるが、説教をろくに聞いていなかったのは事実なので、正直自信はない。
あからさまに困り顔をするデイビスに、

スコットは内心わかりやすい奴だなと吹き出しそうになりながら、しょうがない奴だな、と続けた。

「やはり前者だな。」

「なっ、まだ俺そっちがいいなんてっ」

「時間切れだ、諦めろ。」

バチィィィンッ

「ぎゃぁっ」

「まずは進入禁止経路に勝手に入ったこと。」

「はぁ!? そんなの別にいいだろ… バチィィンッ 「いってぇぇっ」

「ストームライダーの飛行経路は決められていて、陸海空それぞれを管轄する省庁に申請も出している。
場合によっては安全のためにストームライダーの飛行経路上は、他の航空機や船舶は航行を止めていることもある。
それを『そんなの別にいい』とは言えないな。」

バチィィンッ バチィィンッ

「いぃぃった! うっくぅっ」

「一般乗客にミッション前に少しでも楽しんでもらおうという遊び心だろうが、
実際お前、進入禁止経路内でヨットにぶつかりそうになっただろう。」

「げっ…」

バレてたのか、とデイビスがさすがにやばいと目をつむると、予想通りの厳しい一発がデイビスを襲った。

バッチィィィンッ

「いったぁぁぁっ」

あまりの痛みにのけぞる。スコットが押さえていなかったらあっという間に体勢は崩れているだろう。

「もし接触事故にでもなろうものなら前代未聞の不祥事だぞ。」

「確かに…あれはちょっとまずかった…とは思ってる…」

バチィィンッ

「いってぇぇぇ…悪かったよぉっ」

「一般乗客のためにアクティビティ用に別ルートを行くなら事前に申請しろ。

理由があれば上だって拒否はしないはずだ。」

それじゃあおもしろくない、という言葉は不用意に尻を犠牲にしたくないと飲み込んで、
デイビスは「わかった…」と小さく答えた。

「それから今回のミッションの指揮は俺のはずだったが。指揮に従わず先走ったな。」

「それは!」

いつものことだろ、と思わず言うと、お叱りの言葉の代わりにバチィィンッとブラシが振り下ろされた。

「いつもそれで俺が苦言を呈しても聞く耳持たずだからな。この機会にちゃんと言わせてもらう。」

バチィィンッ

「うっぁ」

「お前としょっちゅう組まされる俺相手ならまだしも、
俺以外と組んで相手が指揮官だった時、あの態度じゃ嫌がられるぞ。直せよ。」

バチィンッ

「ぎゃっ はいはい、努めるよ。」

バチィィンッ

「うぐっ」

「『はい』は1回だ。」

「細かい奴だな!…はい!」

「で、ここが本題だ。」

少し柔らかい調子だったスコットの声が固くなる。
デイビスもつられて身を固くする。

「…ミッション中止の命を無視したこと。」

バッチィィィンッ

「いたぁぁぁっ…いってぇよスコット…」

「どうして無視した。」

 

デイビスの訴えは無視してスコットが問う。

デイビスはゆっくり口を開いた。

「命令を無視したのは悪かったけど…俺たちのミッションはストームを消滅させることだ。
それが大前提。
元々ストームライダーは1機でストームを消滅させることができる航空機だろ。
2機体制は、安全性を向上させるためにうちが独自に決めた方針ってだけだ。
可能性があるなら、大前提の『ストーム消滅』のミッションに向かうのが当然だろ?」

 

デイビスの言い分に、スコットはそうだな…と静かに言う。

「確かに俺たちのミッションはストーム消滅だ。

だが、今回は状況が特殊だった。一般の乗客が多数搭乗していた。」

「っ…」

バチィィンッ バチィィンッ

「うぁっ あぁぁっ」

「ストームを消滅させることで、被害を防ぎ、それにより奪われてしまうかもしれない人命を救う。

それが俺たちの使命だ。
だが、その使命を優先するがあまりに目の前の多数の人命を粗末にしてどうする。」

「それはっ…」

なんとなく分かっていたことをズバリと指摘され、デイビスは返す言葉がなくなる。

ベシィィンッ バッシィィィンッ

「くぁっ…ぎゃぁぁっ」

「2機体制は安全性向上のため。よく分かってるじゃないか。
それなら今回は、通常のミッション以上に安全性をとことん追求すべき状況下にあったと思わないか。
使命感とその場のテンションだけでなく、もう少し冷静な判断を心がけろ、デイビス。」

「っ…分かった…」

「…よし。」

バチィィィンッ バチィィィンッ

「いぃぃぃっ…!!!あ゛あ゛あっ」

あまりぶたれていなかった足の付け根に近いところを打たれ、デイビスは悶絶した。
もう1発も打たれたくない、とデイビスは泣きそうになるのを懸命に堪えているが、
スコットはあぁ、それから、とまだ続けた。

「ベース・コントロールとの1対1の無線を切ったそうだな。」

「!! あのおしゃべりおばさんっ…」

いつの間にやらベース・コントロールがスコットに告げ口したのだろう。
余計なことをしてくれる、とデイビスはぎりりと歯がみする。

バチィィンッ バチィィンッ

「ぎゃぁぁっ うぁぁっ」

「あまりベースを困らせるな。無線を意図的に切られたら司令室からはどうもしてやれなくなる。」

バチィィンッ ベシィィンッ

「あぁぁっ 分かった、悪かったぁっ」

もうとにかく早く終わってほしくて、デイビスは必死に答えた。
すると、スコットはようやくこんなものか…と、洋服ブラシをベッドの上に置いた。
ようやく終わりか…?とデイビスは一瞬期待するも、
自身への拘束は緩むどころか、腰に腕をガッチリと回されて抱えられるような体勢にされ、より厳しくなってしまった。

「おい、スコット…お前まだ…」

それに絶望したデイビスが縋るようにスコットを見るが、スコットも譲らない。

「職務上の問題行動への罰は終わったが…あと一つ。
これはよくコンビを組まされ、少なくとも一方的にはお前のことを友人だと思っている俺からの仕置きだ。」

「…は?」

言われた意味が分からずきょとんとするデイビスに、スコットは言う。

「あんな無茶をして…
最後に見たのはお前の操縦する2号機がストームに突っ込んでいく姿、

その後ろくに通信もできない…心配するだろう!」

バチィンッ バチィンッ バチィンッ バチィンッ バチィンッ バチィィンッ

「あぁっ ぎゃぁっ ちょっ おいっ 連打やめっ…いってぇぇっ」

ブラシには劣るものの、散々ブラシでの罰を受け既に真っ赤に腫れ上がった尻に
手加減のないスコットの平手連打は十分、いや、すこぶる痛い。
思わず足をばたつかせると、じっとしろ、と太ももを打たれた。

「多くの人命ももちろん大事だが、デイビス。何より自分の命を大事にしろ。
お前ほどの優秀なパイロットを失うのは気象コントロールセンターにとって重大な損失だし何より…」

スコットはデイビスの髪をくしゃっと撫でて言った。

「お前のような面白い友人を失くすのは俺にとってこれ以上ない損失だ。」

「スコット…」

思わぬスコットの言葉にデイビスは決まりが悪そうにしながら、顔を伏せて答えた。

「心配かけて…悪かった。」

「…あぁ。…よし、最後1発だ。思い切りいくからこれに懲りて少しは態度を改めろよ。」

「スコット…お前がこんな容赦ない奴だなんて知りたくなかったよ…」

おそらく満遍なく真っ赤に腫れているであろう尻が見えないのか。
げんなりしたデイビスの声にも、スコットは応えなかった。

「無駄口叩いてると舌かむぞ。」

そして。

バッチィィィィンッ

「~~~~~~っ!!!!」

既に真っ赤な尻に手形が浮き上がるくらいの強烈な1発をくらって、デイビスはようやく地獄から解放されたのだった。



「いってぇ…こんなに引っぱたかれたこと訓練生時代だってないぜ…」

こんなんじゃ食堂の固い椅子には座れない、と駄々をこね、

デイビスはスコットに調達してきてもらったサンドイッチをうつ伏せで尻に濡れタオルをのせた情けない格好のまま頬張っていた。
その恨めしげな視線はスコットに向くが、スコットは自業自得だろ、と受け流す。

「少しは懲りたか?」

「少しどころじゃないよ全く…」

この馬鹿力、とタオルで覆いきれない赤みを見てデイビスがため息をつくと、

スコットがあぁ、そういえば、と口を開く。

「さっき食堂に行くついでにベース・コントロールに寄ったら、また新しいストームが発生したらしい。
また俺とお前で、明日の夜あたりミッションだ。」

「はぁ!? この尻でコックピットに座れってか!?」

「…それをベースに言っていいなら交渉してきてやるが?」

「っ!!! 言えるかバカ!!」

「だったら痛みに耐えるしかないな。頑張れよ、キャプテン・デイビス。」

デイビスは、同僚の思わぬ一面を引き出してしまい、そして自分を今のこの状況におとしめてしまった
半日ほど前の自分の一連の行動を、結果としてこれ以上ないほど反省することとなった。
頭の中を埋め尽くすのは、使い古されたこの言葉。

 

 

 

『後悔先に立たず』